宮脇俊三のレビュー一覧
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河出書房新社『旅が好きだ! : 21人が見つけた新たな世界への扉 (14歳の世渡り術)』の中で紹介されていて知った。昭和五十年頃に、国鉄全線完乗を目指しそして達成した宮脇俊三さんのエッセイ。そんなガチの鉄オタ本についていけるだろうかと少々不安だったが、とても読みやすい文章だった。それもそのはず、私は知らずに読んだが、著者は、中央公論にこの人ありといわれた名編集者であった。
大真面目で落ち着いているのにユーモアがあり、どう見てもマニアックだが常識人でもあり、緻密で完璧かと思いきや呑み助でミスもする。何泊かかけて遠くへも行くし、近場の一幕もある。第一章の伏線が第十一章で回収されたときは感動した -
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私も子供の頃は時刻表を「読んで」、空想の旅を組み立てては楽しんでいたことがあった。何人か話の合う友達もいたと思うが、大人になってそのような旅を実現できるようなお金を持ったとしても、子供の頃のような純粋な情熱を持ち続けられた人はほとんどいないだろう。国鉄全線に乗るためだけにこれだけの労力をかけるのは馬鹿馬鹿しいと思いながらも、心の奥底で子供の時の気持ちを思い出して本書を楽しむ人も少しはいるに違いない。私もその一人である。
乗り残しのローカル線の記述が多い。「こんな線あったんだ」と思い、Googleマップを開けると、もうその線はない。ネットで廃線跡や廃駅跡の情報を読み、ストリートビューで確認する -
ネタバレ 購入済み
宮脇氏の文章は良いですね
紀行全集等も持っていますので、この本に収録されているローカル私鉄訪問記も読んでいますが、やはり文章が巧みなのでついつい読み返してしまいますね。
今はなき野上電鉄や寝台急行銀河などに関する記載も良いですね。宮脇氏の紀行文によく出てくる夕張市は財政破綻してしまいましたし、紀州鉄道、日高川までではなくなってしまっていますので……乗車時の貴重な記録でもありますね。
私も津軽鉄道のストーブ列車は1度、乗りましたよ。今でも季節のニュースとかに時折出てきますね。 -
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発売と同時に読んだが再読、やはり面白かった。
824列車 私も乗車したが長いとは思わなかった。
飯田線:著者が中島みゆきの曲を無理やり聴かされる場面が面白い、赤石山脈はじめ山、川、河岸段丘の描写は見事。
白鳥:見事な描写、山中温泉のパンフレットが笑える。
中央構造線の旅 こんな面白い発想で旅が出来るのか。人吉から吉松間は鉄道の好きでない人にとっても楽しめる区間ではないだろうか。ループ線、大畑(オコバ)、霧島連峰の全容が望まれる。この矢岳峠の景観、篠ノ井線の姨捨からの長野盆地俯瞰が車窓の白眉。路線復活の際には乗りに行きたい。最後の東京への帰路は特急はやぶさ。西鹿児島駅発が正午過ぎの12時20分 -
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新書判という事もあってか、中々見つけられなかった1冊。
僕にとっては、久々の宮脇さんの「新刊」でした。このどこまでもクールで、だけどもユーモアに溢れている文章、やっぱり大好きです。
内容自体は時刻表の魅力を探る読本で、旅行記を主体とする氏の作品群の中ではちょっと異色でしょうか。初版の刊行からすでに四半世紀が経っているので、今はスジの作り方一つとっても、随分変わっているのかもしれません。何よりも、日本の鉄道を取り巻く事情もガラリと変わっているわけですし。
ともあれ、いまや歴史モノとしても読み応えのある作品です。p.147の時刻表、一ノ関駅がありえない事になっています。こんなダイヤが、昔は当た -
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「古代史紀行」「平安鎌倉史紀行」と続く、鉄道紀行作家・宮脇俊三の歴史紀行3冊目。本シリーズの最終巻であると共に、氏のほぼ最後の作品となっています。
史跡を年代順に愚直に辿っていくその真摯な姿勢は、最後までゆるぎなく一貫しており、歴史読本としても旅行記としても充分に読みがいがあります。ただ、「古代史紀行」辺りと比べてしまうと、やはり筆力の衰えを感じないわけにはいきません。
現地に行ってみてこその独特の観察眼や、名も残せぬ民衆達へ寄せる思い。そういった氏の「味」が徐々に消え失せ、史跡の説明版の丸写しやタクシー(果ては読者の自家用車まで)の多用といった安直さが目に付くようになります。
そして関 -
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宮脇俊三氏の、初期の随筆集。
…というより、あの「山陰ストリップ特急」の所収作と言った方が通りは良いでしょうか(笑)。
タイトルのインパクトや2000年の「旅」誌宮脇特集で宮嶋茂樹が面白おかしく(しかし敬意を持って)取りあげたことで、妙に有名になった感のある「ストリップ」ですが、改めて読んでみると、宮脇氏の文章の魅力がことごとく詰め込まれた名作であることに気づかされます。
鉄道の運賃制度に関する疑問を端緒として、どこか文明論めいた(しかし高慢さとは無縁な)視点が提示されたかと思うと、鉄道旅行の孤独さへと話題は転じ、場末のストリップ劇場へと物語は迷い込む。ここで放たれる「これも客が特急を望 -
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宮脇俊三氏の、生い立ちから作家デビュー後までの半生記。インタビューの体裁を取ってはいますが、語り口はいつもの宮脇さんの文体そのままであり、本人の手がかなり入っているものと推測されます。
「時刻表昭和史」を筆頭に他の著作やコラム等とかぶる記述が多く、新鮮味の薄い部分もありますが、他作でほとんど語られない中央公論時代の逸話は貴重です。
それにしてもタイトルの如く、御大の人生あちこち寄り道ばかりです。にもかかわらず編集者としても作家としても大成したのは、ご本人の類稀なる能力のなせる業か、はたまた強運なのか。
作家・宮脇俊三の成り立ちを垣間見る事ができる、ファン必携の1冊。まあ、ファン以外