辻内智貴のレビュー一覧
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ひとことで言ってしまうと、古き良き昭和の人情話。
淡々と描写される優しい日常の風景と人物のディテールに、ノスタルジーがこみ上げます。
でも、ただの懐古趣味とか古くさい貧乏美談とか、そんなよくあるお涙ちょうだい話ではないんです。
心の綺麗な未亡人と、親子ほど歳の離れた複雑な生い立ちの少年・信さんとの、恋にならないような、否、恋にはあえてしなかった、微妙かつ繊細な心の交流が、レトロな世界観の中で、美しく切なく描かれています。それを綴るのが、信さんの唯一の親友であり、未亡人の息子であるという点において、この物語の秀逸さ、卓越性を限界まで高めていると思うのです。
良質かつ美しい家族小説でもあります。 -
Posted by ブクログ
先日「セイジ」を読んで、収録された2編が同じような作風だったので「こんな感じばかりなんだろうな」と思いながら読んだのですが、かなり印象が違いました。
気に入ったのは「青空のルーレット」。
ミュージシャン志望、漫画家志望、作家志望。そんな夢を追い続ける人ばかりが集まった清掃会社。社長は理解があるが病気がち。弟の専務はとんでもない小人で、特に40歳を越える作家志望の荻原を目の敵にする。誰からも弟のように可愛がられていた保雄の事故が元で、いつも穏やかな荻原は専務を殴り退社する。そして。。。。
まあ、途中で先のストーリーは予想はついたのだけれども、それでも面白く、最後のシーンでは思わず目頭が。。。
「映像化すると面白そう」と思ったら、すでに映画化されてました。逆に言えば、紋切り型の作品かもしれませんが、それでも一気に読ませてくれる力があります。
どうもこの人のテーマは「純粋な人」のようです。「セイジ」は純粋過ぎて世捨て人のようになった主人公でしたが、この作品ではまだまだ夢を追っています。その分物語が溌剌として感動的でした。 -
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子供のころに読んだ小説。
当時はタツオや萩原さんのような大人になろうと思っていたけれど、実際に大人になってみると保雄が一番近いのかもしれない。
奥田にはなってないといいな。そう信じたいな。そう生きていきたいな。
>「夢を 叶える事よりも、夢を見る事で、人間は人間になれるんだっ、お前なんかに分ってたまるかっ」
表題の『青空のルーレット』と『多輝子ちゃん』の二作品を収録。
前者は、夢を持ち、夢を見て窓拭きをする者たちの友情物語。
正しさや能力・才能には言及してないところがポイントかもしれません。何かを得るのではなく、心を開いてく作品だと思います。作品の清涼感が、時には冷静さを取り戻させてくれ、時には蟠りを吹き飛ばしてくれます。
『多輝子ちゃん』は、あとがきを見るに「青空派」の『青空のルーレット』と対照的な「星空派」の物語でしょうか。多輝子ちゃんが恋を知る物語。実は青臭いのはこちら。
どちらも夢そのものではなく夢が人(自身・他者)に与える影響を描いてるように思えました。都合の良い展開が目立ちますが、物語を締めるためであってハッピーエンドかどうかも本作にとっては重要ではないでしょう。夢を諦めた人、夢を見ている人、誰にでもオススメできる作品でした。
>「………人生はきっと、〝人生は何だろう〟って問われるために僕達に有るんじゃないのかな………」萩原さんは、そんな事を言った。 「………人生は、そう問われたくて、そこに有るんだろうと思う………それを問わずに生きていける人は、確かに幸福なんだろうけど、―――でも幸福は、それを問わずに居られない気持で生きている人の毎日の中にこそ、有るんだろう、と―――人生というのは、きっと、そういうものだろうと、僕は思ってるよ………」 -
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1作目の「青空のルーレット」はビル清掃員をしながら、夢を見続ける若者(萩原さんは、お年だが・・・)の小説。そういった夢を見続ける若者を理解しない社会との対峙関係が見事に描かれていて、とても良かった。酷い仕打ちを受ける萩原さんを助ける同僚愛も描かれていて、読み終わるときに清々しい気持ちになる作品である。2作目の「多輝子ちゃん」は、一見すると青空のルーレットとは全く異なる作風で、鳥瞰的に描かれる文章が印象的な作品である。しかし内容は、恋に一途な多輝子ちゃんとそれを受け入れない周囲、音楽に一途な青年と薬物中毒の過去を受け入れることができない社会の対峙関係が描かれていて、「青空のルーレット」と共通する部分が多い。
「夢を叶える事よりも、夢を見る事で、人間は人間になれるんだっ」、「生まれて、生きて、小さな役に立ったー人間なんて、それで充分なのじゃないでしょうか。」など、人生観が垣間見れるフレーズもところどころに表れていて、2作とも読みごたえのある作品だった。