辻内智貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
再読、氏の作品の中で最も好きな一作です
ここ数年で、辻内智貴さんの本を何冊売ったことでございましょう
いぁ、w244―、書店員でも取次ぎでも出版社でもありません
辻内智貴さんを直接知るどころか、触れたことも見かけたこともありませぬ、唯の一読者であります
それでも、この寡作ながら真摯な著作活動と、稀に上梓される作品の確かさに惚れこみ、『ナンカ、イイ本ネェー?』と問われれば、見境なく辻内智貴さんをお奨めてまいりました
リアル知人に対しましては、その懐具合なども鑑み、遊び暮らしている後輩には無理矢理書店に連れて行き購入させ、子育てに追われオコヅカイに不自由する友人には『読み終わったから -
Posted by ブクログ
ひとことで言ってしまうと、古き良き昭和の人情話。
淡々と描写される優しい日常の風景と人物のディテールに、ノスタルジーがこみ上げます。
でも、ただの懐古趣味とか古くさい貧乏美談とか、そんなよくあるお涙ちょうだい話ではないんです。
心の綺麗な未亡人と、親子ほど歳の離れた複雑な生い立ちの少年・信さんとの、恋にならないような、否、恋にはあえてしなかった、微妙かつ繊細な心の交流が、レトロな世界観の中で、美しく切なく描かれています。それを綴るのが、信さんの唯一の親友であり、未亡人の息子であるという点において、この物語の秀逸さ、卓越性を限界まで高めていると思うのです。
良質かつ美しい家族小説でもあります。 -
Posted by ブクログ
先日「セイジ」を読んで、収録された2編が同じような作風だったので「こんな感じばかりなんだろうな」と思いながら読んだのですが、かなり印象が違いました。
気に入ったのは「青空のルーレット」。
ミュージシャン志望、漫画家志望、作家志望。そんな夢を追い続ける人ばかりが集まった清掃会社。社長は理解があるが病気がち。弟の専務はとんでもない小人で、特に40歳を越える作家志望の荻原を目の敵にする。誰からも弟のように可愛がられていた保雄の事故が元で、いつも穏やかな荻原は専務を殴り退社する。そして。。。。
まあ、途中で先のストーリーは予想はついたのだけれども、それでも面白く、最後のシーンでは思わず目頭が。。。
「 -
Posted by ブクログ
子供のころに読んだ小説。
当時はタツオや萩原さんのような大人になろうと思っていたけれど、実際に大人になってみると保雄が一番近いのかもしれない。
奥田にはなってないといいな。そう信じたいな。そう生きていきたいな。
>「夢を 叶える事よりも、夢を見る事で、人間は人間になれるんだっ、お前なんかに分ってたまるかっ」
表題の『青空のルーレット』と『多輝子ちゃん』の二作品を収録。
前者は、夢を持ち、夢を見て窓拭きをする者たちの友情物語。
正しさや能力・才能には言及してないところがポイントかもしれません。何かを得るのではなく、心を開いてく作品だと思います。作品の清涼感が、時には冷静さを取り戻させてく -
Posted by ブクログ
1作目の「青空のルーレット」はビル清掃員をしながら、夢を見続ける若者(萩原さんは、お年だが・・・)の小説。そういった夢を見続ける若者を理解しない社会との対峙関係が見事に描かれていて、とても良かった。酷い仕打ちを受ける萩原さんを助ける同僚愛も描かれていて、読み終わるときに清々しい気持ちになる作品である。2作目の「多輝子ちゃん」は、一見すると青空のルーレットとは全く異なる作風で、鳥瞰的に描かれる文章が印象的な作品である。しかし内容は、恋に一途な多輝子ちゃんとそれを受け入れない周囲、音楽に一途な青年と薬物中毒の過去を受け入れることができない社会の対峙関係が描かれていて、「青空のルーレット」と共通する