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後篇では、ドン・キホーテの狂気は大きく様変りする。ここでは、もはや彼は自らの狂気に欺かれることはない。旅籠は城ではなく旅籠に見え、田舎娘は粗野で醜い娘でしかない。ここにいるのは、自らの妄想にではなく、とりまく者たちに欺かれるドン・キホーテ、現実との相克に悩み思索する、懐疑的なドン・キホーテである。
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Posted by ブクログ
「無鉄砲な男が真の勇者になるのは、臆病者が真の勇気にたどりつくよりはるかに容易ですからの......少なすぎるカードで負けるよりは多すぎるカードで負けるべきじゃと申しあげたい。」(第十七章より) ここにきて本当にカッコいいドン・キホーテ。
アベジャネーダの贋作ドン・キホーテを経 て発表された真打ドン・キホーテの続篇。 著者セルバンデスは、徴兵で左腕を失うも 執念で創作し続けた点、敬愛する水木セン セに通ずるものを感じずにいられない。 出事村を旅立つドン・キホーテの狂気が盤 石であることに安堵した読者は多い筈だ。 しかし、これまで...続きを読むは「ドン・キホーテの狂 気と、人びと」であった構図が「人びとの 狂気の中にあるドン・キホーテな狂気」と いう構図へと鮮明に変化していることに気 づく。 傷夷後、徴税官となるも横領のかどで投獄 されたセルバンデスが失わなかったドン・ キホーテへの想いが立体的になる、そんな 続篇の幕開け。
後篇に入ってがらりと様相が変わる。ドン・キホーテはただの狂人ではなく、強靭な意思で狂人となることを選択した賢人に見え、サンチョの饒舌は止まるところを知らず、周囲はひたすら悪のりする。何よりセルバンテスの小説技法のメタメタ化は精緻を極める。
前編までの本がすでに出版されて、評判になっているという設定で後編の物語は始まる。物語の中に現実が混入する、込み入った入れ子構造になっている。
遍歴の騎士を「演じている」ドン・キホーテがこのセリフを言うところに面白みがある、気がする。 あと2冊か。 191 舞台の上と同じことが、この世の実生活においても起こっているのじゃ。現実の世界でも、ある者は皇帝を演じ、またある者は教皇になっている。要するに、舞台に登場させることのできるあらゆる役柄、...続きを読むあらゆる人物が、この世で演じられているのよ。
後編に入っても安定した面白さです。ドン・キホーテの理路整然とした語り口から、騎士道物語に話が進むといっきに狂気に陥る様に、読者の自分も登場人物たちも、驚く同時に興味を引かれます。 前編の内容が作中で本として出版されているという設定にも驚きました。メタ視点の見事さもここまできたかと。それと今回からサ...続きを読むンチョの知能指数が急上昇しているのがまたおかしいですね。
前篇から10年を経て書かれた後篇。とりあえず1巻め。 もともとドン・キホーテは、愁い顔の騎士ドン・キホーテの数奇な冒険をモーロ人がアラビア語で記録し。それをセルバンテスがスペイン語へ翻訳した、という体で描かれている。原著者であるモーロ人が感想を述べたり、あるいは翻訳者たるセルバンテスがそれにコメント...続きを読むしたりと、ある種のメタフィクション性を備えていた。 後篇では、この構造がさらに進行し複雑化している。つまり、当の「ドン・キホーテ 前篇」が物語中でも出版されていて、そして登場人物のうち何人かは作品を既に読みドン・キホーテたちの奇行を知っている。 そのような状況で、愁い顔の騎士改めライオンの騎士ドン・キホーテとその従士サンチョ・パンサは再び旅に出る。その時、いかなることが起こるのか。ドン・キホーテの狂気を事前に知り了解している人々は、騎士たちにどんな反応を示すのか。 前篇との最大の違いはここにある。
物語は前篇から1ヶ月後の話なのだが、後篇が出版されたのは実に10年後なんだとか。世間では既に前篇の話が出版され、ドンキホーテの(愉快な)活躍ぶりが広まっている上に前篇の矛盾点について語り出したりとメタフィクショナルな度合いは更に上昇。ドン・キホーテは相変わらず騎士道精神に囚われているものの良識的な面...続きを読むがクローズアップされ、サンチョは時に田舎者とは思えない含蓄に富んだ台詞を発したりする。読者はこれまでドン・キホーテの振る舞いに散々笑わせてもらってきたが、本当に笑われているのは読者なのかもしれないと思えてきた。
いやはや、長い。 前編が太めの文庫3冊、後編も同じぐらい太めの文庫3冊。 やはり、後編より前編の方がおもしろかった。後編も途中からどんどん引き込まれる感じにはなったけれど、途中退屈に感じるところも多々あり。 若干説教くさい内容が多くなり、小話は無くなった。 多分作者のいろいろな思いを託した小...続きを読む説となったのだろう。 ドン・キホーテは、前編の人気が出すぎて、後編の偽者が出回った。(続編として今も出版されているが、わたしは読んでいない)作者のセルバンテスはそのことに激怒し、本の中でもたびたびそのことが書かれている。 面白いのは、本の中で、ドン・キホーテ自身に読ませ、それを酷評させているところだ。 後編は、作者の機知やユーモアをひけらかせる感じがして、若干おなかいっぱいな感じがなくもなかったのですが、とはいえ、これほど長い小説で飽きさせずに読ませるところはすごい。 世界で一番多くの言語に翻訳されている小説らしいが、なるほどと思う。
前篇に引き続き、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの冒険が繰り広げられる。 前篇との最大の違いは、二人が多少なりともマトモ(?)な人間になっている点。ドン・キホーテは狂っているなりにも彼なりの論理があり、騎士道にかかわらないことに関しては博学にして明晰な頭脳をもつ、という性格が強化されており非常に存在...続きを読む感がある。 サンチョも、ただの愚か者ではなく、道化役へと進化して話を盛り上げる。 しかし、この頭のおかしな二人を周囲の人間が徹底的にからかい、嘲笑うという構図は前篇にもまして露骨で、本当に悪趣味な本である。 この点を抜きにすれば、ドン・キホーテ主従のテンポのいい会話などは実に楽しめるんだが・・・。 もしかしたら、頭の鈍い人間をバカにする人間こそ狂っている、という隠されたメッセージが潜んでいるのかもしれない。
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