嵐よういちの作品一覧
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Posted by ブクログ
戦時下のウクライナとその周辺国について知りたくて読書。
2022年バージョンに2025年に訪れた分を大幅加筆、追加されたことで3年間の時間の経過を比較することができる。
2025年大相撲九州場所でウクライナ出身の安青錦が優勝したことでウクライナが話題になったタイミング。
安青錦もロシアによるウクライナ侵略により翻弄され人生が変わった1人。
2022年と25年と比べると、悪い意味で戦争慣れしてしまい世界からウクライナが忘れされつつあるという現実がある。
戦時下という極めて緊張した場所を「旅人」が訪れるという視点はユニーク。報道とは違った切り口でリアルを感じらせてくれる。
戦争の被害だけでなく、人々の暮らしや希望、日常性を描くことで、戦争が破壊だけではない側面を掘り下げている。
戦地という重い題材ではあるが、旅の好奇心や探究心をベースに展開していく。
現地で出会った人たちが、ロシアを、プーチンを、ゼレンスキー大統領を、この侵略戦争をどう思って日々生活しているのか。
そんな生の証言が随所に織り込まれている。
それにしても、ウクライナのリゾート地・オデッサの意外な姿には驚かされた。
今回、著者が訪れたウクライナと周辺国はいずれも行ったことがない。
ポーランド以外は、国家試験の観光地理にも出題されない国々だ。
時より読む手を止めて調べながら読み進める。
未承認国家・沿ドニエストルとモルドバの問題は根深い。隣国とは争いが絶えないのは、世界中の共通項であるが、沿ドニエストルは地政学的、歴史的に複雑さが際立っている。
ロシアが世界中のトラブルメーカーであることは事実。そこへ双頭のように中国も肩を並べる。
その中国は、国家としては親露政策であるが、かつてソ連に支配された旧満州、中国東北3省の中国人でロシア人が好きという声は皆無。今でもロシアは残虐で約束をすぐに破るからまったく信用できないという話を耳にする。
後半のアルメニア・セヴァンの元ソ連の軍人という宿の主人(フルシチョフ似)の話が、ロシアの本質をよく表現していると思う。
ロシアだけではなく共産主義・独裁国家共通の本質と言って良い。
読み終わると、不謹慎かもしれないが、これらの国を旅してこの目で確かめたくなるから不思議だ。
読書時間:約1時間40分
Posted by ブクログ
世界中でのブチギレエピソードを知りたくて読書。
他とはテイストが異なる第1章 新疆ウイグル放浪記は、現状の「天井のない監獄ウイグル」のリアルに背筋がゾっとさせられる。
ブチギレエピソード集の最後を飾る第5章のペンション荒木物語は、人間模様が穏やかで感傷的なヒューマンストーリーとして読ませてくれる。
年代も訪れた国も様々だが、上手に構成されていて違和感なく読むことができる。
海外旅行経験が少ない人でも数々のブチギレエピソードは笑えるネタ満載。
著者とその旅仲間の実体験による旅の地雷エピソードを滑稽さに包み、ユーモラスに描き楽しませてくれる。
旅はトラブル続きでブチギレることの宝庫。それが、旅をおもしろくし、人生の豊かさを実感させてくれる。だから旅はやめられない。
読みながら過去の旅でのトラブルを思い出していた。
トラブル(Trouble)がトラベル(Travel)の語源であると聞いたことがある。
トラブルに遭った当時は、怒りや苦痛、嫌な思いをした。しかし、そのおかげで、今でも鮮明に覚えている。問題だらけだった旅ほど良い経験としてして記憶に刻まれている。
旅が人生を心豊かにしてくれ、大切なものを教えてくれ、自分にとっての幸せとはを再認識させてくれるのだろう。
本書は、旅好きならグイグイと巻き込まれるように一気に読める。
読書時間:約1時間55分
Posted by ブクログ
著者の嵐よういちさんは、30年以上前からバックパッカーとして世界の90ヵ国以上を旅しており、多数の著作がある旅行作家だ。本書のテーマは、ずばり「ブチギレ」。これまで旅してきた国々で遭遇した、腹の立つ出来事をオムニバス形式で紹介する。
会計待ちの列に颯爽と割り込んでくるウズベキスタン美女、機内で一斉に痰を吐き始めるインド人の集団、ホテルの喫煙所を地獄のように汚す中国人たち、ホーチミンのぼったくりタクシー、イスタンブールの靴磨き詐欺などなど…
最初の美女を除いて(笑)、毎回キレ散らかす嵐さんの文章は読んでいて痛快だ。自分の身に起きていたらとても笑ってなどいられないが、他人の体験談としてはこの上なく面白い。
行く先々で嫌な目に遭っても旅することをやめないのは、そこでしか得られない何かがあるのだろうと想像する。嵐さんが訪れる場所は、観光地として綺麗に整備されたところではなく、治安の悪い場所や、哀しい歴史の痕跡を色濃く残す場所、現在進行形で虐げられている人々が暮らす場所が多いようだ。
「新疆ウイグル放浪記」と題した第一章は、中国政府によるウイグル族への抑圧が続き、「天井のない監獄」と称される現地の様子を知ることができる貴重な資料だ。過去原稿を再編した他の章とは趣を異にしており、たぶん嵐さんはこれを出したくてこの本を創ったんだろうなと思う。
かといって、二章以降が面白くないわけではない。世界中のどこでも差別は存在していることを、身をもって教えてくれている。小学校で「差別はいけない」と習ったけれど、自分が差別される側になることにはまったく想像力が及んでおらず、エジプトのカイロでアラブ人の集団が嵐さんら日本人を執拗に差別してきたというエピソードを読んで、かなりショックを受けた。
あまり旅行に出かけない私が海外を旅することは、今後もおそらくないだろう。ただ、世界で何が起きているのか、貧しい暮らしを強いられ悪事に手を染めざるを得なかったり、虐げられ明日を生きる希望も失いそうでも懸命に生きている人々がいることに、想像力をはたらかせていたい。