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「私の書くものは随筆で、文字通り筆に随うまでの事で、物を書く前に、計画的に考えてみるという事を、私は、殆どした事がない。筆を動かしてみないと、考えは浮ばぬし、進展もしない……」という著者が展開したふかい思索の過程が本書である。読者は随所に自分で考えるためのヒントを発見するだろう。第二集の目次は、忠臣蔵、学問、荻生徂徠、弁明、ヒューマニズム、還暦、哲学、歴史、常識について、などが並ぶ。
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Posted by ブクログ
小林秀雄氏は、やはりとっつきにくい、何度も目を通すも、本書は流れがあってまだましであった。 文芸春秋に記載されたエッセイであるが、各項目は、流れをもっていて「考えるヒント」よりは、分かりやすかった。 気になったのは、次です。 ・喧嘩という言葉は、大石内蔵助の使っている言葉で、たかが喧嘩に過ぎぬ。...続きを読むと彼は、「浅野内匠頭家来口上」で明言している。 ・切腹という封建的処刑の方式は、今日の絞首刑より、それほど、野蛮なわけはなかった。内匠頭は首を討たれたのであって、腹をきったのではない。 ・内匠頭の処分は、裁決に将軍綱吉が口をきいたが為に、喧嘩両成敗という当時の法の情k式を全く無視した異例の仕儀となった。 ・赤穂浪士は感情の爆発というようなものではなく、確信された一思想の実践であった。それも、徒党の三分の二以上のものが、かつては、赤穂のような小藩にも関わらず、百石以上の知行取りであったという事は、当時の知識人教養人の選良によって行われたものといって過言ではない。 ・堀部安兵衛 「武士が立たぬ」、「一分が立たぬ」という観念が、彼に取り憑いたのである。 ・山鹿素行は、今日の言葉でいえば、本当に歴史というものを知りたいのなら、訓詁注釈の如き、補助概念に頼るなといったのだが、今日の歴史家は、生物学、心理学、社会学、等々の補助概念の多きに苦しんでいるのか、それとも、楽しんでいるのか。 ・戦国時代が終わり、朱子学が家康の文教政策として固定してから、実は、思想上の戦国時代は始まったと言える。 ・「見聞広く、事実に行わたり候を、学問と申事に候故、学問は歴史に極まり候事に候」これは、荻生徂徠の言葉である ・物を重んずるという考えは、徂徠の学問の根本にあった。「大学」の「格物致知」の格物とは、元来物来るの意であり、知を致す条件をなすものが格物であると解した。 ・本居宣長が、考えるという言葉を、どう弁じたかを言っておく。「物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる」 ・「謀」とは人の為に謀る。人に就いて謀るというように、主として、営為、処置、術を指す言葉だ。 ・「思」が精しくなり、委曲を尽くせば、「慮」となり、「慮」をもって事に処せば、かならず「謀」となる ・正しい学問は、「ただ物にゆく道」なのである。 ・「考へる」とは、何かをむかえる行為であり、その何かが、「物」なのだ。徂徠が「物ハ教ノ条件ナリ」というときも、同じ事をいっているのである。 ・一芸に通達したものは、自ら万事に就いて、その本質的なものを掴む ・大事なのは、彼の考え方の質であり、その集中の度合いである ・学問をする喜びが感じられないところに、学問に自律的価値があるかないかというような問題は無意味になるということには、もっと気がつかない ・蕃山は、官学の官吏登用手段としての学問の傾向を看破していたし、これに実際苦しみもした。そういう彼に官学で扱われている本が死物に映っていたことに間違いはない ・蕃山は、師はいないが、志の恩を思い喜ぶということはある、といった。 ・知りやすいと見えるものが、実は知りがたく、行い易いと思えるものが、実は最も行い難い。 ・論語集注によれば、天命とは天理の事だ。 ・孔子の思想は、古文献に徴した限り、宗教でもなければ、哲学でもない。彼には、どんな学説も発明した形跡はない。 ・自然に何か意味があるように、考えざるを得ないのは、私たちが、人生には、何か意味があると考えていればこそだ。 ・日常「常識」という言葉はずいぶん、でたらめに使われている。 ・常識という言葉は、もともと日本語ではないのです。英語のコモン・センスという言葉を訳したものです。 ・デカルトの方法とは、実際に試みなければ意味がない。この点が大事なのである。学問の方法上の開眼とは、原理的には驚くほど単純なものであった。 ・私たちが常識という言葉を作った以前、これに相当するどういう言葉をつかっていたのだろう。それは、「中庸」という言葉だったろうと思う。 目次 忠臣蔵Ⅰ 忠臣蔵Ⅱ 学問 徂徠 弁名 考えるという事 ヒューマニズム 還暦 天という言葉 哲学 天命を知るとは 歴史 常識について ISBN:9784167107024 出版社:文藝春秋 判型:文庫 ページ数:208ページ 定価:400円(本体) 発行年月日:1975年06月25日第1刷 発行年月日:2003年03月15日第21刷
この本は難しいです。 徂徠などの江戸の儒者や孔子などの思想を著者の視点で解説した内容であるが、思考の後をたどることも難しいと感じた。 著者が書く題材について、一定以上の知識がないと厳しいと思う。
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