半日の放浪 高井有一自選短篇集

半日の放浪 高井有一自選短篇集

1,254円 (税込)

6pt

3.5

疎開先で入水した母の遺骸を凝っと見つめる、少年の目。二世帯住宅にするため、明日は家を取り壊すという日、嬉々とする妻をよそに、街に彷徨い出た初老の男の目。――戦争と母の自死を鮮烈に描いて文学的出発を告げた、芥川賞受賞作「北の河」、人も街も変質する世情への微妙な違和感を描く「半日の放浪」など、透徹した観察眼で昭和という時代を丸ごと凝視し続ける、高井有一の自選7短篇。

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半日の放浪 高井有一自選短篇集 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2009年10月04日

     これが母の消える三日前の事であった。それから二日,常と同じ生活があり,三日目,母は在郷の百姓から僅かの米を購った。そしてそれを布の袋に入れ,私の方に掲げて見せて言った。
    「このお米,どの位あるか判って」
    「二升くらい」
    「そうよ,二升。よく判ったわね」
     母の口から微笑が拡がり,暫く袋を弄んでいた...続きを読む

    0
    ネタバレ

    Posted by ブクログ 2021年04月30日

    北の河がほんとうに読んでよかった作品だった。言葉にならない部分を情景(東北の冷たい河)が補う。そういう意味で完璧なバランスの上に成り立っていたように思う。起こってしまったこと(戦争によるそれまでの生活の崩壊)をそういうものだと受け取れる15歳の僕と、これまでとは明らかに変わってしまったと考える母。こ...続きを読む

    0

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