【感想・ネタバレ】マノン・レスコーのレビュー

あらすじ

自分を死ぬほど愛している純情な貴公子デ・グリュウに、賭博、詐欺などの破廉恥な罪を重ねさせながら、自らは不貞と浪費のかぎりを尽し、しかもなお、汚れを知らぬ少女のように可憐な娼婦マノン。プレヴォーはその美しく多情な姿を創造して、永遠の女性像に新しいタイプを加えた。今日においてもなおみずみずしさを失わない18世紀フランスロマン主義文学の不朽の名作である。

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私が持っている新潮文庫版、同じ青柳瑞穂訳ですが、昭和56年36刷。アベ・プレヴォーって筆名(通り名?)は、Abbe(僧侶) Prevost だったんだ、何も知らずに読んでるものだなぁ、おそろし。男(とその人生)を破滅させる女の代名詞のようなマノン・レスコー(昔むかしのわが国の流行歌の歌詞にもあったような記憶が…)。オペラ「マノン」はプッチーニですね。プッチーニよりもヴェルディのほうが高尚だということになっているから「ヴェルディが好きです」と言ったほうがイタリアでは無難だよ、という話も聞いたことがありますが、私はどちらの音楽も好きです、それぞれに。どっちか選べと迫られたら、プッチーニかも。あの「泣き」のカタルシスが最高です。それで、マノンですが、そういう意味でもプッチーニに相応しい。アベ・プレヴォー自身の経歴が、さらにそれを超えている。同じ(種類の)情熱を有する男性を、何人か知っているつもりです、彼らの人生は破綻してはいないけれど。こんな女、実際には絶対にいないだろう、と、冷静になればそうも思えます。けれどもそういう女性像を描き出した人がいて、そこから何かの感懐を得る人々(男女問わず)がいること、そこにある「真実」が潜んでいるように思われます。

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2011年07月19日

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304P

アベ・プレヴォー(Abbé Prévost、1697年-1763年)は、フランスの作家で、代表作『マノン・レスコー』(Manon Lescaut)で知られています。本名はアントワーヌ・フランソワ・プレヴォー(Antoine François Prévost)で、「アベ」(僧侶)という呼称は彼が一時期修道士であったことに由来しています。プレヴォーは恋愛と欲望の間で葛藤する人々を描き、道徳や人間の弱さについて深い洞察を与えた作家として評価されています。

生涯

プレヴォーは裕福な家庭に生まれ、若い頃から聖職者としての道を歩み始めましたが、修道生活に適応できず、何度も職を変えながら放浪する生活を送りました。その後、軍隊に入隊し、戦争に従軍した経験もあります。しかし、最終的には文学への情熱に駆られ、作家としての道を歩むことを決意します。プレヴォーの作品は当時のフランス社会や道徳観念に挑戦する内容であり、一部は発禁処分にされるなどの影響を受けましたが、彼は物語の執筆を続けました。

代表作『マノン・レスコー』

プレヴォーの代表作である『マノン・レスコー』(正式タイトルは『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』Histoire du chevalier des Grieux et de Manon Lescaut)は、1731年に発表されました。この作品は、若い騎士デ・グリューと美しい女性マノンとの恋愛を描き、当時のフランス社会に大きな衝撃を与えました。

あらすじ

貴族の青年デ・グリューは、魅惑的な女性マノンに恋をし、彼女と一緒に逃避行を始めます。しかし、マノンは愛と同時に物質的な豊かさや贅沢を求める性格で、デ・グリューの純粋な愛が次第に困難な状況に直面します。二人は犯罪に手を染め、裏切りや困難に巻き込まれながらも、激しい恋愛関係を続け、最終的には悲劇的な結末を迎えます。

テーマと影響

『マノン・レスコー』は、愛と欲望、善と悪の境界が曖昧になる人間関係をテーマにし、登場人物の心理を繊細に描いています。デ・グリューの無償の愛と、マノンの享楽的な性格は強い対比を成しており、当時の社会の道徳観や価値観に対する批判も含まれています。この作品は、その後の文学作品やオペラ、バレエの題材にもなり、プッチーニやマスネによってオペラ化されるなど、多くの芸術家にインスピレーションを与えました。

プレヴォーの文学的影響

プレヴォーは恋愛小説や心理小説の先駆者として知られ、その影響は19世紀から20世紀のフランス文学に広がっています。彼の作品は人間の複雑な感情を描き出し、特に恋愛における矛盾や自己破壊的な面を表現しています。プレヴォーの視点はリアリズムやロマン主義の先駆けとして評価され、スタンダールやプルーストなど後の作家たちにも影響を与えました。

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2024年11月12日

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「宿命の女」、マノン・レスコー。
マノンの言動よりも、グリューの甲斐性のなさにイライラ。
自分で働いてお金を稼ぐことは考えずに、借金、賭博、詐欺。更には殺人までやってのける。もう凄まじい転落人生です。

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2011年11月18日

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この物語に欠かせないものとして激賞されるのは、マノンだろう。でも、私が泣かされたのは、主人公の友人、チベルジュだ。彼の主人公を大切にする気持ちには、参ってしまう。また、この物語はページの残量が極少になっても、まだ話が大きく展開していくため、最後まで目が離せない。デュマ・フィスの「椿姫」はこの物語をどう読み解いたのだろうか。

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2011年09月26日

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主人公デ・グリュウはおバカだ、友人チベルジュはいい人だ、マノンもおバカだ……そう思い、つっこみを入れつつも、だんだんとデ・グリュウに同情し、同調し、マノンに魅力を感じるようになってしまいました。最後に死んでしまうからでしょうか。まあ、もし何だかんだで生き続けたら、たぶんつまらない話だったはず。
しかし、美貌によるハロー効果ではないかと思うほどにデ・グリュウはマノンを「愛して」いるんですね。その愛のもとには何もが正当化されてしまう。その愛がよくわかりました。さすが心理小説。マノンが「運命の女」たりうるのは、視点がすべてデ・グリュウのものだからでしょうね。
最後まで飽きさせず読めた作品でした。まさに劇的。(特にアメリカの描写、効果については……)

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2010年12月29日

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まるでブランデーのように舌の上で熱く甘く溶け喉を熱く焼き焦がす。
マノンは悪女だけれど愛さずにはいられない。
永劫の罰が待っていても束の間の幸福を求めずにはいられない。エロスは人間にとって最大の苦しみだ。

同一神のはずだが、アラーのほうが慈悲深い。

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2011年01月02日

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今から300年程前の小説。美という罪な魔力を持ったマノンと、愛という弱点で翻弄される男。何度裏切られてもやっぱり愛してしまう様子はもはや応援したくなった。マノンの最期は悲しい。色々あったけれど、男は人生を謳歌したようにみえた。

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2025年09月08日

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話のテンポが良い。
マノンに一目惚れして、一緒に住んで、不倫されるまで25ページ。
そら主人公もびっくりするよ。

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2024年10月27日

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ネタバレ

「恋は財宝よりも富裕よりも強い。
しかし、恋はそれらの力を借りる必要がある。」

主人公の理性との葛藤が、相対する親友とキャラを分けて描かれている。
個人的に終わり方にあまりスッキリはしなかったものの、ロマン主義文学の始まりと言われると納得できるように思いますね。

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2022年08月26日

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騎士グリューの追い求める姿は、痛々しいが、なんかわかる気がします。最近、マノンに似た女性が割と身近にいて、驚きました。現実は小説より奇なりとはよく言ったものです。個人的にはタイムリーでした!

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2019年05月24日

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フランス文学の傑作小説。
美少女マノンを愛してしまった青年グリュウの物語。
二人の破滅的な恋愛模様が描かれ、最後には遠いアメリカの地でマノンが死に、グリュウは一般人としての生気を取り戻す。
ファムファタール。

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2018年08月17日

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青年グリュウは美少女レスコーに一目ぼれをし駆け落ち。男たちの嫉妬に2人は追い詰められ、彼女自身も欲望に忠実だったことからアメリカ追放への一途を辿り、さらにその先にも破滅への道は続く。

オペラやバレエ等で長く人々に愛されている作品なので読んでおきたく。「ファム・ファタール(男たちを破滅させる女)」を描いた初の文学作品とのこと。冒頭から一貫して男女の恋愛を描きながらも、互いを想う切なさや悲恋といった儚さは全く感じられません。
愛する女性を追いかけ、振り回され、振りほどかれ、それでも追いかけ…グリュウは愚直なほどに彼女を求め愛します。対してレスコーは自他ともに認める美貌を持ち合わせていますが、享楽的で悪気なく人を欺き振り回す性格で、決して上品とは言えない口調や発言も口にします。そんな2人の恋愛を、これぞ愛だと親しみを感じるか、滑稽だと見るか…ほとんどの方は後者なのではないでしょうか。

「恋とは盲目で、刹那的なものである」
そんな結論に至りたくなるほど、最後のグリュウ帰省の場面は彼女を失った哀しみよりも自分らしさを取り戻した清々しさを感じてしまいます。

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2017年06月17日

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アベ・プレヴォーの自伝小説集"世俗を棄てたある貴人の回想と冒険"全7巻のうち、第7巻"騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語"が本作に該当します。そして、オペラや映画などの題材として度々取り上げられてきました。娼婦マノンに翻弄される貴公子デ・グリュウの一喜一憂する心理描写がとても鮮やかです。リアルでは絶対にお近づきになりたくはないですが、マノンも魅力的です。どこまでもマノンにのめり込んでしまうグリュウの一途さが、ラストの悲劇に繋がります。ファム・ファタールを描いた初めての文学作品だとも言われてます。

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2015年07月29日

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ネタバレ

僕は全宇宙が崩壊するのをいても、知らん顔をしていることだろう。なぜだって?彼女以外のものなんてどうだっていいからだ。

バカバカバカ!!!何度そう叫びそうになったことか。愛とは盲目であるとは言うけれど、何度浮気されても、何度親友をだましても、何度牢獄にいれられても、果てには人を殺してまでも貫き通す愛はもはや美談のかけらもない。それにしても親友チベルジュを始め、グリュウ(主人公)の周りにはお人よしのいい奴ばっかが集まっている。だから脱獄もちょちょいのちょいなのだ。「現実はそんなに甘くない」とか「人を殺しといて美談に仕立てて」とか色々不満点があり、椿姫のように心から同情して泣ける物語ではなかった。

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2015年07月17日

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ファムファタール系の一作。
こんなのに惚れたら大変だ。ろくでもないと解りながらも、絶対に夢中になってしまう。物語としては悪くはないけどちょっと物足りない気もする。

著者のアベ・プレヴォーは相当な数の著作があるようだけど、合間に軽く書いたこれが最も評価されているというから作者の思惑と世間との認識は往々にして乖離するもんだっていう良い例。

自治医大店 田崎

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2015年06月21日

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大学のフランス文学の授業で読んだ本。

やはり読み継がれている文学作品は読み応え、インパクトあり。
フランス文学の退廃的でわけわからんカオスな感じ、泥々な感じが、好きです。

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2013年05月06日

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昭和30年の訳だったと思いますが、予想よりもはるかに読みやすい文体で、驚きました。想像力をうまく利用した作品だと思います。原文と読み比べながら、もう1度じっくり読んでいきたいです。

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2011年01月20日

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普及の名作をやっと読んだんだけど、単純な恋愛をテーマにした作品と片付けられない人間の本質を書いた小説だろう。文章にも含まれるけど、愛、憎しみ、快楽、苦痛、希望、恐怖という感情をここまで書いている作品はそうそうないですね。溺れるぐらい感情移入できるのでまた時間を置いて読んでみたい作品。280年たった今でも楽しめるなんてすごいな。

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2010年10月25日

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稀代にみるクソ女伝説だった 頑としてでも働かないこの潔さ、羨ましい それが時代なの?まあ、男のひとがこうだったらマジで困るんだけど
こういうしっちゃかめっちゃかさがさらにマイナスにいくと、ボニーとクライドみたいになるのかな

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2018年11月17日

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ファム・ファタール小説としてはじめてのもの、らしい。著者アベ・プレヴォーの代表作はこれひとつしかないくらい、らしい。この小説を知ったのはまず金城一紀の『GO』からデュマ・フィスの『椿姫』に興味を持ち、『椿姫』の中でこの作品について言及されていて気になったからである。読書の楽しみはこんなところにもあるんじゃないかなぁ、と思う。

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2015年11月17日

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ネタバレ

ようやく読み終わった。ページは多くないけれど、続きが気になるようなストーリーではないから。
マノンの視点からの描写が一切ないのが、物足りなかった。浮気するとき、何を考えていたんだろうとか、自分が美しいことに対してどう思っているんだろうとか、マノンの本心が気になった。
フィクションとはいえ、美人の人生がこんなつらいなんて。マノンが男性を翻弄しているように見えて、実は振り回されたのはマノン本人だったように感じる。

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2015年10月12日

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ネタバレ

こちらはフランス文学です~。
まじめな青年が、マノンという女に出会ったために人生を転落していく様を描いたものです。

マノンにあっては引き離されて、大金を持っては全財産失い、、、、の繰り返し。
初めは真面目に読んでたんだけど、この繰り返しでしょ~。
読んでてなんだかコメディー読んでる錯覚に陥ったよ~
もちろん文章も内容も真面目なんだけど、なんかここまでやられると笑うしかない。っていうか、この真面目な話をコメディに作り替えたら結構いけると思うわよ。

ま、最後はちょっと可哀想なんでかなりシリアスなんだけどね~。
でも、これをミステリーにもつくり変えられるよね~。
実は、すべてマノンの仕業だったとか。。。

なんかこの本をこのまま読んでしまうのが惜しい気がしたわ。

そうそう。この本、実は66巻あって、その中から抜粋して、これだけ独立させた本なんだって~。
66巻も読めないよ~。

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2015年03月08日

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18世紀フランスの小説家アベ・プレヴォー(1697-1763)の恋愛小説の古典、1731の作。あの人物像の中に、女も男も自分の姿や理想を垣間見続けてきたのか。所謂"femme fatale(運命の女・男を破滅させる女)"を描いた文学の先駆とされる。プッチーニのオペラでも知られる。



主に騎士グリュウの一人称語りで展開される本作、世人一般の冷静さを欠き、誰のものとも知らぬ良識の頸木を断ち、恋人マノンなしの世俗的な幸福など一顧だにせず、恋の悦楽その純粋――極端に於いては実生活と両立し得るはずのない純粋、節制とは正反対の感情のアナーキー(ルカーチ)――に身を任せ、ときに絶望に堕ちときに改悛しそのまたすぐに恋の有頂天へ・・・。息苦しいまでの若さの疾走――内面を重苦しくさせ、その重さゆえに疾走せずにはおれなくさせるところの、あの若さ――、行き着く果ては愛の幻想で充溢した二人きりの(終にはグリュウ独りきりの)内的な自閉空間か。そこから血涙となって零れる呻吟が、破滅の予感とともに響いている。ロマン主義的な感性の萌芽と云えようか。

「彼女はぼくを愛している。・・・。ぼくは全宇宙が崩壊するのを見ても、知らん顔をしていることだろう。なぜだって? 彼女以外のものなんてどうだっていいからだ」

「しかし、おまえに必要な男は、金持ちで、幸福者でなければならない。・・・。ところが、このおれときたら、ご提供できるのは、愛ばかり、誠実ばかり。女どもは、おれの貧乏を軽蔑し、おれの一本気をなぶりものにする」

「恋ゆえに、ぼくはあまりにも感じやすい、あまりにも情熱的な、あまりにも忠実な人間になりました。そして、おそらくは、美しい愛人の恋をむかえるために、あまりにも気前のいい人間になりました。ぼくの罪悪というのは、これなんです。」

「しかし、私はどんなことをしても彼女と別れないと断言し、世界の果てまで連れていって、・・・、彼女を愛し、自分の不幸な運命を彼女のそれにしっかりと結びつけるつもりだ・・・」

「愛しあう恋人同士にとっては、宇宙全体が祖国ではないだろうか? 彼らはお互いの心の中に、父を、母を、親戚を、友人を、富を、至福を見いださないだろうか?」



それにしても、破滅させるほどの恋を騎士に抱かせている当のマノンの実体が茫として掴み所のない、というのは読みながらずっと訝しく感じられた。騎士グリュウの一本気な誠実さが、内面に空いた無限小の穴であるとするなら、娼婦マノンが己の享楽の為に不貞を犯しながらなおも失われずにいるかの如き無邪気さは、魂が抜けて浮遊する無限遠点のようだ。肌に熱ある人物像をどうしても思い描けない、宛ら自動人形の如し。そもそも、"femme fatale"という人物類型自体、女性という他者を前にして、それへの恐怖や欲望が綯い交ぜになって創り出された、男による幻想だ。女を眼差す男の視線を映し返している、鏡だ。作者もマノンを全体的な人物として描き切れなかったのではないだろうか。

それでも、ヨーロッパを追われ、アメリカの地の果て、「彼女を愛し、自分の不幸な運命を彼女のそれにしっかりと結びつけ」た騎士に、

「逃げちゃうのよ、いっしょに」

と云う、終末近いマノンの言葉は、本作中、最も哀切で美しいと感じる。



破滅に到らなければ恋は嘘だ、とロマンチストは云うかもしれない。しかし、現実は散文的な生活の裡にある。虚構の中でしか描き得ない、嘘としてしか語り得ない、真実もある。

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2012年11月19日

Posted by ブクログ

先日「悪い娘の悪戯」を読んだときに、ファム・ファタールものだとこれがバイブル的存在なようだったので、読んでみた。

まあ、古い小説だから古臭くて仕方ないのだけど、女性の類型化という以上の読む意味は見いだせなかった。もうちょっとマノン・レスコーが魅力的な女性だったら惹きつけられただろうが、読んでいる限りでは魅力はよくわからなかった。

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2012年04月12日

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ネタバレ

『椿姫』のマルグリットがアルマンとの出会いにより幸せを見出したのに対して、マノンはグリュウを悪徳の世界に引きずり込みました。美しく罪深い女マノンにとって、グリュウとの恋愛に幸福はあったのでしょうか。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

二十歳までに所謂名作と言われている本を読み、その感想を十年後、二十年後の感想と比べたいと思っています。
マノンレスコーは友人に勧められて読んでみました。
感想としては…なんだか自分の年齢というか成長を感じました。
もともと自分が保守的な考え方をするというのもあるんですが、主人公やマノンに全くもって共感できなかったんです。
彼らを俯瞰して読んでいるというか、どちらかといえば主人公の親やらのような気持ち。
「その選択は駄目でしょ…」「あーやっぱり悪い方向に行っちゃった」
みたいな感じで、彼らの若さゆえの無鉄砲さが好ましくないと感じてしまいました。
マノンの死の辺りではさすがに最愛の人との永遠の別れということで悲しい気持ちも湧いたんですが、それでも「最初にこう行動しておけば…」という風に冷静に考えてしまって、悲しみに飲み込まれない。
もっと早くこの本を読んでおきたかったです。
中学、高校時代に読んでいたら、また違った感想だったのではないかと思います。

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2011年08月13日

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尽きることのない愛情でグリュウを包むマノン。
二人の間にあったものは、まさに「不謹慎と軽率」だ。

自分に非があると知っていながら、男を運命の歯車に巻き込むのは悪女そのもの。そんな悪女に自らの人生を持って抗えなかった弱き男性の物語。

恋とは大きな水槽に飛び込むようなものなのかしら。
溺れると分かっていながら、自ら全力で回転しながらで飛び込んでいく姿を見た。

グリュウもさ、自分の悲惨な運命を恋のせいにしちゃっている点でどうかと思ったけど。破れかぶれの姿を美しいと思うか、粋ではないと見るかは人それぞれかしら。もうここまで行くと滑稽というか手に負えないなと思ってしまう。

「或る女」が女性目線なのに対して、「マノン・レスコー」は男性目線なのが面白い。どちらも、女性「性」をうまく描いていると思う。

・自分が相手の愛に値しないのではないかという感情
・チベルジュとグリュウの相反する理性と感性のコントラスト
・フランスとアメリカの対比
とか、そういうのが気になった。

にしても、後半30ページの悲劇っぷりはやばい。。
悲劇の階段を転げ落ちていくとはまさにこのこと。
息をのむ展開だった。

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2011年03月17日

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恋愛に恋と愛の二つの要素があるとしたら、この物語は恋の極限なんだろうと思います
私にはまったく理解できない思想世界だなーと思いました
君も本気の恋をすれば変わるよ、この物語が好きになるよ、と言われたとしたら、私はそんな恋なんてしたくないです

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2010年10月24日

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前評判は確かだった。

いつまでたっても悪い癖が抜けず、ひどいことばっかりするマノンなのに、
それは「悪い癖」という言葉でまとめられてしまうことができる。
そのゆえんはマノンの悪気のなさ!!
お金がなくなった途端に公然と浮気をしておいて、可憐にこう言い放つ。
「ごめんね、でもお金がないって耐えられないんだもん…」
悪女である。

しかもこれで嫌いになれないかわいさ(無邪気さからくるのだろうか)があるんだから、さらに始末に負えない。
というか、だからこその悪女なのか。
なんといっても、まっとうに主人公と想い合っている期間は本当にかわいいのだ。
「こんなに愛されて、私はほんとに世界一の幸せ者だと思うの」と、こう来る。

主人公はこれで許してしまうのです。
ついには、「お金がないと浮気しちゃうのは癖だからしょうがない。彼女のためにお金を絶やさないようにしよう」とこうなる。
なんたる思考回路!ここまで来ると幸せ者ですね。

そしてその若さゆえの恋みたいな勢いは最後まで衰えることがない。
この時代にこの作品とは、すごい。
現に、娼婦の悪女、という設定ははじめてのことだったらしい。

うーん、舞台でぜひ見たい。

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2010年07月09日

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人は恋のためだけに、ここまで出来るものなのか…。あまりの愛の力の強さにあてられてしまいました。

しかし、主人公グリュウもマノンも、よくもまあ胡散臭く滅茶苦茶な理論を次から次へと吐けるものだ。恋が悪い、恋のせいだと言ったとて、行動に移したのは全部自分なのに。

あと勉強になったことは、妾を囲っておくこともイカサマを身につけることも、彼らが生きているこの世紀では別にいやしいことじゃないらしいです。


「椿姫」で物語の鍵となる小説だったので手に取ってみましたが、この「マノン・レスコー」でフランス文学の破天荒さに目覚めてきました。次は何を読もうかな。

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2010年05月12日

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