たまたまこの新書がポケットに入っている夜、たまたま扉を開けた店が懐かしいレコードをかけてくれるバーで、たまたまディスプレイされていたLPが大貫妙子のミニヨンだったのでターンテーブルに乗せてもらったら、たまたま後から入って来たお客さんがこの春に大学を退官される方で、たまたまかかっていた「突然の贈りもの
...続きを読む」に感激されて日本のポップスに心奪われた青春時代の思い出を恥ずかしくそうに語ってくれて、彼の友人の大貫妙子や竹内まりやのディレクターだったこの宮田さんのその後の人生(本書には書かれていない…)を知ることになりました。自分が何者であるか揺れていた時代に身体に刻み込まれた音楽は時を超え場所を超え、こんな小さなたまたまを創ってくれます。前著「ニッポン・ポップス・クロニクル」に比べ、もっと著者の半径3mに起こった極私的たまたまの備忘録なので熱さのカロリーは上がっています。著者の周りにいた実力あるミュージシャンのネットワークが浮上するためには女性シンガーが必要だった、という戦略にもハッとさせられました。ジャンルの興隆って小さな点とそれを取り巻くコミュニティの顕在化によって成し遂げられるものなのかもしれません。この歴史の物語には現代性も十分含まれていると思います。たまたまの夜、出会った大学の先生もこの時代のニッポンポップスってもっと世界に再発見されるべき力あるんだよな、と呟いていました。