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ある企業が他社と違うことをやって利益を出していたとしても、他社に真似されてしまえば違いはなくなり、利益もまたなくなってしまいます。にもかかわらず、強い企業は依然として強い。競争がある中で、なぜある企業は他社を上回る利益を持続的に生み出せているのか。 この大きな問いを前にして、著者の論考を一冊にまとめたものが本書です。
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Posted by ブクログ
この本を通して著者の言いたいことが一貫しており、読めば読むほど肉付けされていく感触が気持ちいい。 ただ働いているだけでは分からない"経営"とは何かの全てが詰まっている。
経営学者 楠木建が、経営戦略について述べたエッセイをまとめたもの。全体を「戦略」「経営」「対話」に分類してまとめている。説得力があり、とても勉強になった。「対話」で出てくる企業経営者の話も興味深い。 「「競合他社に対する違いをつくる」、ここに競争戦略の根本があります」p3 「競争戦略の要諦は業界...続きを読むの中で独自のポジションを確立することにある。言い換えれば、顧客からみて、「ベター」ではなく、「ディファレント」な存在になるということだ」p11 「(米キャピタル・グループ社長 マイク・ギトリン)「日本企業の変化は本物」だとしつつも、「すべての企業が変化しているわけではない。投資先選びで重要なのは特定の業種ではなく、個々の企業の経営者だ」とコメントしている(2024.2.27)」p13 「企業は3つの場で評価される。競争市場と資本市場と労働市場だ」p15 「19世紀のゴールドラッシュ時代の「金鉱掘るよりジーンズ売れ」は日陰戦略の古典的な例だ」p23 「需要サイドからイノベーションを考えると実は保守思想がものを言う。技術は時として非連続だが、顧客の需要は本質的に連続しているからだ」p31 「表面的には巣ごもり需要の追い風で伸びているように見えるのですが、それは本質ではありません。それ以前からずっと磨きをかけてきたアイリス・オーヤマの戦略に風をとらえる力があった。このことがより重要です」p40 「どの企業も、もともとは何かしらの事業を顧客に提供したくて組織をつくったはず。組織を存続するために事業を開始した会社は1つもない。しかし長く経営を続けていると、組織が事業をするための手段ではなくなり、組織を維持することが目的で、事業がその手段になるという逆転現象が起きやすくなります。それは結果的に組織をむしばんでいくのです(大山社長)」p47 「「全員から好かれている」は「誰からも愛されていない」に等しい」p67 「(経営者と担当者の違い)優れた競争戦略は組織的分業からは生まれない。戦略は「部署」ではなく「人」がつくるものだ。本社中枢の「経営戦略室」や「経営企画室」といった部署のスタッフはそもそも戦略を構想する任にない。戦略はあくまでもその事業の経営者がつくるもの。経営企画部門はそういう経営者がいるという前提で、経営者をサポートする「担当者」に過ぎない」p91 「独自のポジションを取るということは、他社がしないこと、できないことをやり、顧客にとって新しい選択肢を示すこと」p101 「「そう簡単には変わらないもの」、ここに「本質」の本質がある。ビジネスは変化の連続だ。しかし歴史に目を凝らすと、一貫して変わらないものが見えてくる」p118 「「納税」が企業の最大の社会貢献だというのが僕の考えです」p134 「(ノルウェー銀行インベストメント・マネジメント)「これからは適切で透明性のある税務を期待する」という宣言を出しています。実際に基準に合わない租税回避をしている7社を投資対象から外しています」p135 「経営者が長期利益を真剣に考えて突き詰めることが、結果的にESGやSDGsを満足させる最善の道だというのが僕の見解です」p136 「人間は目に見えるものに引っ張られがちなので、どんどん短期的な思考に流れていってしまう。そうならないよう、長期的な視点で的確に物事を判断していく役割を金融機関に果たしてもらいたいのです」p163 「「決める人」をトップに選ぶ。一旦決めた以上は、その人の好きなようにやってもらう。もし「この社長、まずいな」と思ったら、ほかの人に替えればいい。この割り切りが、日本ではできてません」p165 「経営は「人による」ということは本質的に科学ではない(自然科学の法則のようなもので判断や評価できない)」p166 「(商社での経験)グローバル化に必要なのは「グローバル人材」ではなくて事業経営者。すなわち、海外に出ていって、ゼロから商売を立ち上げる、もしくは商売丸ごと動かせる人の存在です。日本に限らず、この意味での経営人材はもっとも希少な経営資源です。日本企業のグローバル化の最大の障壁は、グローバル人材の不足ではなく、経営人材の不足にあります」p210 「経営丸ごと経験を得るという意味では、コンサルティング会社よりも、商社の方が適している」p212 「投資家がスタートアップ企業と出資契約を交わす際の雛形契約書を見ると、多くの場合、「1日も早くIPOしろ。できなかったら自分で自社株を買い取れ」とある。これではローンと変わらない。つまり、金融機関やVCは本質的なリスクを取りたがらない。その結果、起業家がリスクを取っている」p216 「(アメリカ企業との交渉)「日本人だからどうせ言ってもわからないだろう」というスタンスで来られるので、最初に戦わなければいけません。2年も3年も経ってしまうと、ただギャップが開いてしまうばかりで、信頼関係なんて作れませんから、早い段階で言いたいことをはっきり言う必要があります」p239 「日本人はイエス・ノーをはっきりさせないところに価値観がありますが、これは駄目なのですよ。はっきり言った方が向こうの連中にとって絶対にいい」p240 「不動産業界は昔からある商売です。特段の技術革新が起きる業界ではありません。一方で「ケモノ道」というか、業界に入らないと経営ノウハウがわからない奥深い世界でもあります」p240 「唯一わかっていたことは、資産は持たず、お客さんから手数料をもらう仲介業は決して潰れないこと。一方、資産を買うデベロッパーは潰れる」p242 「僕も自分のためにやるのだけれど、組織で成果を出すという発想で会社を組み立てようと思っていました。従業員にはそんな発想はなく、自分が稼ぐために従業員がいるという感覚。だから、これは楽勝だと思ったのです」p246 「会社はどうすれば大きくなれるのか。お客様ひいては社会に認められるから、会社は成長できるはずです。以前は「お客さんに時間を使いすぎると生産性が落ちるからやめろ」と平気で言っていましたが、「お客さんのために働くこと」を言葉として社内外に打ち出しました」p247 「不動産営業は若ければ若いほど数字がいいのです。理由は、不動産営業は行動力とお客さんとの接触時間で決まるからです。経験や知識よりも、お客さんと長く接する時間を作れる営業マンが強い。それは、データを取ると明らかです」p256 「これは不動産業界に限ったことではなく、どんなBtoCビジネスでも営業マンの仕事力は、出身大学の偏差値と反比例すると思います。頭のいい人は慇懃無礼だったりしますから。BtoBだったら逆で、相手に優秀であるというアピールが重要だから、偏差値は高い方が有利でしょう。BtoCは、自分がお客さんより下の立場にならないとだめです。お役さんはロジックで整然と説明する営業マンよりも、礼儀正しく感じがいい営業マンを好きになる。人に好きになってもらうと、自然と家も売れるのです(オープンハウス社長 荒井正昭)」p259 「(アクティビストにとっての良い投資対象)典型的に本業はあまりよろしくないんだけれども、過去に儲けた資産とかキャッシュがたんまりあって、株価はめちゃくちゃ安いというような会社ですね」p304 「「相乗効果」や「シナジー」といった言葉を連発する経営者はあまり信用しないことにしています。なぜなら、そういう人の頭の中は、戦略ストーリーが「組み合わせ問題」になっているからです(ストーリーになっていない)」p317 「(多くの人に見られることで生産性が向上)実験の被験者に選ばれて、常に「見られていること」それ自体がモチベーションを上げていたのです。この発見は「ホーソン効果」と名付けられました」p341
著者の本は、一貫した論理で、対談相手の経営者や事業、思考をトレースしていく展開。今回も楽しませていただきました。
色々な文体、色々な掲載元から集められた口語に近い、本音のような書物。どこからでも色んな角度で読めて、実になる。
長期的利益の本質こそが企業の社会的貢献のど真ん中。そのために、勝負できる土俵に資源を集中し、長期的利益を生み出す事業を作ること。 当たり前だけど、それを明確に言語化するのが難しい。どのエピソードにも納得させられるし、説得力があってとても学びが多かった。
企業の目的は長期利益を実現し、納税すること、長期利益を得るには持続的な競争優位が必要で、顧客価値めがけて、順列で並べてストーリーでつなげる、その中に、一見不合理で誰もやらないようなものが入っていることで、真似できない戦略になる。 買いたい、と思ってしまったら、高値で買う理由を双方がつけてしまう
新規の経営ノウハウもすぐ模倣され、ほとんどの事業領域がレッドオーシャン化する昨今において、自社の独自性と目的を戦略的に追求して長期利益を生み出し続けるための論理。 対概念などは少し難しかったが、アイリスオーヤマの競争戦略などは特徴的で面白かった。
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楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考
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