恐怖

恐怖

小説・文芸
770円 (税込)

3pt

3.0

彼の指が女の喉元にくいこみ、やがて女の体は動かなくなった……証券会社に勤めるマーシャルは最愛の女性と婚約し、今日が結婚式だった。しかし、たった一度おかした過ちから恐喝を受け、愛する女性と結ばれるため、結婚式の当日に恐喝者を殺してしまったのだ。殺人の事実を隠蔽し、式を済ませた彼は、ニューヨークを離れ追われる者の苦痛と焦燥の淵へと向かっていく─―ウールリッチ的叙情をサスペンスにあふれる佳品。

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    Posted by ブクログ

    実にウールリッチらしい佳作。
    結婚を間際に控えた花婿が一夜の情事から他の女と遊んでしまう。これが彼にとって破局の始まりだった。その後彼女は彼をゆすり続け、とうとう彼は逆上し、首を締めてしまう。そしてそれから見えない警察の魔の手を恐れるようになり、辺鄙な街へ移り住んでは新たに現れる彼を取巻く不信な人物達に彼を捕まえに来た警察の一派だという見えない恐怖の手に絡まれていく。

    この恐怖は私にも判る。何も事なきを得て人生を重ねてきた者や犯罪めいたことが日常茶飯事として起きている者にとってはわからないかもしれない。
    人は何がしか社会の中で匿名性を求める。それで安心を得ているのだが、一度普通人のレールを外れると実はもうかつてのようには戻れなくなる。その事は今後も心に澱のように溜まり、折に触れ想起されるのだ。
    安定を求めるが故、侠気に走る主人公マーシャル。エリート街道を進む人間の脆さがここに描かれている。

    最後のエピローグはウールリッチ特有の皮肉だ。
    しかし、この物語はウールリッチでなくても誰かが紡いだ話である。
    しかし題名は秀逸。
    そう、誰もが何がしかの“恐怖”を抱き、生きているのだ。それに打ち勝つ者もいれば打ちひしがれる者もいる。それが人生なのだ。

    0
    2021年03月20日

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