宮脇俊三のレビュー一覧
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ネタバレ数ある宮脇俊三の著作の中でも間違いなくベストの部類に入る作品に思う。と同時に、筆者の中では異色の部類に入る作品でもある。
昭和前期、戦前から戦後混乱期にかけての筆者の鉄道の思い出を当時の筆者の周りの出来事と絡めて描く。
昭和後期の主として国鉄を題材とした紀行作品で名を上げた宮脇の作品群の中では珍しい題材なのは確かだ。(一番異色なのは殺意の風景だとは思うが)
この本を読む上では、そもそも宮脇は相当にいい家の坊ちゃんであるということを意識する必要がある。国会議員を務めた宮脇長吉の唯一残った男子で、渋谷に住み当時の東大を卒業している。そんな青年が、何を見て、感じながら成長していったか?というところが面白い。貴重な当時の世相を写す史料でもある。
いわゆる戦中のルポルタージュは悲惨なものが多いが、本書ではあまりそうしたものは感じさせず、むしろどこか長閑に思う描写すら存在する。
しかし、その背後には確実に死が存在する。学徒動員の噂や、卒業旅行の如き出陣を意識した中での遠出、山手線内でのまだ自分の家が焼けていないことの罪悪感など、忍び寄る破滅の匂いは濃厚だ。そしてそうした中で、内地で日常を過ごしていた人々の姿を本書では描いている。
全体として大変に面白いが、やはり終戦時のシーンは印象的。名文句の多い宮脇だが、「時は止っていたが汽車は走っていた」というこの一連の箇所を超えるものは無いように思う。宮脇自身、この先を書く気が失せてしまい元々はここで終わって出版されたことからも、終戦という出来事が当時の人々にどれだけ大きな出来事であったかを窺わせる。
正直なところここで終わっていた方が文学的には美しいと思うが、そこで終わらずきっちりと戦前の鉄道文化の本当の終戦は戦後混乱期にあった、と戦後混乱期までを書き上げたのが増補版(又は完全版)である。
史料として考えれば無論そちらの方がありがたい。ページ目一杯で文章が終わるところにまで気を配り、中公鬼の編集として知られた宮脇の几帳面さを感じさせるところだ。 -
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第二次大戦後70年を越え、その当時を生きた人々の生の声を聞く機会がいよいよ失われてきていますが、書籍であれば(多少の脚色は覚悟しつつも)それらに触れることができます。
この本の著者は大正の生まれ、戦前・戦中を学生として関東、そして疎開地の新潟で過ごし、山形で終戦の報を迎え、戦後は編集者、そして紀行作家として活躍された宮脇俊三さんです。
戦争関連の本といえばその悲惨さを伝えるためのものが多いですが、宮脇さんはひたすら電車に乗ること(時刻表を読むこと)に熱中しており、作中の東京大空襲の様子など臨場感にあふれながらも淡々と、そして時にはユーモアを交えながら語られるさまに悲壮感といったものはあまりありません。一方で、食料が不足していた日常など、当時の様子をまざまざと読者に知らしめる筆致は、さすが元編集者だと感じました。
戦争に巻き込まれる市井の人々の様子について、気負わずに知ることのできる良い本だと思います。ただし、鉄道に興味がないと読むのはしんどいかもしれません。 -
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1982年~84年にかけて作者が、編集者と2人で鉄道旅をした記録。
旅といっても電車に乗るのが目的なので、毎回テーマを決めてかなり過酷な旅をする。
目的の列車に乗るために、その列車の始発駅までは新幹線や特急を使って行き、列車に乗り目的を達成した後はまた新幹線や特急で東京に帰ってくる。
日本の鉄道旅も捨てたものではない、と思わせてくれる。ただし40年前であるが。
北海道から九州までいろんな電車に乗るが、青森から大阪までの特急白鳥の旅が良かった。
青森に前泊して4時50分の始発に乗り、13時間かけて大阪まで乗り通す。乗客の特徴や人数、駅での待ち合わせ時間、景色などの描写があり、一緒に乗っている気になる。2人旅なので、会話もあるが退屈して昼寝したり、食堂車へ行って飲んだりそれでもまだ大阪に着かない。日も暮れて乗客がほとんどいなくなった18:25、大阪に到着した。そして目的を達成したので、その日の最終新幹線に乗って東京に帰っていくところがまたすごい。 -
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中学時代に夢中になって何回も読み直した本。
(宮脇俊三先生の作品としては第3作ですが、私にとっては人生を決定づけた2冊目でした)
いい年した大人になって、痛風発作で歩けないどころか起き上がることさえできない今、あらためて(iPadのGoogleMapsとWikipediaで1つ1つ参照しながら)じっくりと読み直してみたら、新しい発見が次々と。
あんなに夢中になって何回も読み直したのに、中学時代の自分の読書の浅さを思い知らされました。
例えば、1つ1つの地名や、列車の始発駅と行き先をGoogleMapsで確かめていくと、わかっていたつもりの部分もさらに深くなる。
多感な中学高校時代にiPadやGoogleMapsやWikipediaがある、今の若い人達がうらやましいです。
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読書の効能として、通算700冊から800冊を超えたあたりから、うさんくさい儲け話とか非科学的なダイエット商法とか、そういうインチキ人間に会った時にピンときて、だまされないようになる、って言うじゃないですか。
どういう本から読んだらいいかわからないなら、今までの読書量が圧倒的に足りてないということだから、何でもいいから手当たり次第に読め、片っ端から読んで読んで読みまくれ、とも。
でも、多感な思春期に夢中になって読んだ本を、あらためて1つ1つじっくりと読み直してみるのも、いいもんだな、と思いました。
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これを機会に、第1作の「時刻表2万キロ」と第2作の「最長片道切符の旅」も読み直してみます。
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Posted by ブクログ
宮脇作品と言えば、名著と言われる最初の2作品に加え、僕が好きなのは海外紀行が多い。ほぼ全部読んだつもりでいたけど、これは未読だった。今さらながらだが氏らしい視点が良く表れている作品だと思う。それぞれの場所で氏が感じたように想いを持って仕事をしていた人たちがいたからこそ、ここで取り上げられた各線が、後に第三セクターとして開通できたのだろうけれど。これは1980年代半ば頃の話だけど、それから30ウン年経って、こう言う視線は行政には全く無くなってしまった気もするな…。かつての方がまだそれでも地に足が付いていたのか、と再確認。実は僕は全集の方で読んでるので正確にはこの全線開通版は未読なのだが、加筆部分はボリュームも少ないようでどうも評価が低い。そこの減点は無し、ってことで。