宮脇俊三のレビュー一覧
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ネタバレ数ある宮脇俊三の著作の中でも間違いなくベストの部類に入る作品に思う。と同時に、筆者の中では異色の部類に入る作品でもある。
昭和前期、戦前から戦後混乱期にかけての筆者の鉄道の思い出を当時の筆者の周りの出来事と絡めて描く。
昭和後期の主として国鉄を題材とした紀行作品で名を上げた宮脇の作品群の中では珍しい題材なのは確かだ。(一番異色なのは殺意の風景だとは思うが)
この本を読む上では、そもそも宮脇は相当にいい家の坊ちゃんであるということを意識する必要がある。国会議員を務めた宮脇長吉の唯一残った男子で、渋谷に住み当時の東大を卒業している。そんな青年が、何を見て、感じながら成長していったか?というとこ -
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第二次大戦後70年を越え、その当時を生きた人々の生の声を聞く機会がいよいよ失われてきていますが、書籍であれば(多少の脚色は覚悟しつつも)それらに触れることができます。
この本の著者は大正の生まれ、戦前・戦中を学生として関東、そして疎開地の新潟で過ごし、山形で終戦の報を迎え、戦後は編集者、そして紀行作家として活躍された宮脇俊三さんです。
戦争関連の本といえばその悲惨さを伝えるためのものが多いですが、宮脇さんはひたすら電車に乗ること(時刻表を読むこと)に熱中しており、作中の東京大空襲の様子など臨場感にあふれながらも淡々と、そして時にはユーモアを交えながら語られるさまに悲壮感といったものはあまりあり -
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1982年~84年にかけて作者が、編集者と2人で鉄道旅をした記録。
旅といっても電車に乗るのが目的なので、毎回テーマを決めてかなり過酷な旅をする。
目的の列車に乗るために、その列車の始発駅までは新幹線や特急を使って行き、列車に乗り目的を達成した後はまた新幹線や特急で東京に帰ってくる。
日本の鉄道旅も捨てたものではない、と思わせてくれる。ただし40年前であるが。
北海道から九州までいろんな電車に乗るが、青森から大阪までの特急白鳥の旅が良かった。
青森に前泊して4時50分の始発に乗り、13時間かけて大阪まで乗り通す。乗客の特徴や人数、駅での待ち合わせ時間、景色などの描写があり、一緒に乗っている気に -
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中学時代に夢中になって何回も読み直した本。
(宮脇俊三先生の作品としては第3作ですが、私にとっては人生を決定づけた2冊目でした)
いい年した大人になって、痛風発作で歩けないどころか起き上がることさえできない今、あらためて(iPadのGoogleMapsとWikipediaで1つ1つ参照しながら)じっくりと読み直してみたら、新しい発見が次々と。
あんなに夢中になって何回も読み直したのに、中学時代の自分の読書の浅さを思い知らされました。
例えば、1つ1つの地名や、列車の始発駅と行き先をGoogleMapsで確かめていくと、わかっていたつもりの部分もさらに深くなる。
多感な中学高校時代にiPadやG -
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宮脇作品と言えば、名著と言われる最初の2作品に加え、僕が好きなのは海外紀行が多い。ほぼ全部読んだつもりでいたけど、これは未読だった。今さらながらだが氏らしい視点が良く表れている作品だと思う。それぞれの場所で氏が感じたように想いを持って仕事をしていた人たちがいたからこそ、ここで取り上げられた各線が、後に第三セクターとして開通できたのだろうけれど。これは1980年代半ば頃の話だけど、それから30ウン年経って、こう言う視線は行政には全く無くなってしまった気もするな…。かつての方がまだそれでも地に足が付いていたのか、と再確認。実は僕は全集の方で読んでるので正確にはこの全線開通版は未読なのだが、加筆部分