【感想・ネタバレ】雪女 夏の日の夢のレビュー

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Posted by ブクログ

名前だけは知っているハーンの作品をはじめて読むことができた。
怪談で知られるような民話やおとぎ話が12編+後半には4編のエッセイ(抄訳含む)が収録されている。

面白かったのは、お茶の中の顔、常識、伊藤則資の話。
自然と杉浦日向子の「百物語」や「東のエデン」(明治期の外国人の日本についての手記)をおもいだした。
(東のエデンで、日本について、「ここにいるのは、追放前のアダムとイブだ。されば僕は彼らを誘惑しにきた蛇かもしれない」というフレーズが忘れられない)

八雲のエッセイは、どれも本当に素晴らしくて、抄訳なのが勿体なかった。
はじめて日本に来たときの町の印象、盆踊りの夢のような光景、浦島太郎伝説と結びつく熊本への旅行など。

外国人のハーンの目を通してみる、明治やそれ以前の日本が本当に小さくて不思議な別の世界の物語なのが興味深い。
東南アジアの仏教国の、中国とも韓国とも違う、一つの島国なんだなと思った。
もはや私たちにとっても失われた国だ。

注釈も楽しく読んだ。
ハーン個人の解釈も時折含まれていることがわかる。

改めて経歴を見て、ハーンがギリシア生まれのアイルランド育ちであることを深く考えさせられた。
神話の国、妖精の国から来た彼が、日本の自然や大衆の物語にそれらを読み取り、再話した点が興味深い。

あとがきで、訳者の脇明子さんが、
英語で書かれた日本についての物語&日本でもともと知られている物語をわざわざ再度日本語に翻訳する意味ってなんなんだ(大意)と当初感じておられたとのこと。
それを言っちゃあおしまいよーと思ったけど、いっとき流行った自動翻訳における、桃太郎→英語版モモタロウ→日本語版桃太郎が笑えることと同じで、そのフィルターが私には新鮮でたのしかった。
しかし翻訳にはかなりエネルギーを要したと思われる。
お疲れ様でした。労作。

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2021年10月11日

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