武田泰淳のレビュー一覧

  • 新・東海道五十三次

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    東名高速完成前の東海道を夫婦二人クルマで旅する珍道中。一応小説とのことであり脚色もあろうが、正に「富士日記」の二人のやりとりが楽しめる。

    実際に何回かに分けて東海道を旅しつつ執筆したという毎日新聞の連載小説。本文には登場しないが実は編集者も後部座席で同行していたという。創作を交えつつも楽しい紀行文となっている。

    あの「富士日記」マニアには共通するエピソードも多く、文体も似ており、きっと楽しめることだろう。

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    2023年11月30日
  • 司馬遷

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    これはやはり名著と呼ぶにふさわしい。文学者としての著者が、歴史を書き尽くした司馬遷の世界を十分に咀嚼して著述している。文章を書くものに共通する姿勢を感じたのだろうと思う。

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    2023年07月11日
  • 貴族の階段

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    二・二六事件と忠臣蔵。西の丸公爵令嬢・氷見子は、父と訪問客の会話をひそかに別室で筆記する。氷見子はまだ十代の少女であるが、政局の動きや政治家、軍部の人間関係まで把握できている恐るべき女学生。兄・義人は純粋この上ない性格の美男子で、若き陸軍軍人である。氷見子の同級生・猛田節子は陸軍大臣の令嬢でこれも滅多にいない美女。節子と義人は相思相愛だが、わけあって結ばれることができない。義人には命がけの任務が、節子には死守すべき秘密がある。 もうこれだけでわかっちゃう、シンプルなお話。タイトルも象徴的だ。解説が奥泉光氏。『雪の階』もよかったなぁ~

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    2022年11月22日
  • ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集

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    ★生きて行くことは案外むずかしくないのかも知れない

    ★ 我々は人間の美しさ強さもだが醜さや弱さもありがたがっていい



    そういえば内田吐夢との白熱した対話も収録された『タデ食う虫と作家の眼 武田泰淳の映画バラエティ・ブック』(清流出版2009年)で彼が映画をいかに貪欲に見ていたかを知って喜んだものでした。

    本書はあの『司馬遷』『ひかりごけ』『森と湖のまつり』『富士』『快楽』など重厚な作風の武田泰淳が1963年に上梓した奇妙な味わいの小説集『ニセ札つかいの手記』で、元本には表題作の他「ピラミッド付近の行方不明者」「白昼の通り魔」の三編が収められていましたが、本文庫には表題作の他に「めがね

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    2012年12月26日
  • 目まいのする散歩

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    鷹揚とした風貌が武田泰淳という名前に合致していて、それだけで「大人」であるなと仰ぎ見ていた作家である。単行本で出版されたころに買い求めて一度読んだ。あっという間に彼より長く生きてしまい、文庫本になったこの本を再度読んでみた。今回も天女のような妻百合子さん、娘花子さんのエピソードが印象に残った。この本をきっかけに百合子さんの富士日記を読んでみたことも思い出される。巻末の「地球上には、安全を保障された散歩など、どこにもない。ただ、安全そうな場所へ、安全らしき場所からふらふらと足を運ぶにすぎない。」との一節にその通りと膝を打つ思いがする。

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    2023年09月10日
  • 富士

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    ネタバレ

    「戦時下」の「富士山麓」の「精神病院」を舞台に設定し、描かれた小説。武田泰淳の代表作と評される小説で、「狂気とは何か」「性欲とは何か」「この世に生まれ死んでいくということはどういうことなのか」等、人間の根源に迫る問いを発する小説となっている。テーマは難解も、「登場人物間の対話」が魅力的で、かつ事件も複数発生し、多くの人が死んでいく。さながら、ドストエフスキーの世界にも似た世界も、東洋風曼陀羅の世界。武田泰淳の富士山荘の実体験も反映されており、武田百合子氏の富士日記に書かれている犬の死も百合子氏とともに出てくる。主人公の名前の大島も、もともとは武田泰淳のもとの姓。武田ファミリーの世界を知っている

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    2020年07月14日
  • 新・東海道五十三次

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    武田泰淳 武田百合子 「新東海道五十三次」 夫婦の東海道ドライブ旅行記。夫婦の幸せな日常を細かく描写した私小説風。

    旅した土地を取材するというより、その土地で著者が目付けしたもの、それに対する奥さんの反応〜夫婦の日常の滑稽な会話を記録している感じ。

    子供が大きくなってからの 夫婦の幸せとは こういうことなのかもしれない。再読したい

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    2019年08月02日
  • ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集

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     武田泰淳も、私がかつて「はまり」、読みあさったお気に入りの小説家である。これは、彼の異色の短編を集めた本だ。
     武田泰淳は「戦後派」の「代表」の一人と見なされているが、私の感覚では彼は特異なアウトサイダーで、「文学史」からはこぼれおちるに違いない「変な作家」である。『富士』を読んでも『快楽』を読んでも、彼の書く小説にはあまりリアリティが無いし、逸脱も多く、何よりも「未完の作品」が多いことから、彼が「きっちりと書く構成家」ではないことを証している。
     奔放に物語をつづりながらも、独特の「重さ」を失わないのは、ちょっとした描写に「人間」についての確かな観察眼が感じられ、これは一級の文学者である証

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    2013年03月03日
  • 淫女と豪傑 - 武田泰淳中国小説集

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    武田泰淳という作家の名前は知っていたが、初めて読む。伝奇小説とも言うべき短編集である。とにかく面白い。中国の昔の話が多のいのかと思いきや、戦争中の話も多い。思ったほど豪傑や淫女は出てこなかったが、何となく怪しげなお話ばかりで、わくわくした。

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    2013年02月10日
  • ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集

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    「めがね」
    肺病病みで近眼の女が眼鏡をかけようとしないのはなぜだろう
    メロドラマである

    「『ゴジラ』の来る夜」
    冷戦時代に誰もが抱えていた「ある恐怖」を象徴するのがゴジラだ
    それは、誰もが平等に受けるべき恩寵でもあった

    「空間の犯罪」
    昭和24年に発表されたアプレ犯罪小説
    足が不自由で徴兵を免れ、戦争を生き延びた青年が
    やくざ者にバカにされたことから少しずつ道を踏み外してゆく

    「女の部屋」
    朝鮮人の経営するカフェで働きはじめる女
    朝鮮戦争の開幕から、北派と南派にわかれて険悪になっていく人々に
    ついていけない感じ

    「白昼の通り魔」
    田舎の山出しのファム・ファタール
    2度の心中につきあって

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    2017年07月26日