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明治期の日本をこよなく愛し,「小泉八雲」の日本名を持ったラフカディオ・ハーン.妻セツが語ってきかせた不思議な物語を,欧米の読者に紹介した.「雪女」「耳なし芳一」をはじめ,新鮮な日本の印象をつづった「東洋の土を踏んだ日」,浦島伝説と交錯した幻想的な旅の記「夏の日の夢」などのエッセイ(抄)を収録.
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Posted by ブクログ
ハーンが愛した風景や文化は今もこの国にあるのかな。 酔っ払いながら読んだから、もう一度読まないとな。
「異類婚姻譚」について調べていたときに「異形の女房」の例として出てきた『雪女』。 そういえば小泉八雲、ラフカディオ・ハーンってちゃんと読んだことなかったかも。入門書としてこちらを読んでみました。 有名な『耳なし芳一』、『雪女』のほか、ハーンが再録した日本の不思議な物語12編とエッセイ4編を収録。...続きを読む もととなる原話と比較したわけではないですが、物語はハーン独自の視点や語り口でリメイクされているのではと思われます。そもそも物語のセレクトからしてハーン独自のフィルターが入っているわけですし。 エッセイ『夏の日の夢』に『浦島太郎』、同じくエッセイ『神々の集う国の都』に『子育て幽霊』の話が出てきます。これらの物語にある「哀れみ」や「哀しさ」のようなものにハーンは強く惹かれていたようです。 『遠野物語』なんかもそうですが、日本の伝承物語ってどこか暗さとか悲しさを含んでますね。 『東洋の土をふんだ日』、『盆踊り』、『神々の集う国の都』、『夏の日の夢』。エッセイ4編は抄訳ですが、どれもとても美しい文章で日本の印象がつづられています。 ハーンがだいぶ盛っているところもあると思いますが、明治時代の日本はかくも美しかったのか。異国人の眼で見るからこそわかる美しさもあったのかと思います。 「日本の町の通りは漢字で飾られているから絵のように見える。これを英語で置き換えたところを想像するとゾッとする」といったような文章があるんですが、日本人は英語で書かれた看板を無意味にかっこいいと思ってしまうんだから笑ってしまいます。 2025年秋の朝ドラ『ばけばけ』は小泉セツが主人公だそうですが、ハーンに日本の物語を紹介した女性に興味がわいてきたので、ハーンのエッセイとともにちゃんと読んでみたいなと思います。 以下、引用。 74 原話である『宇治拾遺物語』ではタヌキだが、英語圏の国々にはタヌキはいないので、ハーンはアナグマにしている。 132 そういう古い鏡というのは不思議なもので、それぞれが魂を持っているし、鏡の魂というのは女性なのだ。 140 日本の田舎にある村のうちには、真夏のよく晴れた日でもずいぶん暗いところがしばしばある。 こうした村の第一印象がちょっと薄気味悪いのは、一種独特の不思議な魅力を持った透明な薄暗さのせいというより、その静けさのせいである。 164 「第一印象というのは、たちまち消えてしまうものですからね。いったん薄れてしまったら、思い出そうとしても思い出せるものではありません。これからあなたはこの国で、ありとあらゆる不思議なことを体験なさるでしょうが、第一印象の魅力にまさるものには、二度と出会えるものではありませんよ。」 169 やがて、働いている人たちの着物にも、店の布にあるのとおなじ文字が書いてあるのに気がつく。どんな唐草模様を使っても、こんな効果は出せないだろう。意味を示しながら装飾にもなるようにと変形されたそれらの文字は、均整のとれた美しさを保ちながらおしゃべりでもあるが、意味を持たないデザインにはそんな芸当はできやしない。労働者の濃い青の上着の背中に、それを着ている人がどこの店や会社の者かを示すまっ白な文字が、遠くからでもかんたんに読める大きさで記されていると、ごく安い粗末な衣装が、華やかな装いをこらしているかのように見える。 それは、これらの通りが驚異的に美しい絵のような景色に見えるのは、まず何よりも、ありとあらゆるものが──柱の表面や紙製のスクリーンまでが──白、黒、青、金などで書かれた中国や日本の文字で、ふんだんに飾られているからなのだ、ということだ。それがわかったら、ほんの一瞬でいいから、これらの不思議な文字を英語の文字におきかえたらどうなるかを、想像してみてほしい。もしもあなたが、審美眼というものを多少ともお持ちだったら、そう考えただけでぞっとして、わたしと同様、《ローマジカイ》の反対者になることだろう。 172 なぜなら、自分でそれに気がついているかどうかはべつとして、本当に買いたいと思っているものは、店の商品だけではないからだ。店もほしいし、店の主人もほしいし、布がゆれている店が並び、人々が並んでいる通りも、町全体も、入江も、それを取り巻く山なみも、雲ひとつない空に、白く、夢さながらに浮かんでいる富士山もほしい。いや、本当のことを言うと、魔法のような木々や明るい大気、たくさんの都や町や寺、そして、この世でもっとも愛すべき四千万の人々をひっくるめた、日本全部がほしいのだ。 183 小鳥のように軽く身構えたその群れは、夢のなかで古代の壺のまわりをぐるぐるまわっていた女たちの姿を思い出させた。ひざのあたりにまつわりつく美しい日本の着物は、大きく垂れ下がる風変わりな袖と、ぎゅっと結ばれた幅の広い奇妙な帯さえなかったら、ギリシャかエトルリアの芸術家が壺に描いた絵をもとにデザインしたと言ってもいいほどだ。 212 川向こうの家々では、見えないランプの柔らかな黄色い光が、大きな《ショウジ》いっぱいにひろがり、優雅な女たちのほっそりした姿がその光のなかを動きまわっているのが、影絵のように見える。日本じゅうでガラスが使われるなどということにならないよう、わたしは心から願っている。そんなことになったが最後、このすばらしい影たちは消え失せてしまうのだ。 236 たぶん、それでも哀れに思ってしまうところに、この謎の答えがあるのだろう。この哀れみは、自分に対する哀れみなのにちがいない。つまりこの伝説は、無数の魂が作りだした伝説なのだ。それに対する思いは、光が青く風が優しい特別な時を選んで、ふっと心にやってくる。それはいつも、まるで昔もらった小言のようだ。
名前だけは知っているハーンの作品をはじめて読むことができた。 怪談で知られるような民話やおとぎ話が12編+後半には4編のエッセイ(抄訳含む)が収録されている。 面白かったのは、お茶の中の顔、常識、伊藤則資の話。 自然と杉浦日向子の「百物語」や「東のエデン」(明治期の外国人の日本についての手記)をお...続きを読むもいだした。 (東のエデンで、日本について、「ここにいるのは、追放前のアダムとイブだ。されば僕は彼らを誘惑しにきた蛇かもしれない」というフレーズが忘れられない) 八雲のエッセイは、どれも本当に素晴らしくて、抄訳なのが勿体なかった。 はじめて日本に来たときの町の印象、盆踊りの夢のような光景、浦島太郎伝説と結びつく熊本への旅行など。 外国人のハーンの目を通してみる、明治やそれ以前の日本が本当に小さくて不思議な別の世界の物語なのが興味深い。 東南アジアの仏教国の、中国とも韓国とも違う、一つの島国なんだなと思った。 もはや私たちにとっても失われた国だ。 注釈も楽しく読んだ。 ハーン個人の解釈も時折含まれていることがわかる。 改めて経歴を見て、ハーンがギリシア生まれのアイルランド育ちであることを深く考えさせられた。 神話の国、妖精の国から来た彼が、日本の自然や大衆の物語にそれらを読み取り、再話した点が興味深い。 あとがきで、訳者の脇明子さんが、 英語で書かれた日本についての物語&日本でもともと知られている物語をわざわざ再度日本語に翻訳する意味ってなんなんだ(大意)と当初感じておられたとのこと。 それを言っちゃあおしまいよーと思ったけど、いっとき流行った自動翻訳における、桃太郎→英語版モモタロウ→日本語版桃太郎が笑えることと同じで、そのフィルターが私には新鮮でたのしかった。 しかし翻訳にはかなりエネルギーを要したと思われる。 お疲れ様でした。労作。
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ラフカディオ・ハーン
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