色川武大のレビュー一覧
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タイトルが『狂人日記』ですが、「狂人」という言葉と裏腹に、精神病院に入院している主人公の語り口はいたって冷静です。現実と虚構を繰り返す中、自己の状況を細やかに分析して内省しています。ただ、その冷静に語る心の内が、ところどころ読み手の胸を刺す言葉がいくつもあり、どんどん話しに引き込まれました。
主人公は幻覚や幻聴はあれど、病気で働くことが叶わず、一緒に暮らしている女に対して申し訳なく思っているところは、まったく健常者と同様です。それだけに、余計に気に病んでいます。逆に、当人が病気であることに甘えて、周りの人たちに依存できれば、少しは気分も楽にもなるのにと、気の毒なところも感じました(それができ -
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これは時代を超えて読まれる本。
座右の書にする。
参考になったことは枚挙に暇がないが、取り急ぎメモしたポイントは以下の通り。
人生を俯瞰して眺める。9勝6敗の勝ち星・負け星を目指す。適当な負け星を拾っておく。
禍福は糾える縄の如し
あたらしい世界に入っていったときは、納得するまで眺める。新しい職場では、まず白紙。能力を隠したり、とぼけたりする必要はないが、要領やテクニックは最初は出さない。小さなところでは先に陣を張った人を尊重する。礼儀、あらゆるものの下につきながらも、眺めてる。他人の様子を実例にする。基本セオリーを多く発見する。
大きなところでは、自分の生地をいくらか配慮しつつ、出 -
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とても面白かった。
いままでと違う視点、感性を知れたよう。会うべき時に会うべき人と出会うように、本もまた然りだなと思う。
人生の中には幾つかのフェーズがあって、そのいくつかのフェーズを経ていないとわからない観点のお話だなあと随所随所で思った。
自分の弱さやどうしようもなさ、しょうもなさに気づいて受け入れられているかどうかは人生のすすめかたにおいて大きく影響することだなあと思う。でもそれって、簡単じゃないなって思う。だって若さはそういうことを美しいほど綺麗に拒絶したりして、勝手にだいぶ深い傷を負ったりすることだから。それって誰もが通ることで、ありきたりで格好悪くてどうでもいいねって言いたくて -
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色川武大 「 うらおもて人生録 」プロ論であり人生論。若い人 向きに書いているが、若い時には わからない 現場感がある
著者の博打打ち人生から プロとして細く長く生き抜く術を論じた良書。共感する言葉が多々ある
共感点
*プロはフォームの世界
*9勝6敗を狙う
*運をコントロールする〜運は 公私を問わず 生涯で通算すると、プラスマイナスゼロになる
*生きているだけでも、かなり運を使っている
プロはフォームの世界
*プロは強弱を問題にしない〜プロに弱い者はいない
*プロは ほぼ一生を通して メシが食えねばならない
*選手の目標は 年間打率であり、通算打率
*フォームは 今日まで 守ってきた核 -
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「色川武大の文章」の魅力について考えた時、ふと分野は異なるが「桑田佳祐の歌」と近い点がいくつか思い浮かんだ。
どちらも、その魅力の要がtone(色川さんの場合は文体、桑田さんの場合は正に声そのもの)であり、大げさに言うなら「作品が何について語っているか(書評の対象が何かとか、歌詞がどうとか)以前に、その声だったり文に触れるだけで受け手を惹きつけてしまうような圧倒的な強度」である。
あとは「才能や感性でさっと作っているように見えて、かなり冷静な自己批評の視点を持ち合わせている感じ。また、それを作品に落とし込むバランス感覚」だ。
また、どんなに人間のロクでもない部分を描いても、根っこの部分の品 -
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小説を読んでいて「これ、俺のことじゃないか?」と思えることってあると思う。
ちょっとおかしな人だったら「断りもなく俺のことを書きやがって」と著者にクレームを入れる、なんてこともあるだろう(実際にあった訳だし)。
僕はそこまで頭がおかしく……って書くとまずければ……純情無垢じゃないから、そんなことはしないけれど、読んでいる間「これ、この狂人、俺にそっくりだよな」とずっと思っていた。
生き方が似ている、というか、他人への接し方、外の世界への接し方、社会との折り合いのつけ方、要するに己自身への接し方、それらがまるで自分を客観的に見ているように描かれている。
そりゃそうだよ、こんな生