高木徹のレビュー一覧

  • 国際メディア情報戦

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    ページ・ターナーとはまさにこのこと。テンポ良く繰り出される国際プレーヤー達の巧妙なPR事例にグイグイ引き込まれる。何度も読み返したくなる類の本ではではないけど、酒の肴にするには持って来いのまさに「新書の鏡」。中東情勢のブリーフィングにも良い。

    読みやすい一方でしかし終章の指摘は重い。確かに最近の日本には、敗戦後三四半世紀にわたり獲得してきた「アジア随一の民主・平和主義国家」としてのアドバンテージを、自ら手放すかのようなエピソードが散見されるような気がする。戦勝国中心の価値体系が正か否かは措くとして、折角国際社会のマジョリティーから賞賛されるまでになったんだからもっと上手くやろうよ、という著者のプラクティカルな提案はイデオロギー云々と無関係に受け入れられるべきだと思う。

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    2014年09月12日
  • 国際メディア情報戦

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    面白い本は、電子書籍でも一気読みしてしまうんですね。
    というか、電子書籍はどんどんリンクして読みすすめられるので、かえってヤバイ。

    本書は、「戦争広告代理店」で一世を風靡したNHK報道ディレクターによる、<今起きている>情報戦を描いたものです。

    「戦争広告代理店」と、その後に続く「大仏破壊」が激烈に面白かったので、高木さんの新刊が新書で出るというのには驚きとともに期待が高まりました。

    その期待を大きく超えて、素晴らしい内容でした。


    「戦争広告代理店」を読んで、面白かったと思った方にはお勧めです。

    ごく最近の話題にも触れていて、知らずに居たことが多いです。


    インターネット時代は、話題になった情報の拡散が爆発できで、そういった「いびつ」な状態での情報の流れがあたりまえになっています。

    その中では、ブランドを失うのも一瞬ですし、名声を築くのもあっという間です。
    それらの状況が、しかし、「プロ」の手で、出来事ごとに分析され、蓄積され、最適の振る舞いが提案され、その振る舞いを、細心の注意を払い周到に準備しリハーサルを繰り返し、世界の世論という大きなうねりのタイミングを見計らってメディアに載せることで、ある程度<コントロール>された情報爆発が起きます。

    これは不可避の状況で、日本も情報鎖国でいることはできず、むしろ今世界が持っている日本への良いイメージを訴えていくこと、そのために専門的な分析者を要することなどが必要と訴えられており、そのとおりだと思いました。


    しかし、表舞台にたつというのはしんどいことですね……

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    2014年04月26日
  • 国際メディア情報戦

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    国際メガメディアを使ったPR戦略が,国際政治を動かし,冷戦後の世界の紛争に多大な影響を及ぼしている。ボスニア紛争で注目されたこの手法が,国際世論をどう動かしてきたのか,その力学を,ビンラディンやボストン爆破事件,2020オリンピック招致を巡る駆け引きを通して眺めていく。
    民族浄化というバズワードを設定し,切り取りやすいシンプルで明快な発言(サウンドバイト)をメディア受けする要人に語らせ,ミロシェビッチを極悪人として描くことで(サダマイズ),「セルビア許すまじ」と人々の感情に訴えかけたPR会社。その手口は洗練されていて,プロパガンダの新潮流を感じさせる。重要なのは,決して法に触れる行為はしないこと。一方当事者に肩入れはしても,意図的に虚偽の情報を流すようなPRは御法度。不正が明らかになったときのダメージは大きく,不正は明らかになるからだ。その制限の中で,いかにして目的を達成するかがポイントになる。
    国際政治のプレーヤーに必須の情報戦略。これはもはやゲームの前提であって,当然ウクライナで現在進行中の事象でも活用されていると見るべきだ。日本は,というといささか心もとなく思えるが,五輪誘致成功に見られるように,まったく話にならないというレベルでもないようだ。

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    2014年04月16日
  • 国際メディア情報戦

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    ○NHKのディレクターで、数々のドキュメンタリー作品や著書のある、高木徹氏の著作。
    ○国際的に行われるメディア戦略や、情報戦の重要性について、アメリカのPR会社の担当者への取材や、メディアのキーマンへの取材、具体的な情報戦略の過程や結果を通じて、これからの日本のメディア戦略のあり方を描いた作品。
    ○単なるインタビューやニュースだと思っていたことの裏側に、これほどまでに深く・幅広い戦略が練られているということを初めて知った。また、とても興味深かった。
    ○単純にテレビや新聞を読んでいるだけでは分からないが、これからは、裏側の戦略についても、目を向けてみたい。

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    2014年04月16日
  • 国際メディア情報戦

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    ネタバレ

    現在の国際メディア情報戦の基本テクニック
    ・サウンドバイト(要人の発言の短い断片)
    ・バズワード(メディアを騒がす流行言葉;)
    ・サダマイズ(特定の人物を悪の権化として標的にすること;サダム・フセインより)

    「ワシントンを動かす三角形」
    ・ホワイトハウス
    ・議会
    ・メガメディア

    「PR」
    あらゆる対象(メディア、政策決定者、有権者代表の議会、オピニオンリーダーなど)と、様々な工夫と努力でコミュニケーションを重ね、世論を形作ること

    その他
    アルカイダ、アッサハブ、アルジャジーラ

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    2014年03月16日
  • 国際メディア情報戦

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    ”メディア情報戦”の名のとおりまさに戦争。平行して読んでる「孫子兵法」のなかでも情報戦は最重要項目として位置づけられている。こりゃおちおち昼寝してる場合じゃないなぁ。

    しかし情報戦そのものを”楽し”んでいいのかな?面白けりゃいいか。

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    2014年03月12日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    ネタバレ

    情報がいかに武器となるかがありありとわかる内容でした。読み進めていくうちに、一方的な視点での情報発信に疑問を抱きましたが、後段に筆者が一方的な情報が必ずしも悪と断じるのは違うという部分にも、この情報戦での勝者を鑑みると、この表現に共感できました。
    また、自身の感情、印象を発信側から操作されているかを気付かされる書籍でした。

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    2026年09月15日
  • マンガでわかる トヨタ流の生産方式とマネジメント

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    どのトヨタ式生産方式の漫画解説よりわかりやすい気がする。どこで仕事が止まっているのか、どうすればいいのか、誰がやってもできるようにしておくためには、などがわかってよかったと思う

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    2026年01月28日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    戦争の被害者ってPRで作られるのね⋯と。戦争の当事者が味方を作りたいとき、どのようにするのか。考えてみればどこにアピールするのかなかなか難しい。1991年に旧ユーゴスラビアで起きたボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争では結果的にセルビアが悪者となりボスニア・ヘルツェゴヴィナは被害者として欧米のシンパシーを得ることに成功した。実は当時アメリカにとってボスニア・ヘルツェゴヴィナなど政権中枢でさえ殆ど話題に上らない弱者だった。シライジッチというボスニアの外相がアメリカに来たとき、彼は何も当時のアメリカブッシュ政権にもマスコミにもコネが無かった。だが、PR会社ルーダー・フィン社にPRを依頼することで状況をアメリカを始めとする欧米諸国に知ってもらうという意味ではどんどんボスニアにとって好転していく。そこにはシライジッチの何か憂いを持つ話し方とハンサムな見た目を持ち英語も達者であることを精一杯アピールに使おうというPR会社の策略がはまったというのが大きい。調べてみるとyoutubeで当時のシライジッチがサラエボへのセルビアからの空爆で亡くなった6人の子どもたちへのコメントを求められたインタビュー画像が見られる。確かに、それを見ると彼とともにセルビアへの怒りが駆り立てられそうだ。セルビアによるボスニアへの攻撃は本当なので、ボスニア人としてなんとかしたいという気持ちは本物なれど、PR戦略によってシライジッチも変わっていく姿もあり、読み進めると釈然としない気持ちが大きくなる。セルビア側も、アメリカ市民でもある実業家が立ち上がり遅ればせながらのPRを始めていくので、何だかそっちも応援したくなって来てしまう‥結局のところこのようなPR会社の戦略が報道にここまで関わっていると知ると、真実って「PRされたもの」を通じて知っているつもりになっているのねと、報道不信になることこの上ない。悪いとまでは言わないけど、強かでないと生きていけない世界の現実にどう立ち向かうといいのだろうとなかなかきつい気持ちになる本だった。
    1990年当時、自分は高校生。全く知らない中で世界は動いていたのね。

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    2025年12月31日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    ネット時代以前の話しだが、政治の裏に暗躍する広告マンが、如何に遣り手で情報操作を巧みに行ったかが分かる。

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    2025年11月29日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    ネタバレ

    この本のここがオススメ

    「石油のようなわかりやすい経済的な利害関係がないことは、ボスニア紛争にアメリカ人の関心を引き付けるには、不利な条件でした。しかし、私たちは、もっと高度な視点から人々の心に訴えかけることにしたのです。それは民主主義と人権の問題です」

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    2024年06月04日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    ウクライナ戦争でも当然のようにPR会社が暗躍し、意図的に取捨選択された情報、もしかしたら偽情報まで流され、それを私達はマスコミを通して知っているつもりになってるんだろうな。

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    2022年08月27日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    面白い。国際政治の舞台におけるPR会社の暗躍を描いている。
    数ある一つの論点でしかなかったセルビア紛争を国際社会の主要論点化し、かつクライアントであるボスニアを善玉・相手国であるセルビアを悪玉に仕立て上げるプロセスが、非常にドラマチックに描かれている。
    ゼロから作り出すことはできないが、クライアント国が持っている特徴のうち、良いものを最大限に引き出し宣伝する。また相手国が持っているネガティブ要素を誇張も含め最大限宣伝する。その宣伝方法においても、ロジックではなく感情に訴える。説明するのではなく、その映像や画像が引き起こす連想を戦略的に狙い利用すると。

    痩せた上半身裸の白人・有刺鉄線。
    何も説明しなくても,これは強制収容所を連想させ、それを保持するセルビアに悪のイメージを強烈に抱くことになる。
    一時が万事、嘘ではないが、持っている負の特徴を最大限喧伝するとともに、そのアピールが効率的に回るように情報網を整理したり、取り上げられやすいように、インタビューでの文言を短くキャッチーにしたり。

    ここまで考え抜かれて、PRされるのであれば、「最後には正しいことが伝わるはずだ」という日本人の大半の考えは非常に幼稚であると思わざるを得ない。

    これは一企業内においてもそうで、伝えるべきアイデアがあれば、それをどうPRするのかまで、デザインすることが優れたビジネス人としても必要だと思う。

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    2022年06月05日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    戦争広告代理店 高木徹 講談社

    事実を断片的につなぎ合わせ
    捏造されていく憎悪による恐怖社会を綴る
    克明なドキュメント

    ペンの力は往々にして
    感情的なエコ贔屓を誘発し
    武力を上回る狂気の暴力を発揮する
    そこに利害を目的とする冷徹な
    広告業が関わる情報戦を展開するのが
    物質至上世界である

    アンネの日記がそうであったように
    世界中の人心を動かすこともあるし
    綿密は計略によるキャッチコピーと
    イメージ操作で生み出すことも可能だ

    ホロコーストや民族浄化の一言で
    一方的に偏った情報が世界を駆け巡り
    凶器となって一人歩きし出し
    手の付けられない勢いで
    無垢な民衆を手玉に取り洗脳してしまう
    一部分を切り取った言葉と映像が氾濫し
    全体像を隠蔽して歪めていく
    科学も宗教も組織の一人歩きが
    喧嘩両成敗を忘れ
    個々の広い視野を潰し
    自らがばら撒く不安恐怖に
    追い立てられながら
    新たな虚構をでっち上げていく
    こうした未曾有の貨幣とプロパガンダに
    翻弄されているのは一般人であると同時に
    灯台下暗しに陥っていながら
    惰性で世界中を駆け巡り
    墓穴を掘っている権力者達でもあるのだろう

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    2022年05月30日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    Yがやけに勧めるので読んでみたがそれなりにおもしろかった。この人テレビのディレクターだけあって、盛り上げ方がうまい。最後のパニッチとアメリカのなんとかバーガーのやりとり」「私がきみだったらそんなことは言わないだろう」というところがクライマックスだな。それにしても民間企業が一国の運命を部分的にせよ左右してしまうのだから、やっぱり情報戦って現代社会では大切なんだな、と当たり前のような感想。

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    2022年01月27日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    読んでみてボスニア紛争が鮮明になった。
    凄惨な紛争のうらで、各陣営がそれぞれの思惑で奮闘していた。
    邪悪でも正義でもなく、ただ誤謬と、間抜けと、戦略がそこにあるだけだった。
    政治は難しい。見えているもの全てが正しいとは限らないし、邪悪な権謀術数が渦巻いているとも限らない。ただタイミングと思惑だけが噛み合う瞬間に後戻り出来ない物語が動いてしまうのだ。願わくば小国の正義が、この地球で広く認められる日が来ることを願わずにはいられない。

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    2021年07月09日
  • ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

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    ネタバレ

    ドキュメント 戦争広告代理店
    情報操作とボスエア紛争

    著者 高木 徹
    講談社
    2002年6月30日発行


    1990年代に起きたボスニア紛争。チトーなきあとのユーゴスラビアでは、スロベニア、クロアチア・・・と次々と独立をしていったが、3つめのボスニア・ヘルツェゴビナの独立の際、それに反対する新ユーゴスラビア連邦の実質主体国であるセルビアが非情なる軍事攻撃をしたとして国際的な非難を浴び、すっかり悪者になり、国連から追放され、後のコソボ紛争後には大統領が逮捕され、長期にわたって裁判にかけられる中、獄中死したという歴史がある。

    現在(本が書かれた2002年)、セルビアの首都ベオグラード(旧ユーゴ時代からの首都)は暗く活気がなく、戦争の跡がそのまま残る建物が並び、ガソリンスタンドには貴重な燃料を求める市民の車列をなし、暗い地下道には露天の商店が軒を並べる。一方、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ(オリンピック開催の地)は美しく、お洒落なカフェや世界のブランド品が並び、各国語が飛び交う。
    どうしてこういう結果になってしまったのか?紛争時にしたことは、どうやら双方、大差なかったようだ。しかし、我々日本人を含め、世界中の人々がセルビア悪、ボスニア被害者、と思いこんでしまった。
    その理由は一つ。実は、そこにアメリカの大手PR会社の存在があったからだった。

    これは陰謀説とかの話ではなく、全て公になっているドキュメント。いかにPR会社がうまくPR戦を制したか、その全貌(とまではいかないけど)が書かれている。我々マスコミや広告関係の人間はもとより、誰が読んでも驚きの事実が出てくるし、この本を読むまで自分もまんまと騙されていたのだということを、殆どの人が感じることだろう。
    最近、ネット上では、よく政府による情報操作だのなんだのって書かれている。例えば、安保法制の強行採決のマイナスを挽回するために国立競技場の見直しを直後に発表したことなど、その一つと言われる。しかし、日本ではアメリカのようなこうしたPR会社は存在しないと言ってもよく、電通のような大手広告代理店でも足下にも及ばない。ましてや、官僚や政党がやっている日本の情報戦力など、比較にならないと言える。それもよく分かる傑作本だ。

    ボスニア紛争が他の国の独立時と比べ大きくなった理由は簡単。他の国はそれぞれ固有の民族が殆どだから。独立します、と宣言すれば反対する人は国内に少数しかいない。ところが、ボスニア・ヘルツェゴビナの場合、最大民族が4割強を占めるにすぎないモスレム人、次が3割強の人口を占めるセルビア人、そして2割弱のクロアチア人。モスレム人が独立を可決したが、セルビア人はそれに反対する。当然、セルビア共和国も自分たちと同じ民族だからなんとしても独立を阻止したい。セルビア共和国はボスニア・ヘルツェゴビナ内のセルビア人と連携して軍事介入をする。

    アメリカの大手PR会社ルーダー・フィン社のワシントン支局、ジム・ハーフを中心とする3人のジムが、ボスニア・ヘルツェゴビナと契約してPR戦で勝負を挑む。俳優のような風貌で、英語が堪能、短い区切りで話すためテレビでの採用率が高いシライジッチ外相を“改造”し、さらにテレビ向けに話をさせるようにした。歴史学者であるが故にこれまでのいきさつを詳しく話そうとする外相に対し、その間にアメリカ人はチャンネルを変えてしまうと忠告し、今のことだけを話せなどと指導した。

    そして、勝利を決めたキーワードとなった「民族浄化」という言葉を、最初に選んだ。セルビア人が、村々でセルビア人以外を追い出している、という事実を取り上げ、「民族浄化」をしていると外相に言わせ、アメリカを中心とする西側に情報発信した。日本でも、これについては印象深い人が多いと思う。この本には書いていなかったが、セルビア人が現地女性をレイプして自分たちの血を入れているという話も聞いた覚えがある。

    また、追放した人々を収容する強制収容所があるという噂も利用した。実は、それは単なる捕虜収容所にすぎなかったが、アメリカのテレビ局を取材に向かわせ、鉄条網ごしにやせ細った男たちを撮影させた。それは強制収容所ではなく、撮影者側がある施設の外にいて、そこから侵入できないようにしている鉄条網だったことが後にわかる。しかし、強制収容所とは言っていないのででっちあげではない。その映像は世界に流れ、映像をTIME誌など各社が買った。

    しかし、ジム・ハーフがすごいのは、ナチスによるホロコーストを彷彿とするこの事態について、決して「ホロコースト」という表現を使わなかったことだ。社内文書にすら使わなかった。あの虐殺に比べてこの程度のことでホロコーストという言葉を使うのは冒涜だという意識がユダヤ人にあるため、逆に反発を招いてしまうだろうとの配慮からだった。その読みは見事に当たった。彼はユダヤ人の団体にも働きかけ、モスレム人を応援するようにアメリカ政府に言ってもらうことに成功したのである。それが、大統領まで動かした。
    ボスニア・ヘルツェゴビナの大統領などの手紙や演説もジム・ハーフが書いた。計算しつくされた内容だった。

    連邦側(セルビア)も負けていない。大統領は、連邦の首相に、なんと、セルビア出身で今はアメリカ人となっている人物を起用したのである。彼は製薬会社をアメリカで興して大成功し、メディアの使い方にも精通している。その首相が逆襲を謀る。しかし、アメリカのPR会社が契約してくれない。
    PR会社の助けがある国とない国。勝負はそこで決した。
    以後も素晴らしいタイミングでいろんなことを仕掛けていく。
    しかし、でっち上げはなにもない。誰かが何かを取材したり、言ったり、報告したりということに触覚を尖らせ、これと思った情報や出来事を利用する技術が素晴らしい。本当にプロ中のプロだった。

    PR戦に負けた新ユーゴは国連から追放された。その後、コソボ紛争では遂にNATOの介入を受け、大統領は逮捕、そして哀れな末路。本の最後には、そのコソボ紛争でも、ジム・ハーフはPR担当をしたことが書かれていた。

    アメリカのPR会社は、メディアを利用するだけではない。豊かな人脈を使い、あらゆる方面で戦略的に行動を行っていく。単なる「広告合戦」ではない。PR会社を雇えたか雇えなかったかの差により、人一人どころか、一国の運命まで違ってしまうわけである。
    本

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    2021年03月17日
  • 国際メディア情報戦

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    『戦争広告代理店』でも語られたボスニア戦争や、ビンラディン、オバマ大統領といったメディア情報戦の強者たちの戦い方を分析し、PRの重要性を説く。

    日本のメディア戦略も国内規模では色々やっているんだろうが、ヤラセがバレて炎上してしまうお粗末なものも多い。
    実際に「戦争」に繋がる国のPR戦略は、やはり緊張感とレベルが違う。

    抜粋
    自分のもとに届く情報が、そこまでにどのような「情報戦」をくぐりぬけてきたかを考える。
    その視点を持ち、情報の裏にある意識と、そこに存在したのが誰であるかを見抜く。

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    2020年09月04日
  • 国際メディア情報戦

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    「重要な情報こそ外部に発信し、それを武器とすることが国際社会で不可欠。情報戦とは、情報を少しでも多くの人の目と耳に届け、その心を揺り動かすこと。いわば出す情報戦。・・・いかに他の人に伝えるかが勝負」という前書きの筆者の説明が本書の内容を端的に表すもの。それを、ボスニア戦争、ビンラディン、オバマなど実例を使いつつ、具体的な展開を説明していく。日本への提言もあり。

    名著であることは疑いない。但し、前著の戦争広告代理店の内容をまとめたというボスニア戦争時の情報戦の内容が非常にインパクト強く良く纏まっている一方、それ以降の話題がやや長くインパクトがボスニアほどではなく、読書の高揚感が徐々に薄れていく感あり。

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    2020年08月13日
  • 国際メディア情報戦

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    今(2016年)からたった25年ほど前までは、「如何に情報を守るか」が主流だったように思います。当時は「情報を出す」行為は基本として「ディスインフォメーション工作」の一環として存在し、それをどうやって見破るかが主眼だったと記憶しています。

    現代においても「情報を守る」ことや「ディスインフォメーション工作」は当然存在しているのだと思いますが、それよりも、現代の情報化社会では「情報を出すことで、世論を形成する」ことが、より大きな影響を社会に与えることを本書は教えてくれます。

    本書は序盤で、今では一般にも有名になった「ボスニア戦争」におけるルーダー・フィン社によるPR戦略で戦争の勝敗をも左右させた例や、2012年のアメリカ合衆国大統領選挙(バラク・オバマ氏が勝利した選挙)を具体例として、「情報を出す情報戦」とは何かが記載されています。

    中盤からは、ビンラディン氏率いるアルカイダと(主に)アメリカ合衆国との非対称戦において、両者が繰り広げた情報戦に留まらず、ビンラディン氏殺害や、ビンラディン氏亡き後の非対称戦を具体例として、より深く現代の情報線について掘り下げています。

    我々一般市民もまた、情報戦の真っ只中にいること、否、むしろ情報戦の張本人であることを明確な形で気づかせてくれる貴重な一冊です。

    【本書抜粋 高橋徹】
    目の前の情報が、なぜいま、このような形であなたのもとに届いたのか、情報源からあなたまでの間にどのような意志と力が働いたのか、それを推察し見抜くことで、世界が全く違う姿となってたち現れてくる。

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    2016年10月10日