司凍季の作品一覧
「司凍季」の「学園街の〈幽霊〉殺人事件」「悪魔の水槽密室~「金子みすゞ」殺人事件~」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
えっとこれ、なにげに凄いのじゃなかろうか…。
一尺屋シリーズの一編であるのだけれど、それまでの作品にあったミステリらしいミステリとしての枷をはずして、作者自身の方向へ歩き出しているように思われる。
(ここで、ミステリとはなんぞやとか、ミステリの地位がどうだとか、そんなことに拘るつもりはない)
それでいて、ミステリとしての出来もとても良い(物理的トリックとしては不満に思う向きもあるだろうが、たぶんそこはもうこの作品の本質ではない)。
近作の『地獄螢』を読むと、もうミステリからは離れていくのかな、という気もするのだが、ぜひこの作者ならではの「ミステリ」を書き続けてほしいものだ、と願う。
Posted by ブクログ
寂れた寒村を舞台としておどろおどろしい内容だが、文体が平易で大変読みやすいミステリ。
人形館を併設した旅館。村に住むのは過去の事件が祟って減少し現在は数十人。登場人物以外の住民の描写は無い。
27年前に行方不明となった父を探す新進作家が予約なしで宿泊する。人形館の人気のため旅館にはそれなりに客が来て存続している。不可解な事件、トリッキーで凄惨な事件が過去から現在へ。
ミルンから横溝、島田荘司。様ざまなミステリ要素をアクロバティックに積み上げた一作。探偵役は一人といえず悪く言えば素材寄せ集めのごった煮。よく言えば万華鏡か。基本は物理トリックで2時間サスペンス仕様の血の因習が絡んでいく。
駐在はいてもバス停は遠いらしいし郵便局がない(!)。空き家だらけとか、集落の様子はもう少し書いてほしかった。小売店が無くても郵便局はあるのが本来の国内仕様。ポストもないとすれば稀有。大体の物が手に入る隣町は歩いて行ける距離らしいので集落が正しいかも。
Posted by ブクログ
今まで読んだ司作品の中で、ベストの1冊。なぜ今までこのような書き方をしなかったのかと首を傾げたくなるぐらいの出来。
今回採用しているのは三人称叙述で、一尺屋シリーズの一人称叙述と違い、文体が格段に進歩していた。同じ三人称叙述の『首切り人魚~』と比べてもその違いは雲泥の差。
今まではストーリーを語るというよりもプロットを語る、つまりパズルを解いているプロセスを説明しているかのような味気ない文章だったが、この作品では、いわゆる「じらし」の手法に磨きがかかり、その抑制した文章には張り詰めた緊張感が一様にあった。
そして物語を彩る登場人物たちも、今までの諸作品には見られなかった個性があった。
主人公を務めるしがないルポライターの高野舜と元恋人で「羽室新報」の社員、稲葉菜月の二人と、ほとんどサブキャラクターでしかないが、印象深い上司の松岡を始めとして、一部記憶が無くなるという症状を持つ能面師三村、梨花の担任のサラリーマン教師米沢、幻覚を見るという同級生の間宮弓子、家庭内確執を隠す仮面家族、原嶋一家とその家に勤める家政婦や用務員ともども。
今までの作品では単に推理ゲームの駒の1つのようにしか語られなかった登場人物がそれぞれの過去にエピソードを孕ませることで深みを増したように思う。
そして1人の少女の死が、戦後の毒ガス実験に繋がっていくという物語の展開も事件の背後に隠された驚愕の事実という事ではなかなか秀逸だ。
いやあ、とにかくガラッと変わったというのが第一印象だ。
おまけに今回作者目指したホラーと推理の融合という目標は達成していると思う。実際、色が黒ずみ、痙攣を起こし、人相が変形する奇病は恐ろしかったし、羽室町という町が大きなお化け屋敷のように変わっていくのも読みながら手に汗握った。
しかし、しかしである。
後半は急ぎ過ぎた。
じわじわと雰囲気を盛り上げていった割には最後の真相が駆け足になってしまったようで、なんとも呆気ない(10歳の子供が犯人というのはちょっと肩肘張りすぎではないか)。
最後もぶつっと切れてしまったような終わり方で、エピローグが欲しかった。今までの司作品では島田作品ばりのエピローグが特徴的で、時にはお涙頂戴的なそのエピローグが蛇足に感じていたのに、今回は逆にそれがないがために消化不良の感がある。
前にも書いたように今回の文章は別人が書いたかのような出来映えである。
が、しかしこれはようやく作品として読むに耐える文章を得たという事に過ぎなく、今からが実質的なスタートラインだろう。次回もレベルを維持している事を期待する。