野口旭のレビュー一覧
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本書の意義を見るには当時の小泉政権発足当初のマスコミやその政権に対する過剰な政治「期待」の一億総ヒステリー状況があったことを認識しておく必要がある。9月30日、 小泉改造内閣が発足。柳沢伯夫金融大臣を更迭して、竹中経財相に兼務させた。これにより以後は不良債権処理の強硬策を主張する竹中が小泉政権の経済政策を主導した。当時はデフレ下で、当時は株価が7000円台にまで落ち込み、住宅価格も落下していた。すなわち資産価格の下落が激しかったのである。そこで、金融機関の貸し渋りと不良債権が問題視され、株価の下落は金融機関の含み益の減を通じて、自己資本比率8パーセントも割り込む事態が発生しつつあった。こうした時、竹中平蔵と小泉純一郎は、強硬な構造改革(構造改革といっても、官僚の亜天下り先としてある特殊法人、公益法人、財団、社団を含む官僚機構の改革と道路公団、郵政事業の民営化は別物としてみる)政策として金融機関の「解体」を目論んだ。
多くのエコノミストが賛同する「構造改革が景気回復を促す」という主張が大きな誤解であり、一億集団ヒステリーのもとでの妄想であることが明確に論証されていく。読み進むうちにどんどん引き込まれ、構造改革論の推進によってマクロ経済の安定もたらされるという政策が経済学の初歩から言っても誤りであることが経済学の素人でも理解できる。標準的なマクロ経済学の適用が、本書には満載されている。
不良債権も日本的雇用システムの崩壊もマクロ政策としての金融政策の失敗の結果、したがってミクロの政策や不良債権処理を進め、日本的雇用システムを壊したところで景気回復にはつながらない、とする総需要の不足でデフレが起き、デフレが原因で不良債権はその結果であるという基本の論理には説得力がある。デフレ不況は、循環的な景気低迷であり、また、構造改革は「長期」的な視点を持って取り組むべき地道な「政治」作業である。構造改革そのものを批判しているわけでは全くない。それは、本書の中途にも掲載されているように、レントシーキングとして、既得権益を省益として保持し、天下り先の保存に狂奔する官僚制の問題点の指摘もあることから、充分に理解できる。
いろいろな議論を論理で整理、デフレ不況という総需要の不足からマクロの経済事象がおきておりその明快さで一読の価値は2008年となった今でも一読の価値がある。というのも、マクロ経済についての標準的認識方法が、本書には掲載してある。標準的マクロ経済学の有効性と反経済学的「主流派」(マスコミ)経済学の違いが分るからである。
以下引用
「不良債権が元凶なのか
しかし、不良債権の存在を景気悪化の「真因」とする見方には、経済現象の因果関係の把握に
関する根本的な認識の誤りがある。というのは、不良債権の存在がさまざまなルートを通じてG
DPを低下させているのがかりに事実としても、その不良債権自体が他の経済変数(たとえば、
資産価格、企業収益、物価等々)に依存する「内生変数」である場合には、既存の不良債権の償
却それ自体は必ずしも「不良債権問題」の根本的解決には結びつかないからである。逆にいえば、
不良債権問題が単に不良債権の償却のみによって解決されうるのは、不良債権が純粋に外生要因
であるか、あるいは「既存の不良債権の減少が同時に不良債権発生の 『原因』をも縮小させる」
という自己強化的なケースにおいてのみである。
残念ながら、不良債権に関しては、このような幸運な因果関係を想定することはできない。と
いうのは、不良債権の最大の 「原因」がデフレと資産デフレであるのは明らかであるが、デフレ
と資産デフレの原因は必ずしも不良債権ではないからである。
バブル崩壊直後に発生した不良債権は、そのほとんどが資産デフレ、とりわけ不動産価格の急
下落にともなって発生したものであった。しかし、九〇年代後半以降に発生した不良債権は、デ
フレとそれにともなう実体経済の悪化によって生み出されたという側面が強い。したがって、既
存の不良債権を何らかの政策手段によって処理したとしても、このデフレと資産デフレが続くか
ぎり、「不良債権問題」それ自体は永遠に解決されない。むしろ、もし既存の不良債権の処理が
デフレと資産デフレを悪化させることになれば、不良債権は結果として拡大する可能性さえある。
その意味で、「不良債権処理なくして景気回復なし」という政策は、きわめて大きなリスクをは
らんだ処方箋なのである。」
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Posted by ブクログ
「アンチ・リフレ派によるリフレ派批判その2
筆者が注目したもう一つのリフレ批判は、松原隆一郎氏(東京大学教授)のウエブサイト「思考の格闘技」に掲載されている、二〇〇四年七月六日付けのコラム的論考「バカさえ…」である。木村剛氏の場合とは異なり、この松原件の批判は、その対象はリフレ派であり、とりわけ『エコノミスト・ミシュラン』の三人の編者でえることを明示した上でなされている。それは形式的にも、それ以前に展開された一連の応酬、すなわち松原氏の同「思考の格闘技」における『エコノミスト・ミシエラン』批判「『バカの壁』について」(二〇〇四年二月一七日付)、それへの『エコノミスト・ミシュラン』の三人の編者による。ジョインダー「デフレ放置の無責任性」 (太田出版Webに掲載。)、
それへの松原氏の再反論「『バカ (略)』 につけるクスリ」、さらにそれへの飯田泰之氏によるリジョインダー「松原氏の反論に対する若干のコメント」 (同じく太田出版Webに掲載)を受けた再々反論という体裁をとっている。
インフレとインフレ期待の区別は重要
ここでの松原氏の議論の問題点については、やはり上記「バカさゆえ・・・」 で揶揄の対象とされている山形浩生氏による的確かつ詳細な指摘「松原隆一郎へのお返事‥ケインズが本当に言ったこと」 (二〇〇四年七月一七〜一八日、七月二一日・一一月三〇日加筆、がすでに存在しているので、筆者がここで改めて逐一指摘するつもりはない。ここではもっぱら、山形氏が指摘しておらず、かつリフレ派にとって看過できない問題点だけに絞って指摘しておこう。それは、松原氏が、「実物投資が増えないのも、消費が回復しないのも、ともにデフレが原因だと彼らはいっていたのだが、景気が回復しているここ数カ月、消費者物価指数はさらに下落している」とし、そのことをもって「リフレ派の理屈が総崩れになってしまった」と決めつけている点である。
結論的にいえば、松原氏がここで批判したつもりになつている「リフレ派」とは、本来のリフレ派ではなく、松原氏が勝手に作り上げたそれにすぎない。というのは、リフレ派の論理からいえば、投資や消費が回復しない原因は、デフレそのものというよりも、「デフレ期待」だからである。そして、景気回復に必要なのは、インフレそのものというよりも、「インフレ期待」である。というのは、人々の貯蓄・支出行動にとって重要なのは、過去のではなく将来のインフレあるいはデフレであり、それから導き出される将来の実質金利だからである。
つまり、松原氏のように、単に現状がいまだインフレではないことを指摘しても、それはリフレ派の論理への反証にはまったくならない。そのような反証のためには、現状の景気回復がデフレ期待のさらなる高まりととも生じていることを示す必要がある。ところが、いくつかの指標から判断する限り、現状においてデフレ期待は明らかに後退しっつある。松原氏は「消費者物価指数はさらに下落している」としているが、二〇〇一年から〇二年にかけてはほぼJ%弱のデフレが常態化していた消費者物価上昇率(前年同月比、生鮮食品を除く全国総合指数)は、二〇〇三年に入ってからはそのマイナス幅が徐々に縮小し、二〇〇四年にはほぼゼロに近い水準を前後している。さらに、二〇〇三年五月には〇・五%前後にまで低下した」○年物国債利回りも、その後はかなり急速に上昇している。この長期金利の反転には、デフレ期待の反転が織り込まれている可能性が強い。
要するに、現状は、インフレ期待の望ましい水準にはまだ程遠いとはいえ、少なくともデフレ期待は低下しっつあると想定することができる。そして、後述の理由から、こうした期待の望ましい変化が現実の望ましいマイルド・インフレとなって現れるまでには、まだ相当な時間が必要になると予測されるのである。
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Posted by ブクログ
著者の新書版「経済対立は何故起こるのか」の改訂版らしい。というのも、野口旭の前著は、絶版扱いであって筆者は読んでいなかった、読めなかったのである。
野口には、基本から解き明かし理詰めで説明してくれる分りやすさがあって筆者好みの論述がいいのである。扱っている内容は、グローバリズムのことだが、グローがリズムの肯定面を貿易の観点から、比較優位説に従って述べてあって素人の筆者にも理解しやすい。グローバリズムという言辞を表題に持ってくるというのも中々に挑戦的今日的だが、「景気拡大」が持続しており、その恩恵を受けている上場企業では、グロバーリズムの否定面を見る向きは少なくなっているだろう今日、出版のタイミングがずれたかなという印象がある。従って、国際経済を基本から根本的に見るというような表題の方が、長期的には売れただろうにと老婆心ながら思ったが・・・。国際経済といっても、経常収支=輸出ー輸入=GDP−民間消費を機軸に、イギリスの通貨危機、アジアの通貨危機が、為替の安定と金融政策、資本移動の自由、のトリレンマによって引き起こされたというきわめてオーソドックスな基本に沿った説明が丁寧に、また、素人にも分るように述べられている。無根拠な扇情的な経済評論や経済の名を騙った意図的な政治評論に流されることに疑問がある人は是非手にとって考えて見るべき参考経済本である。但し、中国の固定相場は、通貨危機に陥る可能性は、今日ほぼゼロであるという理由なき断定する箇所があったが、それがどうにも解せない。と同時に通貨危機が起きないという理由をぜひとも知りたくなった・・・。 -
Posted by ブクログ
日本経済はなぜ回復したのか? 逆から言えば、なぜ15年もの長きにわたって低迷したのか?
経済停滞は何よりもデフレのせいであり、歪んだ政策思想に基づく阿呆な経済政策でデフレを放置しつづけた結果であるというのが本書。この本はいわば、リフレ派による「戦後総括」であり、デフレが猖獗を極めた2002年頃からの経済論争を振り返って、なにが正しくて、なにが間違っていたのかということを浮き彫りにしている。
じゃあ、2002~2003年以降、日本経済が回復基調に乗った原因はどこにあるのか?
「まず、その最大の牽引車は、外需の拡大であり、それをもたらした世界的な景気拡大であった。しかしながら、国内のマクロ経済政策がリフレ的な方向へなし崩しに転換されていたということも、同様に重要な意味を持った。それが具体的には、2003年秋から04年初頭まで行われた、財務省の巨額為替介入と日銀の金融緩和の同時遂行という形でのマクロ的政策協調である。つまり、今回の日本の景気回復は、世界的景気回復と国内マクロ経済政策の両方に支えられて、かろうじて定着したのである」
と著者は述べている。
景気の回復について「構造改革が成功したからだ」なんて考えてるバカは自民党の議員くらいしかいないとして、「銀行の不良債権が解決したからだ」とか「企業がリストラに耐えたからだ」とかいう議論はまだ見られる。それどころか「デフレにはよい側面もあった」とか、「中国がモノを安くつくり過ぎるから世界的にデフレになっている」とかいう論さえ、死滅したとは言えないと思う(本書には「いつの間にか消え去った」と書いてあるが)。
そういった「間違った経済政策」についてズバズバと批判してあるので、小気味よい。まぁ「バブルつぶし」のときはイイコトだと思ったし(若いしカネなかったしひがみ根性だけはあったし)、「財政再建」と言われると立派じゃんやるじゃんと思ったこともあるので、自分自身への批判としてもアイタタなのだが。
はやくも好景気はおわったとか、いやまだデフレを脱出さえしてないとか、まだまだこの本の賞味期限はおわってないと思う。「あの構造改革ってなんだったんだろう?」とか「デフレにはよい面もあると言ってた人がいたような」とか、そーいうことをいまさらのように振り返るのも、興味深いんじゃないでしょうか。
(2006年ごろの初読時のレビューです) -
Posted by ブクログ
自分の頭ではどうも理解できない部分もあった。
例えば、比較優位産業は労働集約的産業→資本集約的産業→R&D集約的産業に移行していくとあったが、これは為替の問題で解決できるようなことではないのか。例えば、現在中国で繊維産業などが盛んに作られているが、これは中国が為替を固定させているからではないか。日本も円安になりさえすれば、そのような産業も少しは栄えたりもするのではないのでしょうか。
他の歴史的事実などの説明に関してはとても分かりやすく、勉強になりました。
中国に関してはイギリスなどのような通貨危機はないかもしれないが、物価を抑えられなくなってバブルになるってのがオチのような気がしてなりません。
「経済的敗者を生み出すのはグローバル化ではなく、市場経済の問題」という言葉は共感です。そりゃ、市場経済はなんらかのリスクをとらなければならないから、全員が勝者になることはないでしょう。それこそ社会主義の復活になってしまいます。
最後に、結局は日本一国の問題は何なのかと思うと、為替の問題、デフレの問題だと思えてなりません。そりゃ、グローバル化で世界ハッピーになっても日本がハッピーにならなければ意味がありません。それを考慮すると、まずはデフレを解消することが先決なのではないのでしょうか。
あと、貿易不均衡などのグローバル・インバランスなどは解消しなくてよいのでしょうか。
読み終わっても疑問が残り、自分の理解能力の不足に幻滅するばかりです。さらに勉強してから再読したいです。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
グローバル経済の拡大に取り残されつつあるといわれ続けてきたわが国の経済も、ようやく復調の兆しを見せ始めた。
わたしたちは、改めてグローバル化する市場経済の現実を冷静に見つめなければならない。
貿易、経常収支、為替レートなどの問題は、経済を理解するうえでの必須の基本事項である。
本書では正しい国際経済学の見方を、グローバル経済の現実に即して解説する。
[ 目次 ]
第1章 グローバル経済の虚像と実像(グローバル経済を学ぶ意味 グローバリゼーションの光と陰 「グローバル資本主義の危機」は本当か)
第2章 貿易は何のためにあるのか(国際競争主義はなぜダメなのか 比較優位の考え方 貿易についての誤解を解く)
第3章 国際分業のグローバルな展開とその変貌(変貌する国際分業構造 国際貿易体制の過去と現在)
第4章 貿易黒字・赤字の正しい考え方(国際収支の見方 貿易不均衡はなぜ起きるのか 貿易黒字・赤字の誤解を解く)
第5章 「グローバル資本主義」の真実(国際通貨制度の過去と現実 国際通貨制度の行方)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]