コーネル・ウールリッチのレビュー一覧
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ネタバレ泣けた。静かに泣けた。夜の切なさに包まれたかのようだ。やはりウールリッチはすごい。
『喪服のランデヴー』に代表される連作短編集のように物語を紡ぎだすウールリッチのスタイルは健在。今回は夫の冤罪を晴らすべく浮気相手の4人の男と妻アルバータの物語として描かれる。
1人目はミアに魂を抜かれた元夫で人生のどん底の貧民街で暮らす男の話。
次はミアを麻薬の運び屋に使っていた違法医師の話でスリラータッチのこの話がもっともぞくぞくした。
3人目の男は資産家の遊び人だがとても魅力的な男との話。
そして最後の男はナイトクラブを経営する裏稼業に足を突っ込んだ男の話。
最初の2人目まではおろおろしながらも勇気を振 -
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ネタバレいやはやアイリッシュ、もといウールリッチは設定がすごい。発表後60年近く経った今でもその設定は斬新だ。
ある街で愛し合う若い男女がいる。非常に初々しい二人の間にやがて悲劇が訪れる。ある飛行機から落とされたビンがたまたま彼女に当ったのだ。最愛の女を失った彼は廃人となり、やがて復讐の鬼と化し、同日同時間に同場所を通過した飛行機に乗り合わせた乗客全てに同じ苦痛を事件の起こった5/31に味わわせるのだった。
この設定を読んだだけでもう早く読みたいと思うのは当然ではないだろうか?
しかも唄う詩のような美文は健在で今回も陰惨な内容ながら幻想的な衣装を纏いながら物語は流れていく。
しかも成される復讐は5つ -
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翻訳を通しても、都会的で洗練された文体の強度を失わない稀有な作家の一人、ウールリッチ/アイリッシュ。1948年発表、ブラックシリーズの代表作でもある「喪服のランデヴー」では、その耽美なレトリックがすでに完成しており、序章と終章における溜め息が出るような情操の表現を味わうだけでも読む価値がある。上空を通過した飛行機の乗客が投げ捨てた瓶の直撃を受け、逢瀬の待ち合わせ場所にいた恋人を殺された男。その無残で凍てついた心象風景を綴っていくプロローグは、ウールリッチならではの世界観を形作っている。
本作は凄まじい怒りによって復讐の鬼と化し、狂気の淵へと墜ちた若者ジョニー・マーが、真犯人を特定できないままに -
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女は見送りの幼馴染にシカゴに行くと言い残しNYを旅だった。だがすぐに次の駅で列車を降りてしまう。適当に探した宿に落ち着くと、一枚の写真と名前が書かれた5枚の紙を燃やした。そしてしばらくして…ひとり、またひとりと男が不審な事故死で亡くなる。これらの事故に共通するのは黒い衣服を着た謎の女が絡んでいるらしいということだけだった…。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】アイリッシュの別名義、コーネル・ウールリッチのサスペンス的ミステリ。第1部ブリス、第2部ミッチェル…と女のターゲットになる男の名前が各部に冠してある。被害者の男たちの共通点は見いだせないまま、1部では女の神秘性、2部では女の観察力、演
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〝第二のフィッツジェラルド〟を目指していた文学青年ウールリッチがミステリ作家へと転身したのちの初長編で1940年発表作。全体の印象と物語の構造は、後の「喪服のランデヴー」(1948)と重なる部分が多い。そして、二作品ともウールリッチの代表作である「幻の女」(1942)に次ぐ名作として評価が高い。
両作とも復讐者がターゲットとするのは五人。だが、「…花嫁」の女が対象全員を有罪として〝特定〟しているのに比べ、「…ランデヴー」の青年は〝不特定〟のままで殺していく。つまり、罪を犯していない者がいても問答無用で死に値するとし、殺害の状況もより残忍な手法を用いる。この差は大きい。
退廃的な美文に彩られた -
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実にウールリッチらしい佳作。
結婚を間際に控えた花婿が一夜の情事から他の女と遊んでしまう。これが彼にとって破局の始まりだった。その後彼女は彼をゆすり続け、とうとう彼は逆上し、首を締めてしまう。そしてそれから見えない警察の魔の手を恐れるようになり、辺鄙な街へ移り住んでは新たに現れる彼を取巻く不信な人物達に彼を捕まえに来た警察の一派だという見えない恐怖の手に絡まれていく。
この恐怖は私にも判る。何も事なきを得て人生を重ねてきた者や犯罪めいたことが日常茶飯事として起きている者にとってはわからないかもしれない。
人は何がしか社会の中で匿名性を求める。それで安心を得ているのだが、一度普通人のレールを外