近藤紘一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
生活の叙述の中で、ベトナムの人の物の考え方や大切にしていることも感じられたし、筆者のベトナム観にも大いにうならされた。
ベトナムの人々の強さ、生きる力を見せつける数々の実話と、その背景にあると思われ歴史・風土的背景。
国際社会の中での、外交的あるいは文化的な立ち位置。
ベトナムの風土がもつ資源や自然の豊かさ、食の写しさ。
そして、翻って、日本が心がけるべきこと。
ベトナムを知るための一冊として必須だろう。
以下、印象に残った記述(一部、簡略化して転記)
・妻は一家の家長で、働きもので、大家族制の名残を残す国では、一般に家長依存の風習が強い、しかも相手の稼ぎがいいとなると遠縁とか昔馴染み -
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Posted by ブクログ
戦争前夜までの記者らのゴタゴタのみならず、サイゴンという街のいとおしさ、妻への思い、記者としての歴史が変わる瞬間をみることへの渇望など…。想いがストレートに、整理されずに述べられていて、惹き込まれる。
静かな政変(?)だったとはいえど、さまざまな混乱があり、血も流れたこともわかる。
著者の心の揺れも、人々も、ピュアに記されている面白さがある。
戦争というものへの複雑な見方も印象的。もちろん多くの命が失われ、不幸も多く作る。しかし戦争がベトナムの国民性を露にしたのも事実。価値判断次第で色んなものがみえるし、ベトナムの強さも窺い知る。
生々しくまるごとを見せつけて考えさせてくれた、極上のジャ -
Posted by ブクログ
サンケイ新聞(現・産経新聞)記者の近藤さんの文章が軽妙でいい。
そしてベトナム人の妻と娘のあっけらかんとした明るさ! 実に楽しい。ベトナム性はたくましいわ~。
彼女たちの日々の行動から文化の違い、考え方の違い、歴史や風土の違いが浮き彫りになるとともに、近藤さんなりの見解や意見も随所にあって、とても興味深い。
もちろん1978年に書かれた本書は価値観とか時代背景とか、かなり古くて今とは異なる。
でもそれがまた面白い。
冒頭で描かれるのは1975年4月30日のベトナム戦争終結、サイゴン陥落。
近藤さんは記者としてその時まさにかの地に駐在しており、
その様子を克明に描いていて臨場感があるし、歴史的価 -
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インドシナ、ベトナムはフランス占領下にあったことから、フランス文化の影響が残る町なんだろうなとずっと頭の片隅にあった。
ちょっとご縁を感じて、旅の計画(妄想!?)をし始めて、ベトナムのことが書かれた本を読み始めて、苦手な戦争のコトに真正面から向き合って、この国を生半可な気持ちで旅することなんてできないな〜とかんじていたところ、いっちばんココロの襞に触れた一冊。
食にまつわるウサギや雷魚の話は絶品。
ベトナム流にフランスの精神が加味されたスパルタ子育て論も、日本のお父さんの優しさの眼差しを通して描かれているところがなんとも良い。
バンコクやパリでの続編もあるようなので、読んでみようと探し中 -
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[異国で三人四脚]戦地特派員としてベトナムに送り込まれていた筆者は、その地で出会った「年齢不詳」の女性と恋に落ち、生活を共にすることになる。しかし、1975年のサイゴン陥落により、現地にとどまることに危険を覚えた2人とその娘は、出国を決意し、日本での生活を試みることに。見慣れぬ文物や風俗に戸惑う妻と娘であったが、同時に筆者にとっても文化の差から、戸惑いを覚える結婚生活が始まるのであった......。大宅壮一賞を受賞したノンフィクション。著者は、サンケイ新聞(当時)の記者として活躍された近藤紘一。
別にとんでもない事件や事態が発生するというわけではないんですが、それにしてもこの夫婦の生活が面 -
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ベトナム戦争というと、小学生の頃の記憶しかないが、遠い国の出来事ながらとても不安な気持ちになった事を思い出す。あのころは、とにかく反共産主義というキーワードしかなく、当然ベトナム戦争もその概念でのみ語られていた。そういう意味では、サイゴン陥落というのは衝撃的であり、子供心に世界はこれからどうなってしまうんだろうと不安になった事を思い出す。そういう気持ちで本書を読むと拍子抜けする。ここに描かれているのは、サイゴン陥落という大事件の中でも逞しく、図々しく生きていく庶民の姿であり、ある意味明るい姿である。サイゴン陥落でベトナムは共産主義国家になったと一般的には解釈されているが、実態は必ずしもそうでは
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1970年代初頭、戦火のサイゴンで日本の新聞記者が子連れのベトナム女性と結婚。その顛末を描いたドキュメンタリーであるが、描写と文化考察がすばらしく、単なるカルチャーギャップ論に終わっていない。サイゴンでの長屋の生活風景、妻の食物へのこだわり、娘へのスパルタ教育、年頃になってゆく娘の変化が生き生きと描かれてゆく。「ベトナムは社会主義国の看板は守りながらも、お得意のたてまえと本音をたくみに使い分けて、(中略)実質資本主義国家として」と、30年以上も前に現在のベトナムを予言しているところは、さすがに第一線のジャーナリストというべきだろう。残念なのは著者が46歳の若さで亡くなったこと。現在のアジアを見
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近藤紘一の本を続けて読む。
「サイゴンから来た妻と娘」「目撃者」、それと、この「サイゴンのいちばん長い日」の3冊。
近藤紘一は、サンケイ新聞の記者だった。
ベトナム戦争中のサイゴン(今のホーチミンシティ)に記者として滞在し、そこで知り合った子連れの女性と結婚、サイゴン駐在が終わった後は家族で日本で生活。その時のエピソードなどは、「サイゴンから来た妻と娘」にまとめられている。
「サイゴンのいちばん長い日」はサイゴンが陥落した1975年4月30日前後に特派員としてサイゴンに滞在していた近藤紘一のサイゴン陥落レポート。
近藤紘一ご自身は、残念ながら46歳の時に、ガンで亡くなられている。
以下、近 -
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ベトナム戦争時、戦争特派員としてサイゴンに勤務するなか知り合った妻と、その連れ子・ミーユンちゃんとの東京での日々を中心に描いたもの。異国の妻の生活力の強さ、スパルタンな子育てぶり、爛漫さ、肝っ玉の太さに、時にタジタジとなりながらも愛し惹かれている近藤氏の筆になる話は読んでいて気持ちいい。
一方で、ベトナム人の国民性とかにも、こうではなかろうかと実体験から得た論を展開したり、陥落直前後のサイゴンの様子を描く文章からは一級のジャーナリストの目と筆が光っている。ベトナムの国民性かのように述べているところで、中国でも韓国でも感じられるように思われ、それは裏返せば日本がアジアの中ではよほど特殊かつ、欧米 -
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ベトナム戦争末期、特派員としてサイゴンに駐在し、現地でベトナム人の妻と娘ができた作者の、家族との奇想天外(?)な生活の記録。今でこそ「国際結婚」を巡るコミックエッセイなどが数多く出版され、人気を博しているが、この本はその先駆けかも。日常の描写だけでなく、低い目線からベトナム人気質、歴史を鋭く考察していて、後半にかけてぐいぐい引きつけられた。
この秋仕事で2週間ほどホーチミンに滞在し、「したたか」と言われるベトナム人とがっつり向き合った経験があるが、この本は仕事に行く前に読んでおけば良かったと思った。
特に、「戦争」に対する日本とベトナムの認識の違い(国土が豊かだからこそあんなに長く戦争が -
Posted by ブクログ
この人の本は私の人生の宝物。サイゴンから日本へ連れてきた妻と娘の日常を描いたエッセイですが、全く文化の違う、言葉も通じない国で平然と暮らす妻の強いこと。日本人が外国に行ったら、ああは出来ません。
自分の芯に信仰(この場合はお釈迦様ですが)があるというのは、こんなにも人を強くするのでしょうか?信仰の無い一日本人としては羨ましい気がしますが、さりとて一心に何かを信じるなんて今更無理な話なんですね…。
書き手の近藤さんには辛い過去がありますが、この妻のこの超然に救われていたのだろうなと、思います。作者が早くに亡くなってしまった事が本当に残念です。 -
Posted by ブクログ
『キャパになれなかったカメラマン ベトナム戦争の語り部たち
上・下』もベトナム戦争の際の人間ドラマを描いたものだった。
こちらはベトナム戦争の報道に関わった人たちを題材にした作品
だったが、本書は著者の伴侶がベトナム人女性ということもあり、
ベトナムで生きる人々のサイゴン陥落前後の生活を描き出した名著だ。
取材で顔見知りになった南ベトナムの政府高官、パリ協定後に南に
駐留した北ベトナム軍の関係者、ベトナムに残る伴侶の家族、屋台や
露店で商いをする人々。
戦争という異常な状態にあっても、人間はたくましく生きている。
海外メディアという高みの視点ではなく、ベトナム人の視点で書かれて
いる -
Posted by ブクログ
自分がこの本に出会ったのは、インド・デリーの安宿街であり商店街でもあるパハール・ガンジ(通称メイン・バザール)の古本屋でした。文庫本の1ページ目に「75/50」(75ルピー、再度古本屋に持って帰ってくれば50ルピー返却、の意味)と、店の親父の汚い文字で書いてあります。
インドを旅行中、移動中や宿の一室で読み耽り、感銘を受け結局古本屋には返しませんでした。
特に第四部、近藤さんの文章に特徴的なユーモア感覚を一切排除した、ソン・サンを中心にヘン・サムリン政権に対する連合抵抗政権「民主カンプチア連合政府三派」を追う迫力あるルポルタージュは圧巻です。
第一部 メコンの勝者たち
第二部 パリの革命