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Posted by ブクログ
私は、『臨死体験研究読本―脳内幻覚説を徹底検証』を書くにあたって立花隆氏のこの本から、とくにその豊富なデータから多くを学んだ。その意味で、この本 が出版されていなければ、私自身が自分の研究をまとめることができたかどうか疑 わしいと思うほどだ。
立花氏の本を読んで何よりも感銘を受けたのは、「脳内現象」説にも「死後生命」 説にも偏らず、ジャーナリストの目で両者の説をあくまでも公平に、事実に即して 徹底的に追っていく姿勢だった。多くの研究者は、どちらかの説に傾いて、その立場に有利な事実や理論を集めて、不利な事実や理論は無視したり歪めたりする。こ れは人間の性(さが)だろう。
しかし立花氏のこの本にはそれがないのだ。その強靭な精神で事実を歪めずに、両方の説の可能性をとことん見据えようとする。それがこの本の最大の魅力だ。そ のためか読者は、どちらの立場に立つにせよ最後まで興味深く読める。
にもかかわらず彼は、最後の最後には「脳内現象」説に傾いていく。私は、自著の中で立花氏の説のいくつかを批判したが、もっとも大きな疑問は、なぜ立花氏は、多くの臨死体験者が体験後に生き方をプラスの方向に変えてしまうという事実に注目しなかったのかということだ。データしてはいくつかの箇所で触れていながら、 この問題を問題としてほとんど論じていないのだ。いや、否定的に触れた箇所が一箇所ある。臨死体験者が、体験から何かを学んだからといって、それが体験の事実性を語る証拠にはならないと論じているのだ。(この点は自著の最終章で批判した。)
かつて立花氏は『宇宙からの帰還 (中公文庫)』(中央公論社刊)によって宇宙飛行士の宇宙 体験後の精神変容をテーマにしている(私のサイトの覚醒・至高体験事例集にエド・ ミッチェルの事例を取り上げた)。そうした関心を持ちながらなぜ臨死体験では、 体験者の精神変容の意味を追求しなかったのだろうか。
おそらく立花氏に欠けているのは、宗教的なものの最も深いところにある魂のあ り方への関心や共感ではないだろうか。もし彼にそうした関心や共感があったなら、臨死体験者の魂の変容のなかに、宗教的なものの核心に通じるものを嗅ぎ取り、そこに積極的な意味を見出すことができたはずだ。
もう一つは、立花氏が「脳内現象」説か「死後生命」説か、精神か物質かという 二元論的な問題設定をほとんど何の疑問もなく前提としているということである。 私には、もしかしたら臨死体験者は、精神か物質かという二元論が無意味になるような世界を語っているのかも知れないと思える。そうした視点から見ないと臨死体 験が暗示する深い世界は捉えきれないと思う。(もっともこの問題を展開するのは 非常に難しく、私自身も自著のなかでは触れられなかった。)
いずれにせよ、彼のこの労作は、今では文庫本で気軽に読むことができ、あの時点での臨死体験研究の総覧として、その価値は失われないだろう。またこの本から、新たに魂に呼びかける何かを発見する人も多いに違いない。
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