源氏物語について、研究を重ねた作者が作品の概要を俯瞰しつつ解説した入門本。
基本的に現代語訳された上で中身の解説が為されているため、初心者でも受け入れやすく興味深く読むことが出来た。
作者・紫式部の意識や当時の異文化に触れつつも、いつの世も変わらない男女関係について確認している。直前に牛車についての
...続きを読む本を読んでいたため、平安時代の貴族意識などもあまり突っかからず読むことが出来た。
源氏物語は登場人物がとても多く分かりにくいという印象が強かったものの、今作で時系列を追ってそれぞれの関係性に触れたため、案外と個性が目立ちわかりやすい人物像となっているのだなと思った。男女関係が主題だと思っていたのだが、政治的謀略を巡らせる男貴族や、男に振り回され続けて遂に自立の道を選ぶ女なども出てくるのが印象的。
ただ、相変わらず光源氏の印象は若干悪い。いくら高尚に語られていても、一夫一婦制の現代においては、何人もの女に目移りし、挙句の果ては情愛を捨てる光源氏の姿は、どうしても悪く映ってしまうのではないだろうか。そこら辺も含めて現代との文化差を感じた。