日本全国のサッカークラブの試合を観戦したり、クラブを取材したりした記録。取材した時点でJリーグに所属していたクラブは記録対象とはなっておらず、JFL以下のカテゴリーで戦っているクラブが対象となっている。
2つ感じたことがある。
1つは、サッカークラブが地域リーグからJリーグのクラブになることの難しさ
...続きを読むである。時間とお金と関係者の懸命で賢明な努力と、そして運がなければならない。この本に紹介されているクラブの多くは、もともとは都道府県リーグからスタートしている。県リーグ、地域リーグ、JFL。県リーグや地域リーグは2部制や3部制になっているケースが多いので、県リーグの一番下から始めたサッカークラブは、所属リーグでの昇格を相当数繰り返さないと、Jリーグまで到達しない。Jリーグに到達するには、サッカーが強いだけでもだめである。財政的基盤がしっかりしていないといけない、観客数がある程度の規模でなければならない、試合会場がしっかりとした競技場でなければならない、等、越えるべきハードルは多く高い。ただ、そのようにハードルが高いからこそやりがいがあり楽しいとも言える。サカつくというゲームがあるが、まさにこのような状況を模擬体験するようなゲームなのだろう。
もう1つは、企業のサッカーチームの意味合いである。Hondaやソニーなど、JFLに所属する、すなわち、全国レベルの強い企業チームはいくつかある。意味合い、とは、Hondaやソニーにとって、JFLのチームを保有している意味が何なのだろう、ということだ。企業の福利厚生的なレベルは超えている。お金も相当にかかるだろう。一方で宣伝効果は薄い、JFLの観客数は3ケタのことも多いようである。Jリーグを目指すわけでもない。企業スポーツがなければスポーツとして日本では成立しにくい競技もあると思う。例えばハンドボール、例えばカーリング、例えば長距離走(駅伝みたいなもの)などは、プロとしてチームが成立しそうにない。逆にサッカーや、例えば野球の場合には、プロスポーツとして成立しており、企業がそのスポーツ競技の振興の意味でやる理由や意味はない。ここは、著者も問題意識を持ち、取材をしたりしているが、あまり納得感のある答えはなかった。
というような事を考えながら読んだが、そんな事を考えずとも、単純に読み物として面白い。コアなサッカーファンには、お薦め。