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この一冊で見渡す作品世界――。 若くして洞察に富むデビュー期の輝き、早すぎる晩年の作ににじむ哀切。 二十年でついえた作家としてのキャリアの中で、フィッツジェラルドが生み出した幾多の小説から、思い入れ深く訳してきた短篇を村上春樹が厳選。「エッセイ三部作」を加えたベスト十作を収録。
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Posted by ブクログ
本書はグレートギャツビーを読んだ後に読んだ。 フィッツジェラルドの大量に書いたとされるハッピーエンドストーリは読んだことがないけれど、どんなハッピーエンドなストーリーを書くのか興味深く感じるほど、ハッピーエンドでなく、読んだとの余韻(フィニッシュ)が奥深い。 男と女、恋、そして結婚・夫婦への時の流れ...続きを読むと心情の描写がとても心をを打つ。 リッチ・ボーイ、バビロンに帰る、冬の夢、メイデー、クレイジーサンデーは没入して読めたがほかの短編は没入しきれなかった。
素晴らしくよかった。 私のお気に入りは、圧倒的に「残り火」。 植物人間状態になった夫を献身的に世話し続けるロクサンヌ。「一日の殆んどの時間を夫の傍で過ごした。薬を与え、枕をなおし、あるいは話しかけたりした。人が見れば、頭の良い犬に話しかけているのかと錯覚したかもしれない。返答を求めるでも、理解を期待...続きを読むしているわけでもない。そこにあるものは、燃え尽きた残り火の中に微かな暖を求める、祈りにも似た想いだった」 この最後の一文が素晴らしすぎる。 なんで美しく、かつ的確な表現なんだろう。 このほかにも、「氷の宮殿」は、南部と北部ってこんなふうに違うんだなあと感じられてすごく面白かった。 「冬の夢」は、こんな風にほとばしる魅力で好きな人を虜にできる女の子いいな、私も最愛の人だけでいいからそうなればいいのに、と思いながら読んだ。 この外見と内面がリンクしたすさまじい美しさってどんなんなのだろうね。 「リッチ・ボーイ」はいかにもフィッツジェラルドっぽい(グレート・ギャッツビーみたいなこういう主人公は、私は全く好きではない。せめてもう少しうらぶれていないと共感できない)。 フィッツジェラルドの作品はどれもぱっと見は明るく楽しいなのに、根底には切なさや哀しみがある。孤独がある。 読んでいた時期、私はちょうど切なくて哀しい思いをしていたから余計に沁みた。 アメリカは好きじゃないし行ったこともないけど、アメリカの小説はたくさんよんでいるから、特に戦間期のアメリカの雰囲気にはとても馴染みを感じるようになっている気がする。 いつかはいかないとな。
大学生の時には全く良さが分からなかったフィツジェラルドにあらためて出合うことにしました。 村上春樹が選ぶ10の短編と、エッセイが3編収録されています。 基本的にどの話もお金持ちの坊ちゃん、嬢ちゃんのやり取りで、感情の振り幅も行動の振り幅も「えっ?」て言うようなもので、あまり感情移入しきれない。 し...続きを読むかし、「冬の夢」でも「バビロンに帰る」でも出てくる喪失には共感して「あー…」ってなる。 そうして読み終わった後に、少し重い気だるさと諦念が残る。 フィツジェラルドはどこかで「人生は失っていく過程だ」みたいなことを書いているらしいけれど、そうだったら、この一編一編は一つ失って、人生を一つ進む、成熟の物語かもしれないなあ。
多作であったフィッツジェラルドの短編とエッセイを10つ集めた一冊です。 分かっていたことではありますが、どの作品も薄暗い現実を描いています。もちろん、ハッピーエンドなんでありません。基本的に、かつての幸せや豊かさがもうそこにない人々の話です。かつての若さや美しさが失われてしまった人々の話です。 ...続きを読む中には、それでよかったんだよね、と声をかけたくなるような主人公もいます。「氷の宮殿」や「風の中の家族」などがそうでしょう。
学生時代、村上春樹さんの世界に少しでも触れたくて、繰り返し読んだフィッツジェラルド。世界大恐慌の前後のアメリカに合わせて、当時の「酒と薔薇の日々」のような、主人公たちの繁栄と衰退を描く。
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