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Posted by ブクログ
1939年作。「三文オペラ」より10年ほど後に書かれた、ブレヒトの代表作ということらしい。かつて『肝っ玉おっ母とその子どもたち』という和訳タイトルであったものの新訳。
舞台は17世紀の三十年戦争(宗教戦争)。父親のそれぞれ違う3人の子どものいる母親アンナは、商いをしながら戦場をさまよう。
読み物としてとても平易で、随所にユーモアも感じられて楽しい。しかしブレヒト独特の「作り方」によって、なかなか容易ではない作風が見られる。
私は先にブレヒト自身による論考、雑記等の本を読み彼の「叙事的演劇」という概念を何となく理解したからこの作品の特徴をいいうるのだが、全く予備知識のない読者ならこれを読んでもあまり面白くないかもしれない。
ブレヒトは観客が登場人物にあまりにも一貫して感情移入し、感動してしまうというようなロマン主義的な様式を破壊したかった。だから、アンナが三人の子どもを次々に喪っていくのに、彼女の悲嘆は前面に出てこず、むしろそれでも逞しく一人で生き抜いていくような力強さだけが一貫している。
アンナに泣き叫ばせれば観客を感動させることもできたのに、敢えてそんな場面を避け、淡々と「リアリスティックに」状況を描き続けるだけだ。
あまりつながりのないような場面場面を接続し、各状況間に断絶を配置することで、観客が一歩下がったところで自ら「考える」ことを望むブレヒトの手法「異化効果」は本作にも発揮されている。
こうした手法を突き詰めていくと確かに20世紀の「現代芸術」の典型的な様相を帯びていくのだが、ちょっと不思議に感じるのは、ブレヒトは純粋に芸術(演劇)のことだけを考えていたというより、相当はまりこんだ「マルクス主義」のプロレタリアート観に基づいて、こうしたステージに進んだという事実だ。
だが、エッセイでなく戯曲だけを見ているとそのような「マルクス主義くささ」は感じられない・
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