水谷千秋のレビュー一覧
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古代日本の分散した権力の一端を垣間見ることができた気がする。本書では記紀を中心の出典としつつ、豊富な情報量で各地の豪族の記述を書き上げている。そのため、
古代日本に興味のある方や飛鳥・奈良時代にかけての豪族模様を流れで理解したい方におすすめである。
特に多くの地方豪族が大和朝廷に対し、幾度も戦いを挑んでいることに驚いた。記述に残っている話は天皇支配体制確率後に編纂されていることもあり反乱とされているものが多い。しかし実際には反乱ではなく、より対等な立場同士での権力闘争であったということが示唆されている。
現代に伝わる書物が少ない分、古代史はロマンがあると個人的に思う。古墳時代に興味を持つととも -
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著者は日本古代史が専門。人類の進化、神話・宗教・文明の誕生、精神革命、人類史の構造、現代史といったテーマを概観している。
司馬遼太郎は太平洋戦争中に兵役につき、なぜ日本がこのような戦争を起こしてしまったのか、国民の生命を軽視する陸軍がどうして生まれたのかという疑問に答えるために、終生学び続けた。
神話は、この世界がいかにして生まれたのか、我々人間がこの世界でいかに生きて行くべきかを教えてくれるもの。神話の役割は哲学が引き継ぎ、文学、絵画、彫刻、音楽など、あらゆる芸術作品のイメージの源泉になっていった(野田又夫「哲学の三つの伝統」)。
柄谷行人の交換様式論
交換様式A:贈与とお返しの互酬の -
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知の探求とは何か?それは何の役に立つのか?
それを読者に考えてもらおうと、材料を提供してくれる書なのかと思いながら読み進めた。
知の欲求に囚われたような巨人がいる。
身近な人として、立花隆、司馬遼太郎、井筒俊彦、松本清張が紹介されているが、古くはBC500年、あるいはBC800年からBC200年頃、中国、インド、ペルシア、パレスチナ、ギリシアにおいて、時を同じくして偉大な思想家による現代にも通じる思想が生まれた。これを枢軸時代と名付けている。
人類の進化を動物と比較しながら、いかにヒトとは特別な存在なのかを表し、そのヒトは宗教・哲学・芸術、そして科学を生み出してきたと話しを進める。
しかし -
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その血統に???がつく第26代継体天皇。それまでの仁徳朝がいったん途絶えた後、はるか5代前まで遡って「ぢつは親戚だよ〜」とやってきたストレンジャー(もちろん大伴氏、物部氏のバックアップあってのことだけれど)にいったいどんな強みがあったのかを、朝鮮半島との関係を鑑みながら書かれた本。
学校の日本史の時間では、この時代には任那という日本のテリトリーが朝鮮半島にあり、継体天皇はそれを失ったことになっている。
けれどこの本では、そもそも継体天皇がベースとしていた(今の)琵琶湖北岸、東岸には鉄器等の外来文化が強く根づいており、彼の重要な経済的地盤となっていたこと、そしてさらに琵琶湖から桂川経由で(今 -
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まずは「概説 -古代豪族とは何か」で全体像をおさえられるので、続く各氏を個別に取り上げた部分についても入っていきやすい。
考古学の成果も重要な点は最低限紹介しているので、文献史学の世界だけで通用する論理にとらわれることなく理解しやすい。
それぞれの集団に祖先伝承があり、盛衰があり、政争への関与があり…とドラマチックな面も見れるので、単に勉強になりますってだけでなく、新書として、読み物としてのたのしさも感じられると思う。
本文中で「誰それの説」と名前をあげているところは巻末の参考文献リストで具体的な論文名がわかるようになってるのかと思ったら、漏れてるものも結構あるのは惜しい。 -
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継体天皇は朝鮮半島から渡来した王位簒奪者だったっ!
なんていうトンデモ本ではなく、『古事記』『日本書紀』を
読み解き、古墳や出土品から継体天皇のルーツを
探るというとっても真面目な本である。
皇統から限りなく遠い応神天皇5世孫である継体天皇が
何故、天皇として即位することになったのか。
朝鮮半島からの渡来人と、地元の豪族との住み分けが
なされていた土地での渡来文化の普及等、興味深い
話ばかり。
継体天皇のことがもっと分かれば、現在の皇室に繋がる
流れも判明するんじゃないか?あ…もしかして、何か
都合の悪いことがあるのかなぁ。
しかし、いかんせん読んでいる私に古代史の知識がないっ!
あ… -
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古代史にはそれほど興味はなかったのですが、本書は面白かったのであっという間に読み切ってしましました。本書では継体天皇という謎の大王とその継体天皇の出自や支持勢力についての考察が書かれています。本書の著者、水谷さんは古代史が専門で過去に「謎の大王継体天皇 (文春新書)」、「謎の豪族 蘇我氏 (文春新書)」などの著書を世に送り出しています。まさにこの時代のスペシャリストといってよい方だと思います。それゆえに内容はかなりハイレベルで、想定される読者も日本の古代史についての基礎知識がある人だと思われます。しかし、僕のような門外漢でも興味を保ちつつ読み進めることができたのは、面白いトピックを織り交ぜつつ