平山亮のレビュー一覧
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親を介護する息子たちを温かくも厳しい眼差しで説いている。
いまだに、介護といえば女性がするものという世のなかの感覚が根強く残っている。性別役割分業的にとらえるべきでないといった硬い言い方をしなくても、実態としてもはや、自分の親は自分で介護する、あるいはその算段をつける時代になりつつある。そのようななかで介護する人たちの声をもとにしている。「28人の現場から」という副題がついていることもあり、各人のいろんな喜怒哀楽のエピソードが紹介されていることを期待して読んでみたんだけど、各人のエピソードが大して収まっておらず、むしろ各人へのインタビューなどをもとにした「息子介護」なるものの分析に大部が割かれ -
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実に面白かった。兄弟の経済格差は実は社会問題の格差の問題であること。家族の問題は実は社会構造そのものに規定されていること。そもそも、戦前は夫婦でも子供がいない夫婦も多くて養子制度が幅を利かせていたこと。核家族化というのは、いままでの大家族制度を維持したままで、戦後の高度成長期という国家による扶養によって可能となった一時的な社会現象であったこと。現在直面している家族問題が、近現代史の社会構造と社会史経済史と無縁ではないこと。貧困問題、家族問題、家族の在り方、介護問題の在り方はもっと時空間的にひいて見ないと問題の所在を見落とすということであり、きょうだい格差(きょうだいリスク)はそのような背後があ
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まえがきで丁寧すぎるくらい、この章は読み飛ばして
大丈夫ですとたくさん書いています。
「息子」が親の介護をすることについて。
前半部がデータの検証的な話で
実例が少なくぴんと来る話も
ないので、ちょっと失敗かなと思ったら・・・、
後半の読み応えのすごさ!!
仕事から介護に比重を移した時の、経済的、
世間的にもペナルティを受ける感じの例(女性は
全く逆になる)。
男同士の友人の集まりでは、介護の悩みは
話しづらい(言ってもお互いにいい気分にはなれない)
現実。
両親を介護していて、母親を介護していた時には
近所から色々と助けてもらっていたが、母親が
亡くなってからはめっきり誰も来なくなる現 -
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むかしは、介護といえば、女性がこれにあたるものとされる向きが強かった。
娘であったり、息子の嫁であったり。
それがいまや、配偶者による介護だったり、
息子による介護だったりというのが、増えているようですね。
とくに息子介護については、
一人っ子化、晩婚化、独身でいる人の増大という
現代人の在り様の傾向が影響していて、
さらに、就職難や、介護が理解されない社会構造なども
その背景としてあるような状態。
本書ではその解決については述べられませんが、
現状分析としては、なかなかに的を突いたものになっているように
読み受けました。
なにせ、ぼく自身が息子介護とは言わないまでも(主介護者が親父だか -
Posted by ブクログ
息子介護はブラックホール。解説で上野千鶴子は指摘する。介護、をめぐるシチュエーションは息子介護に限らず、100人いれば100通りのそれがある。しかしそれにしたってブラックホールなのが息子介護なのだ。
理由はなんとなく、感覚としてわかる。それこそ「もう一つの男性学」ではないけれど、日本の男という生き物を考えたときに、そうなるよね、という確かな感覚がある。が、ゆえにこの本に価値があり、意味があると思う。
介護の専門家ではない著者だからこそ、の、単なる事例集でもなく、公約数探しでもなく、みんなにやってくるそのときを、それぞれに考えさせる本。
上野先生、勝手にしなれちゃ困ります、とセットがいいんでな -
Posted by ブクログ
ネタバレ本を読む前から分かっていた事だけれど、きょうだいリスクを下げる為には、親が元気なうちに話しておくこと。
読んで恐ろしいと思ったのは、民法上で「扶養する義務がある」と下される可能性があること。
少なくない借金を抱える非正規雇用・独身のきょうだいとは過去に衝突があり絶縁状態。今は親が面倒を見ている状況。親という防波堤がなくなることは考えたくないが、いつかは必ずそうなる。話すことすら絶望的な私はどうすればいいのだろう。読んで不安が大きくなった。
ただ、これは私自身の境遇故の感想なので、普通のきょうだい関係のある人は参考になると思う。予め家族と話しておく・公的機関を利用する・成年被後見人を設定して -
Posted by ブクログ
「きょうだい」のなかに、独身、無職、孤立等、生活に不安を持つ人たちがいたら。将来、かれらの面倒を見るのは誰なのか。
最近は「きょうだい」の世話に苦しみ、世話をしている当人まで貧困状態に陥るケースも多いという。これまで確かに存在していたのに、ほとんど無視されていたリスク。
著者は原因を社会の福祉システムに求める。性別分業的な男性稼ぎ主世帯を想定したシステムが、他の家族が極度に世帯主(稼ぎ主)へ依存することを促進し、個人レベルの社会保障が充実していないためだ。
配偶者控除の見直しは世帯レベルから個人レベルへ社会保障システムを変革する一歩であり、「きょうだいリスク」を軽減する政策と評価している