市野川容孝のレビュー一覧
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本書は、私たちがよく知っている価値中立的な「社会 society」とは異なる、理念を伴った「社会的なもの the social」の概念がどのような意味を担ってきたか、そしてそれがどのように忘却されてきたかの系譜を掘り起こし、批判的検討を加えた上で現代に再生させることを目的とした著作となっています。
まず、第Ⅰ部では、「社会的なもの」が忘却されてきた系譜が掘り起こされ、それを実現するための「社会民主主義」の在り方はどのようなものであるべきかが問い直されていきます。
特に後者の論点に関しては、20c初頭のドイツで活動していたV・ベンヤミンとR・ルクセンブルクが参照され、詳細に論じられます。著者は -
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資本主義は、往々にして「私有」の拡大と見なされるが、マルクスによれば、事態は全く逆である。そうではなく、資本主義こそが「私有」をますます不可能にし生産様式をより「社会化」していくのである。しかし、それ以上に重要なのは、「私有」と「個人的所有」の区別である。マルクスもまた、ルソーが(自然状態から脱して)「平等」という理念を立ち上げるために承認した「私的所有」を否定しているわけではない。そうでなく、これを、各人が孤立した状態で手にする「私有」と、社会的な(個人では完結しない)生産過程並びに生産された富の再分配を土台とした「個人的所有」に切り分けた上で、前者を否定し、後者を肯定しているのであり、ルソ
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[ 内容 ]
今日の社会科学にとって重要な問いは、「社会とは何か」「それはいかにして可能か」という抽象的な問いではない。
ある歴史性をもって誕生し、この問い自身が不可視にしてしまう「社会的」という概念を問題化することである。
本書では、この概念の形成過程を辿り直し、福祉国家の現在を照射することから、「社会的なもの」の再編を試みる。
[ 目次 ]
1 社会的なものの現在(日本の戦後政治と社会的なもの;冷戦以後と社会的なもの;社会学と社会的なもの;社会民主主義)
2 社会的なものの系譜とその批判(ルソー;社会科学の誕生;批判と展望)
3 基本文献案内
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「社会的」ということばが、西洋および日本においてどのように生まれ、理解されてきたのかという経緯をたどりつつ、その現代的な位相が示している問題について考察している本です。
ドイツやフランスの憲法には、「社会的な国家」のようなことばが登場しますが、それに相当する日本語は「福祉国家」です。このばあいの「社会的」という概念には、規範的な要素が含まれていますが、われわれにはそうした「社会的」ということばの意味を思い浮かべることはむずかしくなっています。そのようなわれわれの忘却には社会的な理由があると著者はいい、その内実を明らかにするために「社会的なるもの」の意味の変遷をたどっていきます。
ルソー、ニ