水谷千秋のレビュー一覧
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ネタバレ天皇(大王)を取り巻く100の氏族(ウジ)の活動を、記紀の伝承、系譜、最新の考古学的知見から多角的に描き出し、古代国家形成の実像を解明する事典型研究書。本書の特色は、豪族は天皇にゴマをすったり裏切ったり、葬式での「先祖自慢」スピーチ(誄)や、床暖房付きの渡来人住宅(オンドル)など、古代の生々しいディテールが満載である点にある。
氏(ウジ)の政治的本質が主要論点の一つ。ウジとは始祖から自分に至るまで代々天皇に「奉事」してきたことを存在理由とする集団である。
渡来系豪族の役割も重要な論点。倭漢氏や秦氏などは、蘇我氏などの下で財政・土木・外交などの官僚的実務を一手に引き受けていた。
天智期関連では、中大兄皇子について、乙巳の変を主導。蘇我本宗家を滅ぼし、氏族連合体制から天皇親政(律令制)への転換点を創出した。庚午年籍については、天智9年に制定。氏姓(父系出自集団としての姓)を固定させ、氏族を律令制の官僚体系に組み込む法的基盤となった。白村江の戦いについては、敗戦後、亡命百済人(鬼室集斯ら)を近江蒲生郡へ移配。彼らの知識が天智朝の国防や行政実務を支えた。氏上の制度については、天智朝に創設。白村江敗戦を受け、国家が氏族統制を強めるために氏上へ刀や盾を与えて権威付けた。近江大津宮については、先進的な行政能力を持つ「志賀漢人(穴太・大友・志賀氏ら)」が住む地域へ遷都し、彼らを直轄の官僚として活用した。
講談社現代新書で、どこからでも読める構成。天智まわり関連度は極めて高く、中大兄皇子の側近だった佐伯子麻呂や、裏切った船史恵尺など、クーデターの「動線」にいる人物の素性が詳しくわかる。各氏族の「持ち味(料理、占い、馬飼、門番)」が明確に事典形式でまとまっており、モブや脇役の設定作りに最適な一冊。 -
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古代日本の分散した権力の一端を垣間見ることができた気がする。本書では記紀を中心の出典としつつ、豊富な情報量で各地の豪族の記述を書き上げている。そのため、
古代日本に興味のある方や飛鳥・奈良時代にかけての豪族模様を流れで理解したい方におすすめである。
特に多くの地方豪族が大和朝廷に対し、幾度も戦いを挑んでいることに驚いた。記述に残っている話は天皇支配体制確率後に編纂されていることもあり反乱とされているものが多い。しかし実際には反乱ではなく、より対等な立場同士での権力闘争であったということが示唆されている。
現代に伝わる書物が少ない分、古代史はロマンがあると個人的に思う。古墳時代に興味を持つとともに今後の研究に期待が高まった。 -
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ネタバレ考古学的成果を歴史学者的発想で大胆に描く著作で評価難しい、水谷千秋主張の稚拙な纏め
継体天皇は越前より近江高島を拠点とした実力者で、想像の羽を広げれば半島に赴き百済の武寧王と交わりを持った前半生を想定してみる(大胆)その厚誼は「継体が忍坂宮にいた503年(即位前)、武寧王が長奉を念じ鏡(和歌山隅田八幡神社所蔵の人物画像鏡)を贈った」とか「武寧王の棺が日本にしか生息しない高野槙で製造」とか「任那四県割譲」とか「百済の己汶の地を巡る侵略問題への仲介」「中国から百済が招いた五経博士を求め来日させた」(凄い親密だね)
雄略天王時代から全国の豪族への威信財である広帯二山式冠(朝鮮半島における軍功への恩賞⇨継体自身も軍功者?)・捩じり環頭大刀などの分布から有明海沿岸勢力との強い関係(大和における葛城氏との対立)、近江高島という渡来人(秦氏を代表に)と朝鮮半島との結びつき
≪少しお腹いっぱい≫ -
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著者は日本古代史が専門。人類の進化、神話・宗教・文明の誕生、精神革命、人類史の構造、現代史といったテーマを概観している。
司馬遼太郎は太平洋戦争中に兵役につき、なぜ日本がこのような戦争を起こしてしまったのか、国民の生命を軽視する陸軍がどうして生まれたのかという疑問に答えるために、終生学び続けた。
神話は、この世界がいかにして生まれたのか、我々人間がこの世界でいかに生きて行くべきかを教えてくれるもの。神話の役割は哲学が引き継ぎ、文学、絵画、彫刻、音楽など、あらゆる芸術作品のイメージの源泉になっていった(野田又夫「哲学の三つの伝統」)。
柄谷行人の交換様式論
交換様式A:贈与とお返しの互酬の関係。人々が定住するようになって始まった。権力や富の集中を抑止する働きがある。封建制の君主と騎士の間の主従関係も含まれる。
交換様式B:国家による支配と保護。国民は国家に税を払い、国家は国民に安全を保障する。
交換様式C:商品交換。相互の合意に基づく。交換様式Bと同じ時期に始まった。
交換様式D:交換様式Aが、生産物の共有という平等主義と個人の自由独立性という概念を持って、高次元で回帰したもの。キリスト教や仏教や諸子百家といった普遍宗教。社会主義。将来の世界共和国。
日本は亜周辺という性格を保ち続けたことによって、交換様式Bは強くならず、鎌倉時代には、互酬的な武家の主従関係が成立した(交換様式A)。中央集権的な信長・秀吉の政権は、西洋の絶対王政に近かった(交換様式B)。江戸時代は、16世紀に開かれた世界市場(交換様式C)の浸透を抑えようと努めたが、それができず、明治維新後の急速な産業資本主義的発展に繋がった。
インドのヨーガ、大乗仏教の止観、禅仏教の座禅、老荘思想の坐忘、宋代儒教の静坐、イスラムの唱名(ジクル)は、いずれも目を閉じ、集中して心を静め、無心になるという点でおよそ共通する。意識の深層領域に潜む特異な認知能力を解放し、そこに自己の真相を探ろうとすることにところに特徴がある(井筒俊彦「意味の深みへ」)
1980年代に導入された富裕層への低税率政策を検討したところ、国民の半数を占める労働者階級の所得の伸びはほぼ0%だったのに対し、富裕層の所得は大幅に増えており、トリクルダウンの効果がほとんどなかったことが実証された(ガブリエル・ズックマン「不安に克つ思考 賢人たちの処方箋」)
宇沢弘文が提示した社会的共通資本の考えをもとに、これをいわば更新したものが、アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート、斎藤浩平らの掲げるコモンズの概念。水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として自分たちで民主主義的に管理することを目指す。 -
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知の探求とは何か?それは何の役に立つのか?
それを読者に考えてもらおうと、材料を提供してくれる書なのかと思いながら読み進めた。
知の欲求に囚われたような巨人がいる。
身近な人として、立花隆、司馬遼太郎、井筒俊彦、松本清張が紹介されているが、古くはBC500年、あるいはBC800年からBC200年頃、中国、インド、ペルシア、パレスチナ、ギリシアにおいて、時を同じくして偉大な思想家による現代にも通じる思想が生まれた。これを枢軸時代と名付けている。
人類の進化を動物と比較しながら、いかにヒトとは特別な存在なのかを表し、そのヒトは宗教・哲学・芸術、そして科学を生み出してきたと話しを進める。
しかしだ、文明の発展は地球を破壊し、勝ち組と言われている新自由主義は、人間性や公平性に挑戦していると展開し、暗い気持ちにさせられる。
ただ我々は、教養を身につけることで矛盾を解決できる、と述べていると理解した。
J.Sミルは、教養を学ぶことによって、「期待を決して裏切ることのない利害を超越した報酬」が得られる、と言う。その「報酬」の中身とは、我々が人生を生きていく中で、心惹かれ、もっと知りたいと思うことが、より深く、よりバラエティー豊かなものとなることだと言う。
そしてそれは、人生を十倍も価値あるものにし、しかも生涯を終えるまで持ち続けることのできる価値である。
単に個人的な関心事は年を経るに従ってその価値は減少していくが、この価値は減少することがないばかりか、増大してやまないもだ、とも言う。
今世紀の教養として
一人ひとりの人生にとって、家族や友人たちなど現実の存在が生きがいになってくれることは言うまでもない。そうした個人の一回かぎりの体験や思い出を普遍化し、時や空間を超えて離れた人々とも共通の思い出として表現化されたものが文学であり、歴史であり、芸術であり、宗教なのだろう。これを味わうことによって個人の体験やその思いが多くの人にも共有され、追体験される。これは人間にそれだけのイマジネーションがあるからだ。私たち一人ひとりの人生にとって、そうしたものはどうしても必要なものなのだ。
とある。共感できた。 -
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その血統に???がつく第26代継体天皇。それまでの仁徳朝がいったん途絶えた後、はるか5代前まで遡って「ぢつは親戚だよ〜」とやってきたストレンジャー(もちろん大伴氏、物部氏のバックアップあってのことだけれど)にいったいどんな強みがあったのかを、朝鮮半島との関係を鑑みながら書かれた本。
学校の日本史の時間では、この時代には任那という日本のテリトリーが朝鮮半島にあり、継体天皇はそれを失ったことになっている。
けれどこの本では、そもそも継体天皇がベースとしていた(今の)琵琶湖北岸、東岸には鉄器等の外来文化が強く根づいており、彼の重要な経済的地盤となっていたこと、そしてさらに琵琶湖から桂川経由で(今の)高槻や枚方にも商圏を拡大したなかなかのやり手であった、ということになっている。
つまりですね、古墳時代の前期には奈良盆地から二上山を越えた難波津、すなわち近鉄エリアの範囲にしか過ぎなかったヤマト王権を、一気に京阪、阪急、琵琶湖線、湖北線まで拡大したのが彼だったわけです。凄いよね。
で、そして従来は「(せっかくの植民地)任那を失った」という捉え方ではなく、運営コストを考えた上でとっととそんなモンは百済に譲り、代わりに中国からのエンジニアや文人をコーディネートしてちょうだいな、と持ちかけた賢帝だったということになる。
さらに当時の百済の武寧王の棺桶は、日本特産の高野槙で作られているそうな。棺桶の材料を提供するくらいの親密な外交関係を築いていたわけですね。
中学や高校の日本史ではほんの1,2時間で語られてしまうような内容が、ぢつはとってもエポックメイキングな時期だった、ということでした。 -
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まずは「概説 -古代豪族とは何か」で全体像をおさえられるので、続く各氏を個別に取り上げた部分についても入っていきやすい。
考古学の成果も重要な点は最低限紹介しているので、文献史学の世界だけで通用する論理にとらわれることなく理解しやすい。
それぞれの集団に祖先伝承があり、盛衰があり、政争への関与があり…とドラマチックな面も見れるので、単に勉強になりますってだけでなく、新書として、読み物としてのたのしさも感じられると思う。
本文中で「誰それの説」と名前をあげているところは巻末の参考文献リストで具体的な論文名がわかるようになってるのかと思ったら、漏れてるものも結構あるのは惜しい。 -
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継体天皇は朝鮮半島から渡来した王位簒奪者だったっ!
なんていうトンデモ本ではなく、『古事記』『日本書紀』を
読み解き、古墳や出土品から継体天皇のルーツを
探るというとっても真面目な本である。
皇統から限りなく遠い応神天皇5世孫である継体天皇が
何故、天皇として即位することになったのか。
朝鮮半島からの渡来人と、地元の豪族との住み分けが
なされていた土地での渡来文化の普及等、興味深い
話ばかり。
継体天皇のことがもっと分かれば、現在の皇室に繋がる
流れも判明するんじゃないか?あ…もしかして、何か
都合の悪いことがあるのかなぁ。
しかし、いかんせん読んでいる私に古代史の知識がないっ!
あ…古代史ってより日本史全般が苦手なのだわ。
古代史の研究者ってすごいよね。5世紀くらいってほとんど
資料が残っていないのに、発掘品などからいろんな推測を
打ち立てていくんだもの。
こういう作品を読んでいると、日本っていう国は古くから朝
鮮半島や中国大陸からの文化を吸収して発展して来たの
だってのが実感できるよね。
レイシストは歴史を勉強した方がいいよ。 -
Posted by ブクログ
古代史にはそれほど興味はなかったのですが、本書は面白かったのであっという間に読み切ってしましました。本書では継体天皇という謎の大王とその継体天皇の出自や支持勢力についての考察が書かれています。本書の著者、水谷さんは古代史が専門で過去に「謎の大王継体天皇 (文春新書)」、「謎の豪族 蘇我氏 (文春新書)」などの著書を世に送り出しています。まさにこの時代のスペシャリストといってよい方だと思います。それゆえに内容はかなりハイレベルで、想定される読者も日本の古代史についての基礎知識がある人だと思われます。しかし、僕のような門外漢でも興味を保ちつつ読み進めることができたのは、面白いトピックを織り交ぜつつ文章が書かれているからだと思います。本書を読んで、謎の大王継体の姿に迫ることができたと思います。