書店員のおすすめ
10代の少年少女たちの内面をこれでもかというほどエグく表し、ネットで話題騒然となったオムニバスマンガ、通称「空灰」。善意でやったことが裏目に出たり、本音と違う言葉をかけて誤解されたりと、色んなことが「うまくいかない」人たちの不器用さが描かれている。
おすすめは2巻の「こんなにたくさんの話したいことがある」。クラスで口下手の不破さんが、人の話を聞くのが上手い城田さんに「もっと不破さんの話が聞きたい」と言われて、口を開くシーンだ。「白い絵の具が足りなくても海に沈む夜空にもたれてるひびわれた茶色のお月様を笑うように星めらは…」と不破さんは意味も文脈もなく喋りまくる。一見異常なシーンなのだが、「せーので見上げた夜空には星なんてひとつもなくて」と言って、彼女が喋るのをやめると、二人の頭上ではお月様が輝いており、少女たちは清々しい笑顔を見せるのだ。
最後を読むまでハッピーエンドになるとも、バッドエンドになるとも予測がつかない「空灰」。良い意味での傷痕を、あなたの心に残してくれるはず。(書店員・らむ)