Posted by ブクログ
2013年07月03日
ゲーデルの不完全性定理と、チューリングの停止問題について、証明のディテールに立ち入ることなく、本質的な意味と歴史的な意義を分かりやすく伝えている。ゲーデル数の構成法について概略を述べつつ、「ゲーデルの証明は難解だ」と言い切ってくれるところが頼もしい。様相論理における□(必然性)と◇(可能性)のオペレ...続きを読むータを、□(証明可能)と◇(整合的である)のように読み替えることで、第二不完全性定理を10行程度で証明できるとする1994年のブロースの結果は、今まで知らなかったけど、とても興味深い。
あと、ゲーデルを語る上で欠かせない、1930年代の「論理主義」「形式主義」「直観主義」のイデオロギー闘争をあえて無視し、「ラッセルの希望を打ち砕いた」という表現にとどめたことは、著者のサイエンスライターとしての力量を際立たせていると思う。「ヒルベルトとの確執」という不毛な地雷原に焦点が当たることのないよう、ヒルベルトに言及する際は腫れ物に触れるがごとく慎重に徹しているところが、何とも愉快である。純粋数学者は、今でもヒルベルトの「形式主義」のシンパが大多数だし、ゲーデルの価値観を嫌う人も多いからね。(何を隠そう、私も「形式主義」のシンパなのだが…)