瀧井一博のレビュー一覧
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瀧井一博「伊藤博文 知の政治家」中公新書
著者は、伊藤博文は一般には有名だが知識人からはあまり評価されてこなかったという。それに対して彼を文明・立憲国家・国民政治を目指す「制度」の政治家、「知」の政治家と位置づけようというのが本書の主張である。
伊藤は農民の家に生まれるが生家が長州藩の最下級武士の養子になり、吉田松蔭の松下村塾で学ぶことで頭角を表す。幕末に英国に密航して短期間ながら留学、流暢な英語が彼の力となる。維新後に米国で貨幣調査を行い金本位制を導入させた。その後に岩倉使節団に参加。その中で条約改訂での軽挙妄動を起こすが、それを反省し米欧の国の基本制度を木戸孝允とともに研究することで成熟し -
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明治維新について、諸外国の捉え方や、与えた影響を考察する一冊。内容は今後の展望だったり、広く浅く紹介したという印象ですが、執筆陣が多国籍で新鮮でした。
日本の近代史について、当時の内政分析や、
WW2での「敗戦」をゴールに見据えたうえでの、反省や責任の所在などの振り返りは十分尽くされてきたと思う。
その議論は今後も続けつつ(戦争や悲しみを繰り返さないためにも。「もういいだろう」ではない)、そろそろ、日本近代史の世界的な位置づけを考える研究も、もっと増えてほしいかも。
その方向性の試論としては意味深いのかなと。
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島国だから、日本人は他国の人に比べて、自国の成り立ちを紹介する機会が少ない。
そ -
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本書は、2018年12月に国際日本文化研究センターの主催した「世界史のなかの明治/世界史にとっての明治」と題した国際シンポジウムにおいて議論されたペーパーを中心として編まれたものとのこと。
日露戦争の勝利が西洋列強に圧迫されていた非西洋諸国に希望を与え、日本の近代化=明治維新に関心が持たれたということは有名な話だが、明治維新から150年経った現在の時点において、海外の研究者から、これほど様々な研究が行われていることに圧倒される思い。
本書には16の研究論考が収録されているが、特に比較の見地から書かれている論考については、もう少し詳しく具体的な対比の様相が知りたかった(紙幅の関係でどうし -
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司馬遼太郎の大久保利通観というか、単なる私自身の偏った見方という方が正しい気もするが、大久保利通に対して、実行力や交渉力のある知的で理性的な存在として思い込んでいた。それが本著を読む事で揺らぐ。
一例として、岩倉具視の大久保評。
木戸は先見あるも、すねて不平を鳴らし、表面に議論をせず、陰に局外の者へ何かと不平咄をなすは木戸の弊なり。大久保は才なし、史記なし、只確乎と動かぬが長所なり。
木戸孝允の評価は、何となくこんな感じという気がする。司馬遼太郎も同じような人物評だ。大久保は才無しというのは意外であった。その根拠が本著に示される。ただ、そうは言っても幕末に影響を行使した人物。決して才がない -
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この時代のリーダーは、どのように『国家』を創っていくべきかを考え抜き、そして行動に移していった。
本著では、それらリーダーの思想、言動について具体的に触れられ、そこに映し出される鬼気迫る気概を肌に感じることができる。
この当時の政治家の勉強量(読書量)は想像を絶する程であるし、考え抜く能力はとてつもなく高かったような気がする。
一方で、伊藤博文もその一人だが、大いに楽天的なところもあって、心にゆとりが持てた時代でもあったのだろうか。
(坂の上の雲の如く)
登場する人物は政治家、官僚、学者、思想家、知識人など多岐に亘る。
ただ、各々が重厚なキャラクターの持ち主であるが故、紙面の割き方が少なく