あらすじ
戦時下のウクライナ(リビウ)、そしてロシア周辺国を訪れた前著『ウクライナに行ってきました』から約3年……。ロシアがウクライナに侵攻したことで始まった両国の戦争は、いまもなお続いている。
戦況は日々のニュースなどで報じられているが、いまウクライナの国民がどのような暮らしを送っているのか、そのことについて伝えるニュースは少ない。だったら、俺・嵐よういちが直接見てくるしかないだろう。
「海外ブラックロード」シリーズでおなじみの、旅行作家・嵐よういちが2025年7月、約3年ぶりにウクライナとその周辺諸国に潜入。首都キーウはロシア軍の大規模空爆の真っ最中、空襲警報が鳴り響く中、嵐よういちが戦争の爪痕を追ってキーウを駆け回る! 首都キーウの暮らし、ロシア軍の爆撃によって崩壊した共同住宅、ロシア軍による虐殺が行われた村、そして東欧屈指のリゾート地・オデッサの今……。前著『ウクライナに行ってきました』をベースに、内容を大幅アップデート! 嵐よういちがウクライナのリアルを伝える!
※本書は2023 年1 月に小社より発売された『ウクライナに行ってきた』を大幅に加筆修正のうえ、文庫化したものです。
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Posted by ブクログ
戦時下のウクライナとその周辺国について知りたくて読書。
2022年バージョンに2025年に訪れた分を大幅加筆、追加されたことで3年間の時間の経過を比較することができる。
2025年大相撲九州場所でウクライナ出身の安青錦が優勝したことでウクライナが話題になったタイミング。
安青錦もロシアによるウクライナ侵略により翻弄され人生が変わった1人。
2022年と25年と比べると、悪い意味で戦争慣れしてしまい世界からウクライナが忘れされつつあるという現実がある。
戦時下という極めて緊張した場所を「旅人」が訪れるという視点はユニーク。報道とは違った切り口でリアルを感じらせてくれる。
戦争の被害だけでなく、人々の暮らしや希望、日常性を描くことで、戦争が破壊だけではない側面を掘り下げている。
戦地という重い題材ではあるが、旅の好奇心や探究心をベースに展開していく。
現地で出会った人たちが、ロシアを、プーチンを、ゼレンスキー大統領を、この侵略戦争をどう思って日々生活しているのか。
そんな生の証言が随所に織り込まれている。
それにしても、ウクライナのリゾート地・オデッサの意外な姿には驚かされた。
今回、著者が訪れたウクライナと周辺国はいずれも行ったことがない。
ポーランド以外は、国家試験の観光地理にも出題されない国々だ。
時より読む手を止めて調べながら読み進める。
未承認国家・沿ドニエストルとモルドバの問題は根深い。隣国とは争いが絶えないのは、世界中の共通項であるが、沿ドニエストルは地政学的、歴史的に複雑さが際立っている。
ロシアが世界中のトラブルメーカーであることは事実。そこへ双頭のように中国も肩を並べる。
その中国は、国家としては親露政策であるが、かつてソ連に支配された旧満州、中国東北3省の中国人でロシア人が好きという声は皆無。今でもロシアは残虐で約束をすぐに破るからまったく信用できないという話を耳にする。
後半のアルメニア・セヴァンの元ソ連の軍人という宿の主人(フルシチョフ似)の話が、ロシアの本質をよく表現していると思う。
ロシアだけではなく共産主義・独裁国家共通の本質と言って良い。
読み終わると、不謹慎かもしれないが、これらの国を旅してこの目で確かめたくなるから不思議だ。
読書時間:約1時間40分