いかにも怪しげな装丁と「パチンコに依存するように勉強にハマる!」というアオリから、若干の警戒心をもって読み始めた。
しかし、プロローグから、いい意味で裏切られた。
筆者はメディアによく登場するそうだが、普段テレビを見ないので、筆者に対する予備知識がなかった。
彼はNHKラジオの「夏休み子ども科学電
...続きを読む話相談」にて、小学一年生から、自分は集中力がないが、つけるにはどうすれば良いか、という質問を受けたという。それに対する回答を読んで、筆者の誠実な人柄が伺え、良い先生だな、と感じた。
本書の内容に関しても、専門用語に偏るというよりは、パチンコやエヴァンゲリオン、イチローの打席に入る前の「儀式」など、非常にくだけた書き方と、途中に出てくる「レッスン」で実際に体験することで、理論を容易に納得出来る。
本書のような、勉強法やその理論書の類の本は、納得したところで、実行に移さなければ価値はないが、それは読者のがんばり次第なので、また別問題である。
そして、本書を読んで特に良かった、と思わせてくれたのが、あとがきだ。
筆者は「集中と記憶を強めるための勉強に対する心構え」として、「世のため、人のため」という意識が必要だと説く。「勉強法や受験術を勉強道や受験道に昇華すべき」だと説く。
さらに「学力や知識は個人のものではなく、公共財」だという意識が大事だと訴える。
私は筆者のこのような主張に強く共感する。
例えば、本を出版するという行為にしても、どんなに装丁を小奇麗にし、キャッチーなコピーをつけたところで、筆者に「読者をダマして買わせよう」という意識しかなければ、読まれた途端にばれる。そして固定客はつかない。
逆に、この本は筆者が「研究で得た知識を世に還元しよう」という思いがあったからこそ、増刷を重ねたといえる。
もちろん、理想だけではダメで、それを伝える分かりやすい語り口も必要だが、上述のように、本書はそれが両立できている。ゆえに本書は良書だといえる。星5つ。