高木徹のレビュー一覧
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戦争をするにあたって、PR会社の重要性を感じさせられた。
世論を突き動かしてアメリカやNATOという大国からの支援を得るため、ボスニアへルツェゴビナは、セルビアを悪とする情報をアメリカのPR会社へ依頼。
セルビアも対抗して、PR会社に依頼をしようとするが、既にイメージが悪すぎて、多くのPR会社が依頼を断る事態に。
本書は1990年代の出来事なのだが、ネット、snsが主流な現代ではpr会社はどのような役割を果たしているのかが気になりました。
また、中立側だったカナダの人気の軍人さんが、セルビアの強制収容所があるかないから分からない。といっただけで炎上して、退任まで追い込まれてしまう事件が印象的だった。この手の炎上はむしろ、ネットメインの現代だと擁護派の意見もある程度拾われて、マスメディアの一方的な批判でキャンセルされることはなかったかもしれないと思いました。 -
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4.5 自分が知らない世界を知れた本
1992年からのボスニア紛争の裏で、いかに米国のPR会社が情報戦争で暗躍したかという話。
実際は被害者vs加害者という綺麗な整理ではない中、ボスニア=被害者、セルビア=加害者というイメージを国際的に定着させるために、PR会社がどのような施策を行なっていったか、時系列的に分かりやすくまとめられている。
一流のPR会社が議会、メディア、内閣の機微をみて各ステークホルダーに働きかけている点や、メディアの記者が伝えやすいように情報の出し方や価値の見せ方を工夫している点等が克明に書かれており、非常に勉強になった。 -
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この本を7年前に読んでからずっと興味があり、この春実際にボスニアに行った。想像以上に酷い被害で30年経っても爪痕がしっかりと残っていた。何かと戦争に首を突っ込むアメリカだが、この時はアメリカがいなかったらボスニアという国は存在しなかったかもしれない。この本ではムスリム人のナラティブが紹介されているが、セルビア人のナラティブに触れることはなかった。一方的な歴史認識ではあるが、この戦争ばかりはアメリカのおかげで最悪の事態を避けることができたと思う。しかし、9.11の後にこの戦争が勃発していたら、そしてトランプ大統領が当時のアメリカの大統領だったとしたら、また違った歴史になっていたはずだ。
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本書は2025年からの視点で見れば新しい古典になりつつあると思う。当時(1990年代)は一方向性のメディアの活用がPR戦略において重要であったが現在はSNSを活用した戦略が不可欠だ。その点が古典であると言えるだろう。
また本書で述べられているような手法は、その後のあらゆる場面で応用されある種、使い古された手段となっているだろう。そして受け手の大衆からしたら彼らの手法に辟易としているのではないだろうか?この陳腐性が古典であると考える2つ目の理由だ。
話は飛ぶ。あまりない例だがプロの手が入った情報戦略よりも素人がだす切迫した情報の発信の方が多くの方から共感を浴び窮地から逃れるという点に置いて、素人のPR手法が成功するケースもあるにはある。
当然インターネット時代においても広告代理店の影響力は広告戦略においてますます増大していると言える。先の兵庫県知事戦においてもPR企業の暗躍により現職の再選が実現したと言われている。
しかし、上記のような例外のケースも我々は知っている。正直に言ってPR企業の存在の必要性は理解できても倫理的に拒否感を抱いてしまうが、それを避けるためにこの手垢のついたPR戦略とは違った戦略の構築が必要になってくるだろう。
キーワードは、徹底的に正直になる、ということではないだろうか?世の中において反倫理的な行動をしないという人物、法人は皆無に近い。その中で自らのネガティブな情報も徹底的に開示し理解、共感を得ることは状況を有利にすることが出来る可能性もある。当然許容範囲もあるだろうが…
ミスリーディング上等の力技によって大衆を煽るような従来のPR手法では大衆の情報選択の高度化によって通用しなくなるのではないだろうか? -
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NHKディレクターの筆者が遠いバルカン半島での紛争マネジメントの逐一を丁寧な取材で描き出した良作。ユーゴスラビア連邦(セルビア共和国)と積年の紛争を抱えるボスニア・ヘルツェゴヴィナ共和国が、国際広告代理店であるルーダー・フィン社のジム・ハーフのサポートを得て、如何に国際社会のサポートを得て、国際的な外交交渉で取るに足らないボスニア・ヘルツェゴヴィナ共和国を檜舞台に立たせたか、メディア対策と演者の振り付け、場合によっては共和国軍事顧問や関係者の更迭など手段を選ばない緻密な戦略によりPR業務を遂行した様が描かれる。外交とは如何に砂上の楼閣であるか、一部のスキルをもった人間の技で多国間関係が築かれているか、国際社会の現実が描き出される。
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昨今の戦争において、武器以上に恐ろしい力を持つものがある。それは情報である。PR(public relations)とは、CM政界、官界などが、公共において価値のあるものを大衆に伝えて、信頼や協力を得られるように広告活動をすることである。本書は、あるアメリカの広告代理店が、セルビア共和国の紛争に対して、情報によってどんな力を発揮するのか、その過程について注目していく。
チトーが亡くなった後、ユーゴスラビア連邦内は分裂して次々に独立する。ユーゴスラビア連邦政府は依然として残っているが、政権は実質セルビア共和国の大統領ミロシェビッチが掌握した。そんな複雑怪奇な旧ユーゴスラビア諸国であるが、なかでも複雑なのがボスニアヘルツェゴビナである。本書によると、この国家の民族構成は、四割強がモスレム人(中世オスマントルコ、キリスト教からイスラム教に改宗した人々の末裔)、三割強がセルビア人、二割弱がクロアチア人となっている。このような多民族国家は、民族間の対立が激しく、ボスニアヘルツェゴビナ内のセルビア人は独立を望んでいた。
アメリカ、ルーダー・フィン社のジム・ハーフは、旧ユーゴスラビア内の紛争に向けて、政府と協力してボスニアヘルツェゴビナ側を支持しようと目論む。彼は世論形成するために工夫するが、相手の話を聞く、慎重に言葉を選んで答える、この二つは原則として守っていた。またルーダー・フィン社の方針として、明らかな不正手段に加担せず、モラルを重視すると誓う。このようにたとえアメリカ側が有利な戦略を立てた場合でも、露骨な不正を働かなかった。
先ほど述べたように、たしかに不正行為はしなかったが、その代わりに言葉を巧みに使って相手のイメージを下げた。そこで誕生したのが「民族浄化」である。「ジェノサイド」や「ホロコースト」など、セルビアをナチスと同等の扱いをしてしまうと色々とまずいため、新たな言葉でセルビア共和国およびその指導者のミロシェビッチに対する印象操作を行った。しかも短期間のうちにさまざまなメディアで同じ発言を繰り返すことで効果をより高めた。その結果、セルビア共和国のイメージはよりいっそう悪くなった。このように、情報が武力以上の力を世界中で発揮した一例だと本書を読んでわかるだろう。
著者は日本の外交当局のPRセンスについて言及しており、アメリカの高級官僚のように、民間から役所と官僚組織の外での経験がないため、組織として膠着状態であると批判する。この状態が続くと、国家としての日本の勢いが今後弱まるという。 -
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1992年3月のボスニア・ヘルツェゴビナの独立宣言を機に勃発した、ムスリム人、セルビア人、クロアチア人の3民族によるボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(本書では、「ボスニア紛争」と呼んでいるので、以下、「ボスニア紛争」と呼ぶ)における「PR戦争」を取材し、「NHKスペシャル 民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」というドキュメンタリー番組をプロデューサーとして制作した筆者が、その番組を書籍化したのが本書である。番組は2000年10月29日に放送され、書籍は2002年に発行されている。
ボスニア紛争では、「モスレム人=被害者」「セルビア人=加害者」という図式が出来上がり、ユーゴスラビア連邦への経済制裁や国連追放、NATO軍によるセルビア空爆にまで結びついた。しかし、実際にはそのような単純な話ではなかったということを、筆者は本書に以下のように記している。
【引用】
私は、バルカンで起きた悲劇には、セルビア人だけではなく、モスレム人にも、もう一つの紛争当事者であるクロアチア人にも責任があると考えている。それでも国際世論が一方的になったのは、紛争の初期の時点で、それまで国際的な関心を集めていなかったボスニア紛争に、「黒と白」のイメージが定着してからだ。このイメージは、その後のコソボ紛争でも、セルビア人=悪、の先入観のもととなり、NATOの空爆にまでつながった。
【引用終わり】
紛争の初期段階で、ボスニア・ヘルツェゴビナは、自国の独立の正当性と、セルビアによる不当な弾圧を訴えるために、外相を世界中に派遣する。外相は、国連・EC・アメリカ・アラブ世界等、あらゆる場所で、それを訴えるが、なかなか関心を呼ぶことは出来ない。特にアメリカでは、バルカンというヨーロッパでも中心とは言えない地域での内部紛争という理解をされ、期待していたサポートを得ることが出来ない。
そのような状況の中、ボスニア・ヘルツェゴビナは、アメリカの大手PR企業と契約を結ぶ。そして、PR企業は、セルビア人=悪、ボスニアヘルツェゴビナ=被害者という世論をつくるために、様々な活動を行う。本書は、その実際の活動を描いていく。
結果的に、ボスニア・ヘルツェゴビナは、意図通りの成果を得ることに成功する。その成果を得るために、PR企業の活動が果たした役割の大きさは正確には測定できないが、本書を読んでいると、仮にボスニア・ヘルツェゴビナがPR企業と契約せずに、単独で活動を続けていたとしても、絶対にこのような成果を得ることは出来なかったであろうことは、想像できる。
感想はいくつかある。
まずは、国際政治、特に地域の深刻な紛争の当事者が、このような形で、営利企業であるPR企業を活用しているということに対しての驚き。紛争は軍事力だけの闘いではない。世の中を味方につけられるかどうかによって、結果は大きく変わるということだ。今回のロシアのウクライナ侵攻についても、ロシア=悪という構造が出来ているが、ここにも、何らかのプロの仕事の結果が影響しているのかもしれない。
次に、本書に登場するPR企業、および、このプロジェクトを担当するチームのプロとしての仕事の鮮やかさに感心する。大胆な戦略と細心の注意を払った実行。それらの作戦が実際に効果をあげていく様子は、読んでいて一種痛快であった。
また、本書中に筆者も書いているが、こういった国際政治を舞台にした情報戦で、日本はちゃんとやれているのかという心配。政府、外務省にこのようなプロはいるのか、あるいは、外部のプロをきちんと活用出来ているのか。いや、出来ている感じは受けない。
約30年前の出来事を扱った、約20年前に発行された本であるが、そのような古さは全く感じず、楽しく読めた。 -
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私は昔から民族紛争に興味があった。だから旧ユーゴで起きた悲劇も知っていた。偶然にも大学に入ってからセルビアに行く機会があって、偶然にも現地の大学生と交流する機会があったから、本当に軽い興味本位で、セルビア人女子大学生に、そのことについてどう考えるか聞いたことがあった。(彼女は教育専攻で、歴史教育の観点で面白い話を聞けそうだと思っていた。)
今でも覚えてる。美人で凛々しい彼女の顔が厳しくなり、血相まで変えながら、「全部、資料を読んだ?左から右まで全部。ボスニアの資料もセルビアの資料も、もちろんアルバニアのも。それら全部読んでから聞いてる?あなたがそんな軽い質問聞いたところでこの戦争はわからないと思う。」と言ってきた。
私は質問したこと自体を恥じ、深堀することを恐れてあまりその話題に触れないままここまできてしまったんだけど(だって全ての資料は読めないから!!)、やっとこの本を読み終えて、彼女がなんであんな強い口調で私に詰問したのかわかった気がした。「あなたもPR戦略に乗った歴史を学んでいるんでしょ?」彼女はそう言いたかったんだと思う。
私たちが見てる政治ってなんだろう。歴史は?戦争は?正義って何?人の感情を巧みに探り当て、ピンポイントで狙ってくるPRは大きな力を持つ。世界の“事実”は広告の力でできている...リアルにそう思えてくる。
だからこそ、私は情報に対するリスペクトとコストをかけたいと思う。
おそらく高木さんには、まだ載せてない情報があると思うんです。時効になったあたりでもう一度書いて欲しい。
とても良い本を読んだ。
おすすめします。
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NKH記者によるルポであるが、マスコミ関係に限定せず政治・ビジネスなど、すべての「他人への評価」が人々の支持重要な決定要因となる分野で必読の書である。
政治に関して言えば、選挙時の有権者へのアピールの手段として。また、外交交渉における相手国民や相手国のディシジョンメーカーへの影響力の醸成手段として、本書に挙げられているボスニア紛争におけるボスニアの成功とセルビアの大敗を決定的にしたPR会社の貢献は見逃すことができない教訓となる。
恐ろしさを感じさせるのは、主役の一人であるPR会社のコンサルタントが、ボスニアの外交官シライジッチに対して好感を抱くどころか嫌悪しているにも関わらず、シライジッチを有能で同情を集める報道官に仕立て上げたことだ。さらに抜け目なく、実績だけ見れば有能で中立なカナダ軍のマッケンジー将軍を「事実だけをクローズアップ」して、「悪逆なセルビア」に味方し「弑逆されている被害者であるボスニア」に助けの手を差し伸べない、自由民主国家の敵に仕立て上げている。
「ワシントンの中の日本」にも外交におけるロビー活動の重要さをわかっていないと忠告があったが、どうやら国際政治でアピールが下手なように見える日本政府は「真実はいずれ広まると信じていた素朴なセルビア人」がどのような立場に追い込まれたかを真摯に受け止めるべきである。
ビジネスに関して言えば、不祥事や一見都合の悪そうなことへの対応方針に深く関係する。日本企業は「詳細がわかるまで」と(先延ばしも一種の意思決定であるという自覚なく)先延ばしにすることが多い。しかし、マッケンジー将軍がルーダー・フィン社にやりこめられたように、「何か悪い事態が起きた時に即座に反論し、逆に良い情報広めること」が危機対処の処方箋だということを肝に銘じる必要がある。 -
Posted by ブクログ
『戦争広告代理店』の人の新刊!!日本では概念さえ定着していないPRを駆使する国家もテロ組織も避けては通れない現代のメデイア情報戦の内幕。日本に一番かけている分野だなあ。PR会社や大手広告代理店と契約するのでは無く、その幹部を直接政府高官に認容する合衆国のすさまじさ。中国が(形式上でも)民主化し、メディア戦略を持った魅力的なリーダーが出る前に、日本は倫理面でのリードをキープしつつメディア情報戦を勝ち抜けるPR力を持たないと危ないぞと。そして、内政も外交も含め、演説以外はいまいちのオバマ大統領だが、情報の取り扱いだけは超一流なんだなと認識を改めた(とはいえ、ダメな部分が大きすぎてそのずば抜けた能力を生かせているようには思えないが)
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Posted by ブクログ
ネタバレ国際メディアを利用した、ボスニア戦争のボスニア政府の勝利、ビンラディンの戦略、オバマ大統領のPR戦略など、メディアをいかに見方につけることが、国際情勢の中で必要か、またメディアを味方につけたものが最終的に利を得ていくということを描いている。
前作の「戦争広告代理店」で詳しく述べられていたが、ボスニア紛争においては、3者の誰もが凄惨な行いをして降り、誰が一方的に悪い、という状態ではなかったが、アメリカのPR会社によって、「セルビア=悪」を周到に欧米諸国のメディアに植え付けいった。
また、アメリカの大統領選ではいかにメディアにいい情報を拡散してもらうか、のためにどの候補も多くの努力をして、それに勝ったものが大統領になるという。
また、PRにおいては、ウソの情報はご法度だが、都合のいい情報だけを集めて拡散、拡大させることで、PR側が作り出したいイメージを印象づけていくことが行われている。