武田泰淳のレビュー一覧
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★生きて行くことは案外むずかしくないのかも知れない
★ 我々は人間の美しさ強さもだが醜さや弱さもありがたがっていい
そういえば内田吐夢との白熱した対話も収録された『タデ食う虫と作家の眼 武田泰淳の映画バラエティ・ブック』(清流出版2009年)で彼が映画をいかに貪欲に見ていたかを知って喜んだものでした。
本書はあの『司馬遷』『ひかりごけ』『森と湖のまつり』『富士』『快楽』など重厚な作風の武田泰淳が1963年に上梓した奇妙な味わいの小説集『ニセ札つかいの手記』で、元本には表題作の他「ピラミッド付近の行方不明者」「白昼の通り魔」の三編が収められていましたが、本文庫には表題作の他に「めがね -
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ネタバレ「戦時下」の「富士山麓」の「精神病院」を舞台に設定し、描かれた小説。武田泰淳の代表作と評される小説で、「狂気とは何か」「性欲とは何か」「この世に生まれ死んでいくということはどういうことなのか」等、人間の根源に迫る問いを発する小説となっている。テーマは難解も、「登場人物間の対話」が魅力的で、かつ事件も複数発生し、多くの人が死んでいく。さながら、ドストエフスキーの世界にも似た世界も、東洋風曼陀羅の世界。武田泰淳の富士山荘の実体験も反映されており、武田百合子氏の富士日記に書かれている犬の死も百合子氏とともに出てくる。主人公の名前の大島も、もともとは武田泰淳のもとの姓。武田ファミリーの世界を知っている
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武田泰淳も、私がかつて「はまり」、読みあさったお気に入りの小説家である。これは、彼の異色の短編を集めた本だ。
武田泰淳は「戦後派」の「代表」の一人と見なされているが、私の感覚では彼は特異なアウトサイダーで、「文学史」からはこぼれおちるに違いない「変な作家」である。『富士』を読んでも『快楽』を読んでも、彼の書く小説にはあまりリアリティが無いし、逸脱も多く、何よりも「未完の作品」が多いことから、彼が「きっちりと書く構成家」ではないことを証している。
奔放に物語をつづりながらも、独特の「重さ」を失わないのは、ちょっとした描写に「人間」についての確かな観察眼が感じられ、これは一級の文学者である証 -
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「めがね」
肺病病みで近眼の女が眼鏡をかけようとしないのはなぜだろう
メロドラマである
「『ゴジラ』の来る夜」
冷戦時代に誰もが抱えていた「ある恐怖」を象徴するのがゴジラだ
それは、誰もが平等に受けるべき恩寵でもあった
「空間の犯罪」
昭和24年に発表されたアプレ犯罪小説
足が不自由で徴兵を免れ、戦争を生き延びた青年が
やくざ者にバカにされたことから少しずつ道を踏み外してゆく
「女の部屋」
朝鮮人の経営するカフェで働きはじめる女
朝鮮戦争の開幕から、北派と南派にわかれて険悪になっていく人々に
ついていけない感じ
「白昼の通り魔」
田舎の山出しのファム・ファタール
2度の心中につきあって