ユッシエーズラオールスンの作品一覧
「ユッシエーズラオールスン」の「アルファベット・ハウス」「特捜部Q」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ユッシエーズラオールスン」の「アルファベット・ハウス」「特捜部Q」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
この『特捜部Q』シリーズは、どこかしらオカルトというか、猟奇的というか、そういう雰囲気を漂わせていた印象があるんですが、この作品においては、その印象は一掃されています。
この作品では、謎だったアサドの過去が明らかになるというのが大きなテーマ。なるほどね。そういう過去があるのならば、これまでのアサドの活躍も頷けます。
それともう一つ。欧州を悩ませている中東難民問題が、この作品でも描かれています。日本では、もう、あまり報道されることもなくなりましたが、中東難民問題はいま、どうなっているんですかね?
『特捜部Q』シリーズは、10作で予定されているそうで、本作品はそのうちの第8作目。残りはあと2作。どういうシリーズの完結になるのか・・・
Posted by ブクログ
「特捜部Q」シリーズが人気のデンマークの作家、オールスン。
じつはこれがデビュー作とは。
重厚でスリルあふれる作品です。
第二次大戦中。
英国軍パイロットのブライアンとジェイムズは、ドイツに不時着。
必死で逃げ延びて列車に飛び乗り、重症のナチス将校になりすますことに。
搬送先は「アルファベット・ハウス」と呼ばれる精神病院で、戦争神経症の患者が集まっていた。
そこに実は悪徳将校の4人組も病気のふりをして紛れ込んでいて、互いに見張り疑う息詰まるような生活が始まる。
やがてブライアンだけが命がけで脱走しましたが‥
ブライアンはジェイムズを捜しますが、行方は知れないまま。
医師として成功し、オリンピックでドイツに行くことになったブライアンは、かっての悪徳将校が町の名士になっていることを知って驚く。
病院の看護婦で献身的なペトラや、ブライアンの妻も、すれ違いつつ果敢に役割を果たします。
戦争物というよりは冒険物、それよりも特殊な状況下での友情物というべきか。
切ない幕切れ。
これほど長い間‥
と思うと胸が詰まるものがありますが、苦いようでも、先に希望はないでもない終わり方。
デンマークの作家だけど~ドイツでも大人気とか。
ルメートルの「天国でまた会おう」はやはりフランス的だったかな‥と。
戦後へと続く友情物という共通項がありつつ、何となくですが~お国振りの違いを思いました。
Posted by ブクログ
戦争に赴く若き兵士たちと、戦地での悪夢のような体験。戦争を挟んで、30年後出会った幼な馴染みは、地獄のような体験により狂気という犠牲を払って待っていた。
ひどく簡単に本書の概要を記すとこうなるが、こうしてみると1970年代に劇場で観た強烈なベトナム映画『ディア・ハンター』を思い出す。主役のロバート・デ・ニーロとその周りを固める同郷の戦友たちの物語であって、ベトナムという地獄がもたらした人間性破壊の悲劇でもあった故に、若かった魂を心底揺すぶられた作品である。
本書は、あのディア・ハンターが持つ細密で長大な描写に近いディテール力を持つ。映画『ディア・ハンター』は、徴兵前夜の若者たちの一日を執拗なまでに描き、それに代わる唐突な戦場の描写は中盤にエピソードのように挟まり、しかし強いインパクトを観客に与える。映画は、戦争によって変わってしまった人間模様の戦後・後半部へと様相をがらりと変えてゆく。そこで友情や男女の愛を溶鉱炉のように変化させてしまった戦争の影響が陰影深く辿られ最大の悲劇に向かってゆく。
本書は、戦前部分よりも戦時部分のある特殊な悪夢体験を執拗に描くことでスタートする。第二次大戦末期、出撃した爆撃機の墜落により、パラシュートで脱出した二人の英国軍兵士が、ドイツの奥深くに逃げ延びる。追い詰められた彼らは病院列車に飛び乗り、死んでゆく親衛隊将校らに成り代わって生き延びるが、彼らはそのまま精神を病んだ者として、<アルファベット・ハウス>と呼ばれる過酷な施設での日々を余儀なくされる。さらに命を狙う四人組、脱走、死闘、空爆による施設の壊滅……と、これだけで第一部は終了する。
作者はしかし、「これは戦争小説ではない」と書いている。その通り、第二部は、生き別れた友のことを人生の十字架として感じている兵士が30年後のドイツへ赴くことで展開する新たなストーリーである。日々、死を意識させられて心まで病んでいたアルファベット・ハウスの記憶を軸に、あの四人組の残党と、置き去りにしてきた友との罪と贖いと許しの物語である。
人間の心を弄ぶ病院施設というと映画『カッコーの巣の上で』を思い出す。何と、作者は父が精神科医だったため幼少の10年間を精神病院で育ったそうである。そこでは患者が本当に精神を病んでいるのではなく、ふりをしているかもしれないという疑惑を常に感じていたそうである。それゆえ仮病が可能な病気としての精神病院という施設、そこでしか起こりえない陰謀、恐怖などがスリラーのモチーフとしてこの物語を構成しているようである。
精神への打撃を受けた友と、彼を救い出しに来た幼な馴染みは、少年時代の痛烈な思い出を共有しつつ、もう再生があり得ないような悲劇と犠牲を交感する。ナチというなんとも重たい歴史的題材に、人間を心身ともに支配するという最大の悪を表現してみせた力作である。これがデビュー作とは、そしてこの本の完成に8年を費やしたとは。作家としての活躍が光る『特捜部Q』シリーズ以前にこれほどの傑作をものにしていた作者、やはり只者ではなかったのである。