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Posted by ブクログ
熱の分子運動論ではなくてはならないマクスウェルの統計的手法から、ボルツマンはH定理に行き着く。そこには、力学と確率論の融合に対するロシュミットの疑義があり、それをボルツマンはエルゴード定理によって乗り越えようとするが、実験が伴わないという弱点もわかっていている。
この間の紆余曲折を臨場感たっぷりに、体感することができる。本当は数式で追うべき内容で、ところどころ言葉でない方がわかるかもと思いつつも、前回読んだ時よりずっと面白かった。
付録の講演は、現代への警鐘。
まさかAIがこんなに発達し、スマホが跋扈する、便利だけの世界でない現代がやってくるとは、先生も思っていなかったとは思うけど。
恐怖心が、わかっていても危険に手を出させる元となる状況は、今なお続いている。
人間らしい生き方を見つめた学問のあり方と、さまざまな分野の融合の時代が来ているのかもしれない。
Posted by ブクログ
本書の完成前に著者が病気により逝去されたため、未完となった。上巻に続く内容として、近代原子論と熱の分子運動論に関する解説がなされており、この三章に加え、本書上下巻の原型となった講演、「科学と文明」が収められた形となっている。
朝永先生は晩年、熱現象の物理学への組み込みとそれに関わる分子運動論に熱心に取り組まれたという話であるが、これらを通して、物理学とは何かという事に対し、納得のいく解答を得ようと努力されたのではないか。
科学と文明においては、物理学の原罪について述べられている事が興味深い。知ってしまった事はもう取り消せない。現在の原発のような問題も、原爆の開発と同様に人間の本能に根ざす解決の難しい問題であろう。物理学の手法は自然を人為的に変える事によってベールの向こう側にあるものを見るのであるが、これからはこうした方法ではなく、自然をそのままに観察する事で自然法則を見出すような手法を持つ自然科学にある程度、席を譲る事になるだろうと述べている。これを読んで、寺田の物理学を連想した。要素還元法もやはり限界はあり、複雑なものを複雑なまま理解する手法を見出すのも必要になるのではないか。
物理とは何かという問題を通して、著者が提起された現代科学と人間社会の関わりについて、今こそ一人一人が考える時が来ていると感じた。
Posted by ブクログ
ボルツマンが分子論の立場に立って純粋に力学的な理論からどういうふうに熱学的な量を導くか非常に苦しんでいた。分子運動のエルゴード性については理解に自信がない。相空間で等エネルギー面上の運動について平均を取ることで、「長期のべ時間平均」を得る計算はミクロカノニカル分布を使った計算と同じだ。後者の計算はふつう等重率の原理から出てくるものでエルゴード定理とは関係がないとされる。ボルツマンが統計力学の基礎付けについて苦心したことというのは的外れだったのだろうか??
ボルツマンの良き理解者だったマクスウェルは早世し、信奉者だったプランクは一足遅かった(ボルツマンはロシュミットやマッハの厳しい批判をうけて最後はうつ病で自殺してしまった) 結局彼の理論は実験的な裏付けが得られなかった。著者は完全な理論はそれ自体が正しいかどうかテストする実験を提唱できるものだ、みたいなことを言ってて興味深い。
ボルツマンの理論について言えば、アインシュタインとかスモルコフスキイとかがブラウン運動について分子運動論に実験的な裏付けを与えたそうですが、それはちょうど彼の死のころのことだったそうだ。
Posted by ブクログ
本書を読んで良かったと思えたことは、物理学者が偉大な発見をするまでの経緯を知ることができたことである。分子論について論じられていたが、具体的に得た知見は以下のとおりである。?熱力学第二法則の数式化の苦労(エントロピーの概念の導入まで)を知った。 ?分子論の展開と熱の正体の解明(仮説を導入しその当否を実験によって検証する手法)に至る苦労を把握できた。本書を読むことで、物理学者の偉大さと同時に、その人の業績の積み重ねが今の物理学を作っているのだなということを垣間見ることができた。朝永博士の急逝によって本書が未完となったことは非常に残念だった。しかし朝永博士は他にも多くの著作を遺している。それらを今後も読んでいきたいと思った。
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