松岡まどかは、大手企業に奇跡的に内定を得た新卒。しかし、「ホワイト企業」と聞いて入社した職場は、アナログと手作業が主体で、デジタル技術を拒む時代遅れな環境だった。
社内ではAIの使用が全面禁止。そのため仕事量に追いつかず、まどかは毎晩徹夜を余儀なくされていた。
まどかの上司、三戸部はデキるキャリアウーマン。論理的かつ合理的に最善策を見つける力を持ち、プランBまで用意して戦略を練るタイプだ。そんな彼女も職場の効率の悪さに苦しんでいた。
ある日、資料作成を依頼していた相手にドタキャンされ、明日までに仕上げねばならない状況に三戸部は頭を抱える。だが、まどかは「自宅に持ち帰れば早く終わる」と提案。自宅で自身が育成したAI技術を使い、驚くほど迅速に作業を終えてしまう。その様子を見て三戸部は、まどかに秘められた可能性を見出す。
その翌日、会社の内紛で三戸部と対立していた郷原が、自身の立場を利用し、40人の新卒の内定を理不尽な理由で取り消す事件が発生。郷原は「AI禁止」のルールを利用し、ChatGPTなどAIを使用した受験者を炙り出して内定を撤回したのだ。その中にはまどかの名前もあった。
AI技術に精通していたまどかは、この不条理に憤慨するも、ちょうどその頃、エンジェル投資家から起業の誘いを受けていた。「うまくいかなかった時のプランB」という三戸部の助言を思い出し、内定取り消しを受け入れ起業を決意する。
しかし、契約書をよく確認すると、「1年以内に10億円の売上を達成できなければ、1億円の借金を背負う」という厳しい条件が記されていた。詐欺まがいの内容だったのだ。困惑するまどかを見て、三戸部は自らも退職届を提出。「まどかを支援する」と啖呵を切る。
こうして、まどかは不本意ながらもスタートアップ企業「ノラネコ株式会社」を立ち上げることとなる。
何の魅力も、やりたいことも、自分の強みすらわからない彼女にとって、三戸部の助言が頼みの綱だった。
まどかが始めた「ノラネコ株式会社」は、AIによる企業と求職者のマッチングサービスを提供。初めて聞くビジネス用語に苦戦しつつも、三戸部のアドバイスを受けながら資金調達や投資家プレゼン大会に挑み、優秀な社員を求めて奔走する。
そんな中、郷原は大企業の潤沢なリソースを使い、ノラネコと同じサービスを立ち上げようと画策。大企業との競争は絶望的だった。安眠できる日はほとんどない。だが、まどかは試行錯誤の末、サービスの方向性をピボット(大きな転換)し、「AIを使った0次面接」という新サービスを生み出す。このシステムは、性別、容姿、声の良し悪し、体型といった面接官の無意識の偏見を排除し、求職者の本来の実力だけを評価する仕組みを実現したのだ。
ようやく成果が出始めた矢先、サーバーがハッカーによりダウンさせられる。データの復旧には5,000万円が必要だが、まどかにはその余裕がない。さらに、裏切り者による情報漏洩や、三戸部の体調悪化による死といった問題が次々に降りかかる。心の支えであった三戸部を失うという悲劇は、まどかの心をへし折るには十分すぎる出来事だった。のちに、このハッカーも郷原の差金だったことが判明する。
しかし、三戸部が生前に語った「世界に君の価値を残せ」という言葉を胸に、まどかは泣きながらも、歯を食いしばり、死に物狂いで前に進むことを決意する。
一難去ってまた一難。スタートアップの現場は、数年分の困難が凝縮されたような日々だ。リーダーとしての資質がないまどかは、リーダーにならざるを得ない環境で奮闘しながら、少しずつ成長していく。