宮脇俊三のレビュー一覧
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宮脇俊三氏の、初期の随筆集。
…というより、あの「山陰ストリップ特急」の所収作と言った方が通りは良いでしょうか(笑)。
タイトルのインパクトや2000年の「旅」誌宮脇特集で宮嶋茂樹が面白おかしく(しかし敬意を持って)取りあげたことで、妙に有名になった感のある「ストリップ」ですが、改めて読んでみると、宮脇氏の文章の魅力がことごとく詰め込まれた名作であることに気づかされます。
鉄道の運賃制度に関する疑問を端緒として、どこか文明論めいた(しかし高慢さとは無縁な)視点が提示されたかと思うと、鉄道旅行の孤独さへと話題は転じ、場末のストリップ劇場へと物語は迷い込む。ここで放たれる「これも客が特急を望むからだろうか」というキッツイ皮肉が、冒頭の文明論としっかりつながって、実に見事。比較的文量のあるエッセイですが、なかなか劇場に辿り着かないあたりも、「道行」を重んじる氏の姿勢を体現しています。
色気も何も無い、淡白な文章。でも妙に方向がずれた艶かしさは伝わってきて、そこが何とも可笑しい。やはり「ストリップ」、有名になるべくしてなった作品のようです。 -
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宮脇俊三氏の、生い立ちから作家デビュー後までの半生記。インタビューの体裁を取ってはいますが、語り口はいつもの宮脇さんの文体そのままであり、本人の手がかなり入っているものと推測されます。
「時刻表昭和史」を筆頭に他の著作やコラム等とかぶる記述が多く、新鮮味の薄い部分もありますが、他作でほとんど語られない中央公論時代の逸話は貴重です。
それにしてもタイトルの如く、御大の人生あちこち寄り道ばかりです。にもかかわらず編集者としても作家としても大成したのは、ご本人の類稀なる能力のなせる業か、はたまた強運なのか。
作家・宮脇俊三の成り立ちを垣間見る事ができる、ファン必携の1冊。まあ、ファン以外は買わない作品だとは思いますが…(笑) -
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古本カフェで見つけ、購入。
当時、私も周遊券(更に学割で!)で九州や山陰地方をふらふらしていたので、その頃を思い出しながら、懐かしく拝読しました。
1日に数本しか列車のないローカル線に乗るために、時刻表や地図、電話などを頼りにプランを立てていく過程は、大変そうだけど、とても楽しそう。
だけど実際には思わぬ事態で、それがうまくいかなかったりするのが、また楽しい(当人は大変だったでしょうが。でも、そのスリルを楽しんでおられるようなトコもあるかな)。
もっとも印象的だったのは、筆者ひとりきりが乗った最終列車。
車掌さんが停車ごとに無人駅の灯りを消していくくだり。
効率や採算性が優先される現代では、こうしたローカル線は「無駄なもの」として存在も許されないんだろうな…だけど世の中には、こうした「無駄なもの」がどこかにないと、息が詰まるよなぁ…
そんなことを考えながら、読ませていただきました。 -
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もと中央公論誌の編集長という平日の顔を持ちながら、国鉄時代の2万キロを乗り切った宮脇俊三先生。鉄道好きの人種からすれば、教祖さまのような存在と言えるのでしょう。
完璧に時刻表を読みこなし(あるいは全部頭に入っていそうな)、乗り換えや乗り継ぎで失敗するようなことは断じてなく、乗ることを使命としているような、そんな鉄人を想像していたことは事実です。
金曜日ともなると、駅にまっしぐら。未乗の区間をつぶすべく寝台列車の乗客となり、まだ乗っていない区間を乗りきるためだけに現地へ向かう。
道中、たまには意外と普通な失敗をやらかしたり、地元の名物の誘惑にあらがえずに途中下車してしまい、ほんの少しだけ未乗区間を乗り残すというお茶目さも持ち合わせているおじさん。それがかの有名な宮脇先生の素顔だったのです。
なんかイメージ変わるな~。
中に出てくる路線の多くは、国鉄からJRへの分割民営化とともに廃線になってしまったものも多く、真似して乗りたい、と思っても、今はもうそれができないのが残念でなりません。宮脇先生の文章にも、「車内に乗客が自分以外に誰ひとりいない」とか、「雑草の茂る寂しい無人駅」などといった記述が散見され、いずれ廃線の運命をたどりそうなことは、乗りながらも先生は感じ取っていたようです。なくなる前に乗っておかなければ。それが2万キロ踏破の無言の原動力になっていたようにも感じます。
それにしても、宮脇先生はローカル線の中で実にいきいきしています。乗り継ぎトリックを考えついて「これだ。ふふっ」とひとりほくそえみながら列車に揺られている様子や、駅で切符を買うのにあれこれ空席を調べてもらい、しまいには「お客さん・・・いったいどこへ行きたいの」と駅員さんにあきれられたり、と、なんだか楽しそう。
度重なる遠征で、さすがに旅費がかさみ、ふところが寂しくなってきて、お酒をちょっとがまんしたりするところもほほえましいのです。
最後に残っていた路線を乗り切り、悲願だった完乗を達成したというのに、満足感よりも心にぽっかりと穴があき、「乗るべき線がないから、もう書くことがない」としょげるさまも、「よしよし」と声をかけてあげたくなりました。
しかし意外な形で物語は再開します。明治30年より悲願80年といわれた気仙沼線がめでたく開通したのです。新しい線ができたら、宮脇先生は乗らなければならない。1日たりとも100%を下回りたくないと、早速、開通の日に乗りに出かけます。きっと息を吹き返したように足取りは軽かったことでしょう・・・
沿線の住民による花笠踊りや小旗、風船、祝福の様子。開通の日の地元の人の喜ぶさまを読んで、ぎゅっと胸をつかまれました。ここの路線は今回の津波で多くを流されてしまったのです。開通の日の乗客となった宮脇先生も、もちろん住民の方も想像すらしなかったことでしょう。特に、なぜか志津川駅での祝福の様子が細かに書かれていることに、せつない気持ちになりました。
日本じゅうで、今はなくなってしまった寝台列車や特急・急行列車の数々や、車掌さんとのほのぼのしたやりとりを読んでいると、時代は変わってもやっぱり、「線路は続くよどこまでも」なんだなぁ・・・・と、あらためて、鉄道の旅を大切に楽しみたいなあと思うのでした。 -
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当時の国鉄の全線制覇ゴールまでのラスト3年間ほど軌跡の著者自身の手記。昭和50年から3年ほどの約35年前の記録なので、とにかく昔の国鉄の雰囲気が伝わって興味深い。この時代 1区間50円で切符買えたとか、この頃はまだ路線が延伸していたので、一度乗った路線でもまた新たな区間を走破しないと全線制覇できないとか、大変そうです。
この10年後くらいに国鉄はJRへと民営化しますが、既に採算度外視の経営を強いられていた事がわかるエピソードも散りばめられていた。北海道の大自然をのんびり鉄道で旅するのはどんどん難しくなっているので、自分の定年後の趣味にはできないだろうなぁ。
ただ、すご~く地味な内容なので、時刻表マニアや鉄道旅行好き、何年か前にNHKで関口さんがJR全線走破制企画をやってましたが、あーいうのが好きな方にはお薦めです。 -
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宮脇俊三による、いわゆるためにする鉄道紀行の一作である。しかし、今尾恵介氏が解説で記しているように、藍君という非鉄道マニアで一風変わった編集者を同行者とすることで、自ら「ただ乗るために鉄道に乗る」という阿呆なことの魅力を面白おかしく表現することに成功している。
下記は、章立てである。
・ にっぽん最長鈍行列車の旅
・ 東京―大阪・国鉄のない旅
・ 飯田線・天竜下りは各駅停車
・ 東京―札幌・孤独な二人旅
・ 乗りつぎ乗りかえ流氷の海
・ 紀伊半島一周ぜいたく寝台車
・ 青森―大阪・特急「白鳥」七変化
・ 雪を見るなら飯山・只見線
・ 九州行・一直線は乗物づくし
・ 旅の終りは個室寝台車 -
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自分は数字に弱いので推理小説のトリックなどに電車の時刻に関するモノを使われると説明されても結局分からなかったりする人間なのです。そんなわけで時刻表を毎回お求めになる方ってのはどういうトコが面白いんだろう?と思ってたのですが。そうか、こういう楽しみ方もあるんだ〜と思いました。特にスジを実際引いてみる話が面白かった。2分間隔なのか… 列車ダイヤ物語もそのうち探して読みたいです。まあ自分には絶対出来ない芸当ですが…
今は多分最新機器の導入で色々変わったこともあるんだろうなあ、とは思います。けれども変わらないことも多いんだろうなあ、なんて思いながら読みました。
面白かったです。 -
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今回は、南北朝時代から安土桃山時代までを年代順に歴史紀行。南北朝時代ぐらいは、作者の健康状態も良好なこともあり、また、自分自身も興味のある時代なので、割とサクサクと読み進んでいくのだが、戦国時代になるとどうも時代が陰惨なところも多いのであまり読み進まない。特に、日本史の中で興味がわかない時代なので、ここらあたりを読むのが一番閉口した。だいたい、ずっと近畿圏で生活しているので、関東や東北といった地域のこと、特に地理がさっぱりわからない。できれば本に掲載されている地図がもう少し大きければ、歴史紀行の世界に感情移入できたのかもしれない。(そんなことを言っても詮の無いことではあるが。)
目次を改めて見直してみた、「後醍醐天皇の帰還と挫折」から始まって「南北朝時代の終わり」までが南北朝時代、次の「金閣寺、鎌倉公方と上杉禅秀の乱」から「銀閣寺、桂川」までが、室町時代となる。ここらあたりは、読んでいても地理がわかるので非常に楽しくって、読みやすい。特に京都や奈良の史跡は、そういえばあったなあと思うところも多く、見知った場所が出てくると、作品の中に入り込みやすい。
一方、「北条早雲」以降が戦国時代となり、「清州と桶狭間」からは、安土桃山時代で「関ヶ原の戦い」で終わる。
このあたりの時代は、地理も疎いところもあるが、読んでいて、作者の体調が悪いことがわかる内容になっていて、筆力も徐々に落ちてきている感じがして、読み進めるのも一苦労。
本当は、この歴史紀行も、江戸時代以降も続く予定だったようだが、結局のところ、作者の体調不良により、「関ヶ原の戦い」で終わってしまった。ちなみにこの本が出版をされたのが、2000年で、それに先立つ1999年に休筆宣言がなされている。
最後に、この本で印象的だったのが、豊臣秀吉が嫌いと言い続けていること。僕も大阪の人間の割に豊臣秀吉が嫌いである。天下一統を成し遂げた後の所業があまりにも陰惨すぎてついていけない。著者も同様なようで、意見が一致したことがうれしかったりする。