トランプ、プーチン、習近平、ゼレンスキー、ヨーロッパの極右、BRICS、第三世界などの様々な異なる思惑、毎日のニュースを見ているだけでは分からない時代の流れや行動原理が、著名な人物へのインタビューとして大変わかりやすく描かれていた。
この一冊があれば冷戦終結から2026年の今日までの世界の流れを把握することができるだろう。
我々日本人はアメリカの民主主義の顔しか知らない。大手メディアの流すニュースは西や東海岸の成功したリベラルな人々によるもので中西部の人々の生活や思いを知らない。だから初めてトランプが当選した時も再選した時も驚いたが、それは単に我々日本人がその内情を知らなかったに過ぎず、今のアメリカではそれがメインストリームなのかもしれない。
そんな日本人の知らないロシア、中国、ヨーロッパ極右などの思想などを公平な視点で教えてくれる。
かつて力のあった者達が新興勢力に押され衰えていく段階で、失地回復としての行動原理に説明ができるものが多く、目から鱗だった。
世界は常に均衡を取ろうと、ある一方向に急激に流れが向かい過ぎると反対の流れが自然と生まれる。
冷戦終結時に「歴史の終わり」とされ、民主主義が人類の統治の最終形になると説き、西側の勝利で終わり、アメリカ一強が続くと思われていたがまたしても群雄割拠の新たな勢力図に塗り替えられていくのだろう。
我々はまさに「その力こそが正義」という歴史の渦中にいるのだ。
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ツァイトガイスト(時代精神)と呼ぶべき時代の精神
多くのメトロノームを一斉に起動させると最初はバラバラだが時間と共に同調してリズムが揃っていく。同期現象、シンクロ現象
万物は共鳴する。異なる国に暮らしていても相互に作用し合いメトロノームのように同調し、一つの時代潮流(トレンドライン)を形成する
プーチン、習近平、トランプを突き動かしているのは失地回復(レコンキスタ)
強権指導者(ストロングマン)
プロローグ 「警察官」の退却/
アメリカは世界の警察ではない、我々の力だけで全ての悪を正すことは不可能だ。オバマの2013/9のシリアに向けた演説で、超大国アメリカが退却モードにあると捉え、中ロが南シナ海埋め立てやウクライナ南部のクリミナ併合を行った。
第1章 覇者の驕り──「無敵」から「Gゼロ」へ/
歴史の終わり
WW2でファシズムを、冷戦で共産主義に勝利したリベラルな民主主義は人類の統治の最終形で歴史における思想上の終点
ネオコンサバティズ新保守主義 国際社会の同意がなくとも自由と民主主義のためなら、アメリカ単独で行動し軍事力を行使することも厭わない
テロを根絶するには世界を民主化する必要がある。過激思想を醸成する土壌を取り除き自由を育む新たな土壌と入れ替え独裁を倒し民主主義を作る必要がある。独裁を倒すためなら武力行為も辞さない
リベラル帝国主義 多国間協調で国際的な合意を取り付けた上で行動することを好む
アメリカは人類を進歩に導く例外の国とみなすのは諸刃の剣
他国の文化や宗教に配慮せずに独善を押し付ける可能性がある
スンニ派 フセイン 2014年 イスラム国IS
シーア派
ダグラスルート 私たちはアフガンに関する基本的な理解を欠いていた。人口構成は?経済のエンジンは?100億ドルの資金でアフガンで何かやるつもりなのか?
独裁者を追放し民主主義体制への転換を目指すというのは、主権国家征服の試みに等しい
市民的自由や民主主義の伝統を持たない国に西洋の思想を押し付けても、土地に合わない作物を植えてもうまく育たないのと同じようにうまくいかない。
イアンブレマー G0 主導国なき世界 どの国も国内の問題に足を取られ国外における責務を積極的に果たそうとしないために結果的に弱肉強食のジャングルの掟が罷り通る世界になった
ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンにはソ連の残した核兵器が大量に残されていたが1991年のブダペスト覚書で核兵器を引き渡せば主権領土を尊重して武力行使をしないと約束した。その20年後の2022年にクリミア併合
ノーマンズランド 主なき荒れ野
イギリスのEU脱退、ヨーロッパのポピュリズム、アフガンからの米軍撤退、泥沼化するシリア内戦、ミャンマー軍事クーデター
G0は新しい秩序が生まれるまでの過渡期であり、不安定な地政学的な後退期
第2章 「格差」の超大国──アメリカを蝕む病/
上位1%の超富裕層国富の30%を占有する
格差への不満は左右を問わず煽動家が登場する余地を生む
第3章 リバンチズム──「大ロシア」再興の野望 /
シュタージ
KGB
プーチン 東ドイツ ザクセン ドレスデンに勤務
冷戦期の世界を二分していたアメリカとソ連は対立しながらも対等の立場から両国と世界の安定に責任を持つ。
フリーダムアジェンダ フセインの独裁体制を打倒してイラクを民主国家に作り替えるのを危険視した
色の革命
2003年 グルジア 現ジョージアのバラ革命
2004年 ウクライナ オレンジ革命
2007年 ミュンヘン安全保障会議 一極世界を批判
NATO
1990 統一ドイツ
1999 チェコ、ハンガリー、ポーランド
2004 バルト3国などの7カ国
ソ連が東欧から立ち去った後アメリカがドン底状態のロシアに押し付けた秩序。かつての勢力圏が次々と西側の陣地に塗り変わった
グルジアとウクライナのNATO加盟承認はロシアへの宣戦布告に等しいと考えメルケルは反対した
国家消滅と再建 1989冷戦終結、1991 ソ連崩壊
米欧と協力模索 2000プーチン大統領就任
米欧と対立 2007NATO東方拡大を批判、2008グルジア侵攻
失地回復 2014 ソチ五輪、ウクライナクリミア併合、2015 シリア軍事介入、2018 サッカーワールドカップロシア大会 2022 ウクライナ侵攻
ピョートル1世に自らを重ねる
第4章 百年国恥──中華民族の偉大な復興 /
洋の東西を問わず政治とは利害調整でおる。権力を目指す者は各集団の力学を把握し均衡に腐心する
文化大革命で四回投獄され農村で農作業をする下放運動で15〜22まで働いた
2013年1月 南方週末では憲政の夢の社説で言論、出版、集会、結社、行進やデモの自由を主張したが弾圧を受けた
第5章 「南」の逆襲──BRICSの論理と心理 /
ヨーロッパ諸国は欧州の問題こそ世界の問題であり、南の問題は自分たちの問題ではないという発想から脱却しなくてはならない。新型コロナのワクチンの配布に先進国と発展途上国とで差があり、命の格差がある
南の阻害感
アメリカはロシアに制裁を科して、キャスティングボードを握るグローバルサウスにも加えるように求めたが、ロシアのエネルギーに頼っている国々であり関わりたくないという言い分。
「相手が誰であれ名指しで非難し恥をかかせ、孤立させようとしても望ましい結果をもたらさない。そうした向き合い方は逆に態度を硬化させ建設的な対処法になり得ない」
南アフリカのスークラルが、ロシアのウクライナ侵略行為に対してなぜ西側と一緒にロシア非難に加わらずに決議案に棄権票を投じるのか、に対する回答。89年の冷戦終結後にNATOを拡大しないと言質をソ連側に与えていたのに約束を違えて東方拡大した事にも大局的に考えて一因はある。
BRICSは権力の再配分を目指す。
既得権を握っている者は新参者にそれを譲ろうとしない。権力の上座にいる人を追い出そうというのではなくテーブルを広げ椅子を増やすように求めているだけだ
第6章 白人の焦燥──「人種置換」の世界観 /
1619 黒人奴隷が初めてアメリカ大陸に連れてこられた
2045年には白人は半数を割り人種的少数派に転落すると予測される
1965 移民法改正ビザの発行をヨーロッパ出身者への優遇枠をなくし、アジアや中南米からの大量移民に道を開いた
ポリティカル コレクトネス 人種、性別ら性的指向に関する差別偏見を避けるために言動に気をつけること
かつて、白人、アングロサクソン(イギリス系)、プロテスタントのワスプWASP
大量の移住は大量の敵対心を生み出す。よそ者に対する恐怖心は最も本能的な人間の反応
政治や経済界の支配集団が少数にとどまる「マジョリティマイノリティ」
多様性の中の統一「エ・プルリズム・ウヌム」
ドイツ 最近の世論調査でAfDの支持率は最大29%に達し、メルツ氏率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の約22%を上回っている
エコーチェンバー 閉鎖空間で互いに反響し増幅しながら共振し時空を超えて同期していく
第7章 SNSと情報工作──民主主義の新たな脅威 /
クロスポリネーション 他家受粉
本来植物は自身の個体に受粉するが風や虫によって花粉が運ばれて別の個体に付着して受精する事
SNSでグローバルに展開した
自由より統制、民主主義より権威主義を志向する者たちのレコンキスタ
個人の権利を重んじる民主主義は西側の価値観に基づく政体。ロシアでは中世の農奴制に始まり長らく個人が国家に従属してきた。西側の価値観は自分たちの伝統を破壊しロシアの偉大さを否定する悪。全権力を指導者へ
ジョージオーウェル 全体主義を鋭く批判した
第8章 「警察官」の犯罪──時代遅れの戦後秩序/
リヒテンシュタイン ウェナウェザー
安保理決議と異なり中小国の多い総会の決議には限界があることは十分承知している。それでも特権乱用に異を唱え説明責任を果たすよう粘り強く働きかけることで拒否権の正当性や影響力を削ぐことはできるのではないか?
そもそも普通の人にとって安保理の決議か総会の決議かなんて大した問題ではない。大切なのは巨大な危機に対して誰かが何かを決めるかどうかなんだ
中国 腰の低い韜光養晦から急速に存在感が高まった
第9章 逆流する歴史──よみがえる伝統主義 /
冷戦終結後に歴史の終わりでフランシスフクヤマがリベラルな民主主義が人類の統治の最終形になると説き、西側の勝利で終わったはずだった。冷戦終結から35年、アメリカ主導で築き上げてきた国際秩序を塗り替え新秩序の形成を狙う権威主義、独裁国家による反米の枢軸の中ロ朝
都市に対する農村の、エリートに対する大衆の、ウォークに対する常識の、自由陣営の店子(同盟国)に対する大家(盟主)の失地回復
近代に対する伝統主義や修正主義の失地回復