作品一覧

  • シリアの家族

    シリアの家族

    小説・文芸

    4.7
    1巻2,420円 (税込)
    第23回開高健ノンフィクション賞受賞作  選考委員大絶賛!  書き手自身を取り巻く「人間」を、シリアの政治と歴史への深い理解とともに厚みをもって描ききった。 加藤陽子(東京大学教授・歴史学者)  大家族の幸せな記憶、その一瞬の光芒が眼前に浮かんできそうだ。名作である。 姜尚中(政治学者)  もはや言葉にすらできぬ過酷な日常を現実として生きた/生き続ける女性がいる。 藤沢 周(作家)  世界が抱える矛盾を独自の視点で描ききった秀作。 堀川惠子(ノンフィクション作家)  秘密警察も移民となったシリア人も政府軍兵士もイラン軍兵士も、すべて等身大の人間として描かれている。 森 達也(映画監督・作家) ※五十音順/選評より 風土に根差して生きる人々を撮り続ける著者は、シリアの沙漠で総勢70名という大家族アブドゥルラティーフ一家と出会い、その十二男、ラドワンと恋に落ちる。 やがて「アラブの春」から始まるシリア内戦に巻き込まれ、ラドワンは徴兵され、六男サーメルは政治犯として逮捕される。一家は故郷パルミラを追われ、難民として散り散りになってしまう。 脱走兵としてヨルダンに逃れたラドワンと結婚し、「シリアの家族」の一員となった著者は、異郷に生きる難民たちの取材を始める。 難民となりトルコで暮らして5年。一家の長である義父・ガーセムが、故郷に帰る夢を叶えることなく永眠した。アブドゥルラティーフ家の故郷パルミラの今を見たい・・・・・・。著者は11年ぶりにシリアに向かい、秘密警察の監視や親族による軟禁をくぐり抜け、かつて一家が暮らした家にたどり着く。 命がけの取材から帰還した著者を待ち受けていたのは、夫ラドワンの「第二夫人を娶りたい」という驚きの一言だった・・・・・・。 2024年12月、生きて故郷の土を踏むことはないと思っていたラドワン、そして多くのシリア難民に転機が訪れる。半世紀以上にわたって独裁を続けてきたアサド政権が崩壊したのだ。 政権崩壊から8日後、著者はラドワンと長男と共にシリアに入る。逮捕されたサーメルの消息を求め、「人間虐殺の場」と呼ばれたサイドナヤ刑務所を訪れる。その現場で目にしたもの、そして数少ない生存者が語った言葉は衝撃的なものだった。 激動のシリアを生きた市井の人々の、等身大の姿を描くノンフィクション。 小松由佳(こまつ ゆか) ドキュメンタリー写真家。1982年、秋田県生まれ。2006年、世界第2位の高峰K2(8611m/パキスタン)に日本人女性として初めて登頂し、植村直己冒険賞を受賞。風土に根差した人間の営みに惹かれ、草原や沙漠を旅しながら写真家を志す。12年からシリア内戦・難民を取材。著書に『人間の土地へ』(20年 集英社インターナショナル)など。日本写真家協会会員。
  • 人間の土地へ

    人間の土地へ

    ビジネス・実用

    4.3
    1巻1,980円 (税込)
    世界第2の高峰K2に日本人女性として初めて登頂した小松由佳。標高8200メートルでビバークを余儀なくされた小松は、命からがら下山し、自分が大きな時間の流れの中で生かされているにすぎないと知る。シリア沙漠で出会った半遊牧民の男性、ラドワンと恋に落ち、やがて彼の大家族の一員として受け入れられる。平和だったシリアにも「アラブの春」の波は訪れ、百頭のラクダと共に長閑に暮らしていた一家も、否応なく内戦に巻き込まれていく。徴兵により政府軍兵士となったラドワンだが、同胞に銃は向けられないと軍を脱走し、難民となる。しかし安全を手にしたはずのヨルダンで、難民としての境遇に悩み、再び戦場であるシリアに自らの生きる意味を求めようとする。二人の目を通し、戦場を内側から描いたノンフィクション。

ユーザーレビュー

  • シリアの家族

    Posted by ブクログ

    「人間の土地へ」を読んで感銘を受けたので、その後のシリアの情勢も気になり、アサド政権が崩壊した時も小松さんのことを思い出していた。
    少し読むのが遅れたが、今回もこの本を読まなければ知らなかった、わからなかったことがいっぱいあって、よくぞ書いてくださったと思う。ただの?ノンフィクションでなく、自分のことも書いておられるので、遠い世界がグッと近く感じられる。
    全く無知の私がいうのもなんだが、いつまで続くんだと思われた独裁政権があっという間に崩壊したのは驚きだった。2度と足を踏み入れられないと思われていた故郷に戻れたシリアのご家族を通して、そのほかのシリアの人々の喜びも伝わってくる。インフラも街全体も自宅も崩壊した状態から始めなければいけないし、政権も安定しないし、まだまだ苦労が続くだろうが、秘密警察や密告に怯えなければいけない日々から解放されて、本当に良かった。

    2年後には解放されていると想像もできなかった2022年単独でシリアに入国され、パルミラに向かわれた第五章は、こんな言い方は失礼かもしれないがスリリングで、読み物としてすごく惹きつけられた。

    小さな船で密入国を試み、失敗しても何度も試み、言葉も知らない国で生活を再建しようとする難民の逞しさ、力強さに、人間って強いものだと力づけられる。家族間、親族間の濃厚なつながりは今の一般的な日本人には想像がつかない。

    そうするしかすべないから仕方なくとはいえ、平和に暮らしている国の人は、精神的にも肉体的にももっともっと弱いのではないか。
    日本に生まれたから平和で幸せといった日々が、この先も続くのか。自分は難民になんかなるはずがないなんてことが言えるのか。そんなことも考えた。
    政権批判しただけで、連行され、拘束され、拷問され、殺害されるなんてことは絶対に絶対にイヤなので、できるうちにダメなものはダメとしっかり抵抗しなければいけないと改めて思った。

    0
    2026年09月05日
  • シリアの家族

    Posted by ブクログ

    作品ももちろん素晴らしいけど、著者のこの作品を書くための態度(当然この本に書かれている)が恐れ入りましたといった感じ
    この著者の名前「小松由佳」は自分の記憶に最高のライターとして永久にとどまり続けるだろう

    0
    2026年07月22日
  • シリアの家族

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前回作では、登山家としての姿から、土地に深く根を下ろした人々の生活に魅力されていく姿が描かれていた。シリアの沙漠に住むベドウィンとその流れを汲むアブドゥルラティーフ一家と出会い、アラブ民族やイスラム教徒との文化的違いに直面しながら、人々の生活や想いを描いていて、異なる文化や宗教に関して感じることが多くあった。
    一方で今作は、読み進めるのが躊躇われる、正に筆舌に尽くしがたいようなアサド政権下の蛮行も描かれていた。
    難民としてフランスまで陸路で逃れ、密航船でドーバー海峡を渡ってイギリスへ逃れることを待ち望む人たち。著者がクルーズ船で数時間で渡れてしまう海を、彼らが大金を支払って命がけの航海を強いられる理由は、ただシリア人であるから。つい数日前に談笑した人々が、冷たい海で命を落とす現実。
    当初、著者が惹かれて写真に収めようとしたものは、政局の不安定化とともに違うものを浮かび上がらせていく。故郷とは、国籍とは、人が生きる目的とは。
    幼い子どもたちを預けてアサド政権下のシリアに取材に入り、秘密警察の監視下に置かれながら、許されるか許されないかのギリギリの交渉と撮影を行う姿からは、写真家ともジャーナリストともまた違う、何かに突き動かされ、追い求めずにはいられない差し迫るような熱情を覚える。
    夫であるラドワンから見たシリアとその人々、家族への想いには、その土地で生まれ育ち、家族が住む故郷を離れ、難民や兵士として生きた経験をした者でなければ理解できないであろう心情もある。
    シリアへ帰ろうと心に決めたであろう夫と、著者はこれからどんな人生を歩むのだろうか。

    0
    2026年07月22日
  • シリアの家族

    Posted by ブクログ

    あらゆる角度からシリアという国と日本を照らす作品
    戦争や独裁政権の悲惨さ恐怖
    シリアという国の文化や歴史
    日本との違い
    家族をベースに精度高く描き出す
    傑作

    0
    2026年07月17日
  • シリアの家族

    Posted by ブクログ

    新聞の書評欄で知った本。
    最初は、厚さに躊躇したけれど、無用な心配だった。写真家として活動を始めた筆者が、内戦前のシリアで出会った家族。その12男と恋に落ち結婚。筆者の目から見たシリアの14年間を描く。
    しっかりした文章、丁寧な背景の説明、時にユーモアを感じさせる夫とのやりとりに、シリアについて無知だった私でも読み切ることができた。そして、今までニュースでしか知らなかった単語(シリア、アサド政権、アレッポ、ヒズボラ、IS)が何を示していたのか理解できた。
    70年幸せに生きてきたガーセムの様なことが、もし自分におきたら‥と考えると本当に怖いと思う。理不尽だと思う。
    退避勧告を受けながらパルミラに向かった小松さんの信念の強さに驚くとともに、無事でよかったとつくづく思った。と、同時に大使館の仕事も大変だと思った。派遣先の国による差が大きそう。
    サイドナヤ刑務所の章はなぜ人はここまで残酷になれるのかと思い、学生時代に習った刑務官と囚人の実験を思い出した。
    写真を踏めないくだりも、私は小松さんの気持ちが理解できるけれど、立場が変わったら理解できなくなるのかもしれない。
    とても勉強になる本だった。
    これからは、シリアのニュースを関心を持って見られそうだ。

    0
    2026年07月13日

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