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Posted by ブクログ
『経済学者のアタマの中』では、経済学が「お金儲けの学問」ではなく、人間や社会の仕組みを考えるための学問として描かれていたのが印象的だった。特にレモン市場の話は面白く、中古車だけでなく婚活市場や企業採用にも応用できると感じた。情報の非対称性によって「まともな人ほど離脱していく構造」が生まれるという視点は、現代社会の様々な場面に当てはまりそうだと思った。また、学歴や経験は能力そのものではなくシグナリングとして機能しているという説明にも納得感があった。
経済合理人についても印象が変わった。従来は「人間はそんな合理的に動かないだろう」というイメージを持っていたが、本書では「どんな価値観も否定せず、その人なりの選好を前提に考える」という説明がされており、むしろ多様性を尊重する考え方に近いと感じた。経済学は特定の生き方を押し付けず、選択によって生じるトレードオフやコストを可視化する学問なのだと思うようになった。
また、行動経済学や情報経済学が現代社会と非常に相性が良いことも印象に残った。デフォルト設定やナッジ、アンカリング、損失回避、サンクコスト、現状維持バイアスなど、人間の非合理さには一定のパターンがあり、それを前提として制度設計が行われている。企業年金の自動加入は望ましいナッジに見える一方、メルマガ登録などはスラッジ的にも感じられ、同じ仕組みでも使い方によって印象が変わることが興味深かった。エスカレーターの片側空けのように、一度浸透した社会規範を変える難しさにも行動経済学的な視点を感じた。
経済学ではトレードオフや機会費用を重視する点も重要だと思った。最近は「何かを得る」ことばかりに意識が向き、「その代わりに何を失うか」が軽視されがちな気がする。コロナ対策についても、感染対策だけでなく経済的困窮や別の健康被害とのバランスを考える必要があるという視点は非常に冷静だと感じた。また、因果関係と相関関係を区別することの重要性も繰り返し語られており、感情的な議論や単純な物語に流されないための視点として大切だと思った。
最後に印象に残ったのは、筆者自身が経済学的な考え方を生活にも落とし込んでいたことだった。ルール化された健康的な生活は一見自由が少なく見えるが、「人間は毎回合理的に選択できない」という前提に立つと非常に合理的でもある。選択肢が多すぎる現代だからこそ、あらかじめ決めておくことや習慣化することは、むしろ自分を助ける仕組みなのかもしれない。経済学は答えを与える学問というより、人間や社会を雑に理解しないための“思考のレンズ”なのだと感じた。
Posted by ブクログ
経済学とはお金儲けに関する学問じゃなくちゃんと世の中の役に立つことをしてますよ、という言ってみればよくある誤解だがあまりに初歩的なところから話を始めていて、ちゃんと初歩から誤解を解いているのでわかりやすい。
今の経済学のいろんな分野もさらっと触れてはいるが、解説はもっぱら行動経済学とその実践的応用に割り振られている。得する行動に自然と誘導するための「ナッジ」というものがキーワード。
行動経済学の知見は著者が実際にコロナ禍対策会議のメンバーだったときにも使われ、例えば「〇〇は禁止です」は反発を招くが「〇〇ならしていいです」なら受け入れられやすい、みたいな話が書いてある。そう、これも経済学なんですねえ。
Posted by ブクログ
我が国における行動経済学の第一人者である著者が、経済学は金儲けのための学問だという誤解を解き、経済学者は「世の中をよくするためにはどうすればよいのか」を日々考えているのだとして、経済学者は物事をどのように捉え、考え、行動しているのか、それによって世の中をどのようによくしていこうとしているのかを語っている。
経済学、特に行動経済学の考え方とそれが実際にどう社会の役に立っているのかについて、わかりやすく、よくまとまっている。コロナ禍での経済政策議論に携わっていた著者の経験談も興味深かった。
一方、どういうふうに経済学の研究というのが進められているのかといった経済学者の研究生活の面の掘り下げはちょっと浅く感じた。
Posted by ブクログ
公的年金制度が必要なのは、私的年金はレモン市場と同じだから=情報の非対称性があるため、加入したい人は長生きしそうと思っている人だけになる。
大学卒業を尊重するのはシグナリング理論によっている。
現代では、行動経済学や情報の経済学が主導している。
社会に役立ちたいと思っている人は経済学部を選ばない。
伝統的経済学では、幸せになる最適な手法を知っている事が前提。行動経済学は、知っていてもそれができない人間が前提。
トレードオフ、インセンティブ、内発的動機づけ、ネットワーク外部性などの要因による。
パレード最適は、分配の公平さは問わない。ロールズの基準は、最貧層の収入を基準とする。
人間には利他性や公平感があるが、主流派経済学では取り挙げられていない。
軽減税率よりも、一律給付のほうが理論的には公正。
情報の非対称性がある場合、経済学では情報を公開すればいいと考えるが、行動経済学ではデフォルトを変えるほうが効果がある、と考える。
周りが頑張っていると自分も頑張る、罰則がなくても周りに従う、これらは行動経済学によって解明できる。利他的な人間の特性で、行動を変えられる=新型コロナのときに役立った。
人間は合理的な意思決定ができない、ことを前提に考える。
一度築かれた社会規範を戻すのは難しい。
サンクコスト、保有効果、現状維持バイアス、参照点依存、損失回避、現在バイアス、予言の自己成就、極端回避性、ナッジと悪用されるスラッジ、など。
締切を細く設定して先延ばしを防止する。
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