成功者自身による成功譚は大変に面白い。そこに熱量や本人にしかわからない事実や感情が乗っかってくるからだ。NIKEの創業者フィル・ナイトの『シュー・ドッグ』、Google Mapのもととなったキーホールの共同創業者ビル・キルデイの『NEVER LOST AGAIN』、Apple共同創業者スティーブ・ウォズニアックの『アップルを創った怪物』などいくつもその例を挙げることができる。さらに本書は、著者の経験を軸にして、そこから得られたビジネスマン、特にプロダクトマネージャやプロダクトを届ける企業の経営者が持つべき資質や能力に関する洞察が融合されている。その点において、Intel創業者のアンディー・グローブの『パラノイアだけが生き残る』や『HIGH OUTPUT』にも比肩する本だと思う。
副題は”An Unorthodox Guide to Making Things Worth Making”~ 「真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック」とあるが、まさにここに自伝ではなくガイドとして読まれたいという著者の意志がこめられている。読まれるべき名著。