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Posted by ブクログ
うう~、いい小説だった。ずっと泣きそうになりながら読んでいた。
コロナ禍で大学生になった女の子のもとにある夜、あの「マリリン・モンロー」から電話がかかってくる。
最初は戸惑いながらも、少しずつマリリンとのおしゃべりを楽しめるようになる主人公と、イメージとは違う、静かで少し茶目っ気のあるモンローとのやわらかなやりとりがとてもよかったし、ずっと男によって作られたイメージ、男によって語られてきたマリリンが本当はどんな女声だったのか、生きていたらどんな俳優になって、どんな生き方をしていたのか。
もしかして彼女こそがフェミニズムの先駆者なのではないか。ずっと口を塞がれてきたマリリン・モンローに主人公が懸命に手を伸ばして、現代にも存在する女性差別に気づいていく話はあたたかさと甘さがあると同時に爽快で、あまりこういう読み味になる小説はなかった気がする。
マリリン・モンローのイメージがどれだけ彼女の実在からかけ離れていたのか、彼女が受けた屈辱を想像し、掘り返し、もっとあなたのことを教えて、私に伝えてという感情が行間からにじみ出る。『マリリン・トールド・ミー』。
同じように男に口を塞がれ、勝手なイメージを流布された女性はマリリンだけではない。今語られている彼女たちの姿は誰か物語ってきたのか。何が伝わり、何が伝わっていないのか。彼女たちの周囲にいた女性はどんな関係を築いていたのか。
問い直し、語り直されてほしい女性たちがいっぱいいる。
Posted by ブクログ
親の期待を背負って地方から東京の大学に進学したものの、コロナ禍で大学の2年間を棒に振り、それでもゼミでマリリンモンローのセックスシンボルとしてのイメージと本人の実際の行動から紐解いたフェミニストアイコンとしての人物像を紐解く研究をしていく。
後半は主人公杏奈の研究内容と、現実の大学生活と行き来する形で書かれて、興味のある分野だったので、とても面白かった。
特に印象に残った描写を記録のために2つ
▪️新木流星に強くつっこまれ、瀬戸杏奈は首をすくめて照れたように誤魔化し笑いをした。おかげで場の空気は、ほのぼのと和らいだものになった。
それを見て松島瑛子(2人のゼミの先生)は、こんなことを思っている。
ああ、日本にいるの何気ない会話でも、女子はこうやって小さくバカにされて、そのたびに笑顔を見せながら、謝ったり遠慮したり譲ったり、させられるものなんだ。
そのわきまえた仕草は骨にまで染み付いていて、女の子たちを知らず知らず侵食していく。女の子たちはおとなしくなっていく。飼い殺されていく。自信なんか持てるはずない。傍からみていてとても苦しそうなのに、苦しいことすら自覚できていない。….. (単行本P199)
▪️(場面)ワーホリについて調べた杏奈がお母さんにワーホリに行きたいと相談し、自分でできる限り調べて希望の持てる方法としてそうしたいと思っていることがわかった時、そして、自分でお金を貯めて自立しようとしていることがわかった時、援助はすると伝えるのと合わせて言った言葉。
「杏奈に、東京の大学に行きたかったけど親に反対されたこと、よく話してたじゃない?それをあんなが叶えてくれて嬉しかったよ。けど、もしそれが、重荷になってたら、ごめんね」
「杏奈には自立してほしい。でも人が自立するには、ものすごくたくさん、時間もお金もかかるものなの。杏奈はまだ、時間とお金をかけてもいい歳だよ。だってまだ子供だもん」(単行本P218〜)
Posted by ブクログ
「古い価値観・固定化されたイメージからの脱却を促す力が小説という形を通して自然と湧き上がってくる」と思った小説
内容は、コロナ禍に見舞われた大学生活の中、孤独を感じていた杏奈がとあるきっかけによってマリリンモンローという人間について触れていく話。
"マリリンモンローが時々でアドバイスをして、現代に生きる悩める学生を導いていく"、そんな展開になるのだと読む前は勝手に想像していたのだが、主人公である杏奈が実際にマリリンと会話をしているかのようなシーンはほんのわずかだったのは意外だった。しかしそのちょっとした出来事がきっかけで、パブリックイメージとしてのマリリンではなく、一人の人間としてのマリリンのことを自分自身で調べてどんどん知るようになり、言葉は交わせないが、まさに時代を超越したシスターフッドものの連帯感を味わうことができる。
コロナ禍を描いた小説としても読みごたえがあり、大学の様子やマスクなどの細かい描写、1年目、2年目とコロナ禍の様相が激しく変化していく中で杏奈が感じていることなど、あの時代・あの世代が奥底に詰め込んでいた違和感を一つひとつ実感のこもった文章で書かれているのが良かった。
私自身もマリリンモンローについては勝手に抱いていたパブリックイメージの印象で止まっていて、彼女の人生について調べようともしなかったので、まさに杏奈が電話で話した出来事のようなマリリンを知るきっかけがこの小説になった。古い価値観からの脱却、かつて低評価に甘んじてきた人々に新たな視点を与えることの大切さに気付かされる小説としてもたくさんの人に読んでもらいたいと感じた。
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小説・文芸
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