青柳瑞穂のレビュー一覧
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しばしば危険思想と目される人物による書籍だけあって、晩年の作品にも関わらずきわめて強烈かつ異様、芳醇な毒気を放っている。この作品は読む劇薬だと思う。僕も例にもれず、短い作品ながら頭がクラクラする思いだった。
この毒気は一読に値する。曖昧かつ内省的な文章が延々と並んでいるように見えるが、よく読めばすごい妖気だ。後のカントやトルストイが生涯かけて愛読したように、これはハマる人には途轍もなくハマる内容だ。
しかし一人の人間が必死に生きようとした、その軌跡の末尾として作品を見るならば、この著者にも共感を多く見出せるだろう。
小説にも哲学書にもカテゴライズしがたいが、その作品は紛れもなく文学だった。 -
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ネタバレこちらはフランス文学です~。
まじめな青年が、マノンという女に出会ったために人生を転落していく様を描いたものです。
マノンにあっては引き離されて、大金を持っては全財産失い、、、、の繰り返し。
初めは真面目に読んでたんだけど、この繰り返しでしょ~。
読んでてなんだかコメディー読んでる錯覚に陥ったよ~。
もちろん文章も内容も真面目なんだけど、なんかここまでやられると笑うしかない。っていうか、この真面目な話をコメディに作り替えたら結構いけると思うわよ。
ま、最後はちょっと可哀想なんでかなりシリアスなんだけどね~。
でも、これをミステリーにもつくり変えられるよね~。
実は、すべてマノンの仕業だった -
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18世紀フランスの小説家アベ・プレヴォー(1697-1763)の恋愛小説の古典、1731の作。あの人物像の中に、女も男も自分の姿や理想を垣間見続けてきたのか。所謂"femme fatale(運命の女・男を破滅させる女)"を描いた文学の先駆とされる。プッチーニのオペラでも知られる。
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主に騎士グリュウの一人称語りで展開される本作、世人一般の冷静さを欠き、誰のものとも知らぬ良識の頸木を断ち、恋人マノンなしの世俗的な幸福など一顧だにせず、恋の悦楽その純粋――極端に於いては実生活と両立し得るはずのない純粋、節制とは正反対の感情のアナーキー(ルカーチ)――に身を任せ、ときに -
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二十歳までに所謂名作と言われている本を読み、その感想を十年後、二十年後の感想と比べたいと思っています。
マノンレスコーは友人に勧められて読んでみました。
感想としては…なんだか自分の年齢というか成長を感じました。
もともと自分が保守的な考え方をするというのもあるんですが、主人公やマノンに全くもって共感できなかったんです。
彼らを俯瞰して読んでいるというか、どちらかといえば主人公の親やらのような気持ち。
「その選択は駄目でしょ…」「あーやっぱり悪い方向に行っちゃった」
みたいな感じで、彼らの若さゆえの無鉄砲さが好ましくないと感じてしまいました。
マノンの死の辺りではさすがに最愛の人との永遠の別れ -
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洲之内徹が主に絵画で、青柳瑞穂は主に骨董焼物という違いはあれど、美に対する真摯かつ真っ直ぐな向き合い方がふたりは似ている。そしてふたりとも目利きである。
戦時中、洲之内徹は海老原喜之助の描いた「ポアソニエール」を見つづけ、青柳瑞穂は陶器を見つづけた。
何度か品物を見かけていて気になってどうしても欲しくなって、なんていうくだりなどふたりともそ -
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尽きることのない愛情でグリュウを包むマノン。
二人の間にあったものは、まさに「不謹慎と軽率」だ。
自分に非があると知っていながら、男を運命の歯車に巻き込むのは悪女そのもの。そんな悪女に自らの人生を持って抗えなかった弱き男性の物語。
恋とは大きな水槽に飛び込むようなものなのかしら。
溺れると分かっていながら、自ら全力で回転しながらで飛び込んでいく姿を見た。
グリュウもさ、自分の悲惨な運命を恋のせいにしちゃっている点でどうかと思ったけど。破れかぶれの姿を美しいと思うか、粋ではないと見るかは人それぞれかしら。もうここまで行くと滑稽というか手に負えないなと思ってしまう。
「或る女」が女性目線な -
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前評判は確かだった。
いつまでたっても悪い癖が抜けず、ひどいことばっかりするマノンなのに、
それは「悪い癖」という言葉でまとめられてしまうことができる。
そのゆえんはマノンの悪気のなさ!!
お金がなくなった途端に公然と浮気をしておいて、可憐にこう言い放つ。
「ごめんね、でもお金がないって耐えられないんだもん…」
悪女である。
しかもこれで嫌いになれないかわいさ(無邪気さからくるのだろうか)があるんだから、さらに始末に負えない。
というか、だからこその悪女なのか。
なんといっても、まっとうに主人公と想い合っている期間は本当にかわいいのだ。
「こんなに愛されて、私はほんとに世界一の幸せ者だと思 -
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人は恋のためだけに、ここまで出来るものなのか…。あまりの愛の力の強さにあてられてしまいました。
しかし、主人公グリュウもマノンも、よくもまあ胡散臭く滅茶苦茶な理論を次から次へと吐けるものだ。恋が悪い、恋のせいだと言ったとて、行動に移したのは全部自分なのに。
あと勉強になったことは、妾を囲っておくこともイカサマを身につけることも、彼らが生きているこの世紀では別にいやしいことじゃないらしいです。
「椿姫」で物語の鍵となる小説だったので手に取ってみましたが、この「マノン・レスコー」でフランス文学の破天荒さに目覚めてきました。次は何を読もうかな。