何かを徹底的に追求した
その筋のスペシャリストの話は
本当に面白い。
でこの漫画が描くのは
日本人に最も馴染み深く
身近な飲み物である、
『お茶』の奥深い世界。
10代の頃は洋風なものに憧れる傾向が強かったけど、
やはり日本人の血なのか、
30歳を越えた頃から
ワビサビや情緒など
「和の心」に自然と惹かれる自分がいます。
そういった意味では
個人的に本当にツボな漫画でした。
忘れられないお茶を探す目的と
全国に本物のお茶の味を伝えるため、
トラックを改造した移動茶店
「茶柱倶楽部」で旅に出る
老舗茶屋の一人娘・鈴。
様々な土地で
お茶を通して出会う人々との触れ合いが、
悩みや葛藤を抱えた人たちの疲れた心を
解きほぐしていくストーリー。
産地や製法、時間や温度や淹れ方ひとつで
渋くなったり甘みが増したり
香りが引き立ったりと
味わいが劇的に変わる、
繊細で奥深い
お茶という飲み物の不思議。
インスタントではなく
店で飲む本格的なコーヒーには
少々高くてもお金を払う日本人なのに、
ことお茶に関しては
、
ペットボトル以上の金額を払ってまで
お金をかけたくないっていうのも
なんか変な話ですよね(笑)
毎回身近に手に入れられる
いろいろなお茶が登場し
知識が深められるのは魅力だし、
前向きで楽天家の鈴のキャラクターが効果的で
押し付けがましくなることなく
知らず知らずに元気をくれるし、
何気ない茶器や小物の描写に見られるように
綿密な取材に基づき描いていることが分かる
作者の誠実さなど、
単なるウンチク漫画で終わってないところも
好感が持てます。
『茶を飲むのは
ただ喉を潤すためじゃない。
その1拍の休みで
心身を切り替えて
自分のリズムを作る。
そういう場を作り出すのが「茶」だ』
と言う
鈴の父の言葉の意味。
お茶って
美味しさのためにはじっくりと時間をかける。
だけど本当は、
たった一人の誰かを思い
『心を淹れる』
その時間こそが
何よりも尊いものなんだって思いました。
お世辞にも
上手い絵ではないので
人によって好みは分かれるだろうけど、
和の心に興味がある方なら
得るものがある作品です。
手間を惜しまず
丁寧に淹れたお茶が
必ず飲みたくなりますよ(笑)
現在、2巻まで発売中。