色川武大のレビュー一覧

  • 狂人日記
    タイトルが『狂人日記』ですが、「狂人」という言葉と裏腹に、精神病院に入院している主人公の語り口はいたって冷静です。現実と虚構を繰り返す中、自己の状況を細やかに分析して内省しています。ただ、その冷静に語る心の内が、ところどころ読み手の胸を刺す言葉がいくつもあり、どんどん話しに引き込まれました。

    主人...続きを読む
  • 狂人日記

    思い浮かべるのは島尾敏雄の『死の棘』、武田泰淳の『富士』。
    一人の人間が作品に執着出来る範囲を遥かに超えており、純粋に屈服させられてしまう。
    とりわけこの作者のひたむきと言える作品へのエネルギーと凄みの加え方は読後も後年印象に残る。
    読書体力は要すが名作。
  • 百(新潮文庫)
    大好きな作家・色川武大の大好きな一冊。自身の卑屈な部分を非常に繊細で絶妙に表現している。同時に、とても純粋な人間性を持っていた方なんだというのも見てとれ、読後のくどさがない。親との確執、愛情、自己との葛藤、自嘲……。誰もが持つ泥臭さを、美しい文体で著した一冊。何度でも読み返したくなる。
  • 狂人日記
    もう読みたくない!ってくらい落ち込む。それくらいリアリティがあった。「自分も将来こうなっちゃうのかなあ…」って気分にさせられました。
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    これは時代を超えて読まれる本。
    座右の書にする。

    参考になったことは枚挙に暇がないが、取り急ぎメモしたポイントは以下の通り。

    人生を俯瞰して眺める。9勝6敗の勝ち星・負け星を目指す。適当な負け星を拾っておく。

    禍福は糾える縄の如し

    あたらしい世界に入っていったときは、納得するまで眺める。新し...続きを読む
  • 狂人日記
    幻覚と現実が区別なく淡々と記される。それでも根底にあるのは誰しもがかかえる孤絶で、主人公のあこがれる健常者という在り方自体がなによりもの幻想なのだと思える。その幻想を支えるのが病だ。「いつか病気が治ったとき、空には何もないだろう」という一文が胸を打つ。
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    劣等生に対する人生の生き抜き方を教えてくれる本。戦争、退学、博打打ちなど経験し「どろどろ時代」も過ごしてきた著者が、様々な場所で様々な人を観察してきた経験を基に、人生をしのぎ勝つ方法を教えてくれる。
    特に、9勝6敗論、先制点を取得、自分の駄目なところを守り育てる重要性は、いつも目の前のことや自分のこ...続きを読む
  • 狂人日記
    正気を失うという言葉を体感できる
    主人公の脳内と現実が混じり合い、精神が崩壊していく様子の表現が素晴らしい。
    所々生々しいのも良い。
    1回読むだけで十分。
  • うらおもて人生録(新潮文庫)

    とても面白かった。
    いままでと違う視点、感性を知れたよう。会うべき時に会うべき人と出会うように、本もまた然りだなと思う。

    人生の中には幾つかのフェーズがあって、そのいくつかのフェーズを経ていないとわからない観点のお話だなあと随所随所で思った。
    自分の弱さやどうしようもなさ、しょうもなさに気づいて...続きを読む
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    名著。
    2020年8月18日讀賣新聞朝刊に「没後30年 底知れぬ魅力」と色川武大の記事が出ていた。人気だそうだ。
    ほぼ日の読書会第1回課題図書。以前から「麻雀放浪記」とか、「友は野末に: 九つの短篇 」は読んだことがあった。「霧中の読書」 荒川 洋治 がこの本を絶賛していて、まずこれから読めと、言わ...続きを読む
  • 私の旧約聖書
    正直まだすべては理解できないけど
    作用と反作用のような自然の摂理は昔から変わっていないことは想像がついて、今の世の中を見るときのヒントになると思う。

    自分の成長とともに読み返したい。
  • P+D BOOKS ばれてもともと
    「色川武大の文章」の魅力について考えた時、ふと分野は異なるが「桑田佳祐の歌」と近い点がいくつか思い浮かんだ。

    どちらも、その魅力の要がtone(色川さんの場合は文体、桑田さんの場合は正に声そのもの)であり、大げさに言うなら「作品が何について語っているか(書評の対象が何かとか、歌詞がどうとか)以前に...続きを読む
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    開始3ページでこの著者はとんでもなく優しい人、なのではないかという気がしました。
    そして、全編通して読んでみて、当たっていた、と思いました。
  • 百(新潮文庫)
    退役軍人の父親との親子関係をつづった私小説短編集。

    起きていることをあるがままに受け入れるということは
    実は大変なこと。でも、この親も、この子(著者)も、それ
    が出来てしまう。出来てしまうと言うよりは、そうする
    ("身幅で生きる")ことしか知らないと言った方がいい
    のかもしれない。

    ...続きを読む
  • 狂人日記
     小説を読んでいて「これ、俺のことじゃないか?」と思えることってあると思う。
     ちょっとおかしな人だったら「断りもなく俺のことを書きやがって」と著者にクレームを入れる、なんてこともあるだろう(実際にあった訳だし)。
     僕はそこまで頭がおかしく……って書くとまずければ……純情無垢じゃないから、そん...続きを読む
  • 百(新潮文庫)
     私小説になるのだろう。
     色川武大とその弟、母親、父親、その他親族との関わり合いや愛憎入り乱れた葛藤を描いている。
     著者自身、ノーガードで自身のダメな部分や醜い部分を、あますところなく書いている。
     自嘲気味、という訳ではなく、割とドライに、それでもあまり俯瞰しすぎずに、程よい距離感を保っ...続きを読む
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    いいですか。9勝6敗をコンスタントに維持するのが大事なのです。

    そっか、全勝を目指さなくていいんだ、っとホッとされた作品でした。この他にも生き方の指南が色々とあり、それらにはどれも温かみがあります。
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
    近所のおっちゃんみたいなゴツゴツとした話し言葉で綴られる文章のひとつひとつに、良くあるHOW TO本や自己啓発本とも違い「この人は、ほんとうのことを言っている」と感じるのは、勝ち続けることの危うさや上手く負けることの大事さをもしっかりと説いてくれているからだと思う。
  • 小さな部屋・明日泣く
    2016.9.10 「小さな部屋」を読む。
    「熱中することの不気味さと美しさ」

    〜あらすじ〜
    鉄格子のついた部屋に越してきた主人公、東郷文七郎。折り目正しい青年であった彼が、その部屋に夜毎訪れる猫と生活を共にし始めることをきっかけに少しずつ人生の歯車を狂わせてゆく。


    参加者の読後の感想で主だ...続きを読む
  • うらおもて人生録(新潮文庫)
     ソフトな文体だが内容は極めて高度。なんというか…すべての人間に共通する「人生の原理原則」が全編に亘って書かれていると言っても過言ではない。著者が持っている経験はとても特殊なもので、接点を持つ人はそれほど多くはないかもしれない。しかしその特殊な経験から抽出された「生き方のセオリー」とでもいうものは思...続きを読む