辻内智貴のレビュー一覧
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いずれも九州の炭鉱町、おそらく昭和30年代を舞台に、少年の姿を描いた作品です。
「信さん」は主人公の私の友人だった信さんの話。彼は養子として引き取られ、後に実子が出来たために追いやられ、実像以上に「フダツキ」と見なされていた。しかしある事をきっかけに、私の母を敬愛するようになり、見事にその本性である優しさを花開かせて行く。「遥い町」は戦時中に強制徴用された朝鮮人労働者の息子・ヨン君の話。主人公の友だちだったヨン君は、ガキ大将たちのいわれの無いいじめに耐えていたが。。。
どちらも心を洗うような綺麗な話です。
毎度のことなんだけど、この人の作品はありえないほど奇麗事かも知れません。でもやっぱり読む -
Posted by ブクログ
哀しく美しい物語。
この人の作品は、どれも美しい。登場するのは善意の人ばかり。
悪く言えば「奇麗事」であり、またストーリーそのものも「紋切り型」であることが多い。でも私は惹かれてしまう。
この作品のエピローグに、本編で9歳だった少年が、47歳の脚本家になってつぶやく言葉がある。少し長いが引用してみる。
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キミは悪人が書けないね。
或る大物プロデューサーからそんな事を言われたことがある。(中略)
そうかも知れないと、自分でも思う。
と言って<悪人を書けるようにナロー!>などという目標を書いて机の前に貼る気も無い。(中略)
父に似たのか、どこかヘソ曲がりな所のある私は、例えば今の世の -
Posted by ブクログ
客観的に見れば、優れた作品では無いかもしれない。でも何故かグッと来てしまう本があるものです。
50を過ぎたオジサンが「良かった〜」と言うのは気恥ずかしいような純愛御伽噺(ちなみに単行本のサブタイトルが「TOKYOオトギバナシ 」です)。
だから、人には薦めません。
ミュージシャン崩れで人が良いばかりで売れない四十歳の小説家と、心に大きな傷を持つ二十歳の娘の純愛ですからね。さらにそれを取り巻くのが「親父」と呼ばれる退職刑事とその気の良い奥さん、さらに子供の頃に妹を亡くしてしまった孤児上がりのヤクザ。
ある意味ありふれた設定だし、クサいようなところもあるのですが、辻内さんらしい優しさの表し方と、 -
Posted by ブクログ
2本立てのお話。後半の多輝子ちゃんの話が良かったなぁ。青空ルーレットは窓拭き掃除の作者自身の話みたい。夢を見るってことは生きてることっていうのはすごく納得したなぁー。何もなく生きていくよりもそういう人の方が輝いてると思うし。たきこちゃんの方は初恋相手が死んじゃって後を追おうとしたんだけどラジオから聞こえてきた新人さんのただ受け止めたい・・・的な曲で死ぬのを辞めるの。でもその歌手は薬中ってことがバレてプロダクションの人が止めて2回くらいしか流れない幻の曲だった・・・・でもたきこちゃんを支えたんだね。何だかとっても温かい文章で、太宰治かなんかの賞をとっただけあってやわらかくてステキな話でした。まっ