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女は結婚するまで処女でいるべきか――なんて議論は過去のもの。だが処女の価値には、その時代の女性の地位やモラルの変遷が現れていた。性に開放的だった古代~平安、儒教の貞操観念が浸透した封建社会。純潔が尊ばれた大正から、出産を国に推奨された戦時下。未経験が恥だった80年代を経て、性交渉しない自由を得た令和へ。古今の文献から日本の性意識をあぶり出す画期的な性のクロニクル。(解説・花房観音)
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Posted by ブクログ
まず本のタイトルがすばらしい。みうらじゅんさんの本かと思いましたよ、最初は。 さらに表紙カバー挿画は、「東京女子高制服図鑑」の森伸之さんじゃありませんか!表紙の少女の服装をよく見ると、半そでの白いブラウスに紺色のスカート、くるぶし丈の白いソックスに黒の革靴という、少女(処女)のアイコン化としては王道...続きを読むのなかの王道。さすが森さん、よくわかっていらっしゃる。さらに、胸のふくらみと、ヒップのラインと、そして後ろを振り返った顔の表情とを同じ画面に描くなんて、顔の向きは逆だけど、菱川師宣筆の「見返り美人図」の技法ではないですか! ああ、森伸之さんのイラストに久しぶりに出会えたので少し舞い上がってしまい、肝心の酒井さんの作品のレビューになかなか行きつきませんね。すみません。 さて本書の中身はといえば、これは意外と、結果として日本人の精神史というか、思想史が忠実になぞられているのではありませんか?つまり外国人が日本人とは何か?という論文を書こうと思えば、本書を参考図書にすれば、かなり正確な日本人像に迫れるのでは? 馬鹿にしてはいけない。探偵ナイトスクープの「アホ・バカ分布図」を思い出してほしい。はじめは「アホ」と「バカ」の地理的境界はどこか?という“アホ”な依頼で調査がはじまった。するとアホとバカの間に「タワケ」が見つかり、さらに日本中の様々な「アホ」に類する言葉を徹底追求したら、アホと同じ意味の言葉が、かつて日本の中心だった京都を起点に日本列島を同心円状に周圏分布しているという学説を裏書きする大発見(?)につながったのだ。この本から同種の発見がもたらされてもおかしくはないと私は確信している(笑い)。 だが1つ余計なことを言えば、正直に言って、笑えるところが少ないんだよね。「もしや」と思って著者プロフィールを読むと、やっぱり東京都出身。 別に出身地でどうこう言うつもりはない。だが関西人が好きな、ツッコミを入れやすい書き方じゃないのがちょっと…。BSの通信教育講座で講義をまじめに聞くかのようで、読んでいてなんか疲れてしまう。酒井さんが性という正論や反論などの各論が渦巻くテーマだからこそ曲解や茶化されたりしないように一本筋を通して伝えようとしているのはわかる。でも関西人はこういうネタでこそ思いっきりツッコミながら読みたいものだ。鶴光師匠とまでは言わないけれど、みうらじゅんさんのように読者を巧みにくすぐってくるような小ネタというか、遊びの要素が入っていれば、もっとおもしろかったのにと思う。 一方で真面目な話もすると、過去から現在までの処女(童貞)を取り巻く状況を本書で俯瞰して私が思ったことは、自分が処女(童貞)であることの是非が、他人によって左右されているという状況は相変わらず続いているのでは?ということ。古くは家や世間体が、新しくは友人関係がその「他人」に当たるだろう。しかし現在はそれらの代わりにSNSの支配を受けているのではないか。SNSでの“いいね”を多く獲得することに価値基準を置く人であふれた今の時代は、自分の個性をどこからも束縛されずに完全に独立したスタンスで保とうとする処女や童貞にとってはまだまだ発展途上なのかもしれない。 つまり本書は、処女(童貞)論といいながら、人間がいかに周囲からの束縛から逃れ、意思のままに自己を保つことができるのかという哲学的要素も多分に含んでいる。その他、幸福論やジェンダー論なども含み、その「哲学」ゆえに、本書が表紙の装丁の見た目以上にフォーマルな印象を読者に与えるのだろう。 何年か前、アメリカ映画の「40歳の童貞男」を見た。もちろんエンタテインメントだから面白く見せる場面はあった。でも変にカリカチュアにせず、主人公を含めて誰も否定や卑下がされない。ほっこりとするラストまで1本の良質な作品に仕上がっていて、さすがアメリカ、童貞をテーマに日本人にこういう作り方はできないなと思った。 他方で、この本はエンタテインメントというよりは学術書というほうが近い。先に書いた内容に反するけれど、酒井さんの長所を生かすならば、変に笑いを求めず、今の酒井さんなりの路線で十分かもしれない。
おもしろい
処女って、ただしたことがない人ってだけじゃなくて「結婚しないで実家にいる人のこと」や平安時代の性交事情など日本における処女の歴史を海外での動きとも交えて知れて面白かった。
女性に是非読んでほしい作品! 本当にこんな時代があったの?と思うほどバカバカしいことを国が女性に求めていたり、 女性もそう信じて生涯を全うしたり、、 酒井順子さんの文章は真実をただ語るだけではなく、 そのどこかバカバカしさをシュールに描き、 独自の比べる対象や例えがとても分かりやすく記憶に残る。
このテーマで一冊仕上げるのがすごい。まさに女性しか書けない。処女の価値についての歴史的変遷を追いつつ、その意味性と重さを捉え直している。
処女の社会史です。 感想でも評価でもなく、ただ思ったことだけ書き連ね…… 本人がどう思うかより世間様がどう見るかが問題。そして男性優位の視線から判断されてきた処女性。 今更誰も気にしてねーよ って声も聞こえてきそうだけれど面白かった。 最初のヒトになるってのは男性からすると少しプレッシャー。でも...続きを読む言われる嬉しいかも。 ホンネで女性は『最初』なんて全く気にしてないのでしょうか? AVとか観るとインタヴューで「初めては何歳?」なんて訊いていたりするので、それなりにエッチ界では話題になりやすいネタなのでしょう。 ホントのことを答えているとは思いませんが。最近の子は進んでおるのねーとか思ったりはしてしまう。 童貞は捨てるもの 処女は失うもの…喪失 言葉にも差があります(…っても最近は処女も「捨てる」って言うのかも^^;) いつ頃からそうなったのかは不明ですけど、捨てると失うの差は日本人の感覚の違いだと感じます。 言葉がもし変わっていないのであれば、今でも古い日本の慣習は生きている部分があるのだと思いますが、処女にはなったことが無いので永遠に謎…ですな。
とても面白かった。 前半は大昔の話で、なんとなくぴんとこなかったが、だんだんと近代の話になると、思い当たるところもあって、なるほどの連続だった。 この本は単に処女の価値観を整理したものだけにとどまらず、時代時代の文学であったり文化についても言及をしていて、とても勉強になった。
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