主人公は、転校を繰り返す要目礼恩。
転校先で経験した「嘘」とバールについての噂とは…。
4年生の春から短期間で転校を繰り返し、『世界は自分に合わせてくれないから、自分が世界に擬態するんだ』と自分の意志で馴染むための方法を使っている。
そこで彼が見たこと、知ったこととは…。
とんでもなく頭が良くて子
...続きを読むどもらしさのない…と思ってしまいそうだが、嫌らしさのない憎めない少年と感じながら読み進める。
嘘つきの女の子とけしからんおじさんのことー。
海辺の町でタイムマシンを作り、その町に戻って知ったことー。
共に同じ場所に呼び出された、五人のクラスメイトとの雨の日のことー。
お母さんのことが大好きだった男の子とのことー。
物語の一ピースになることを拒んだ、この世界のことが好きだった、女の子のことー。
つまりは、バールのようなものは『嘘』であり、バールのようなものは人々の妄想により、様々なかたちに変わる、いわば嘘が輪郭を伴ったもの。
正しく使わなければ人を傷つける凶器になるが、正しい使い方をすれば、武器にもなる。
これをひとつの物語としてラストまで繋げて読まないと表現しにくいな、と思った。
再度、プロローグとエピローグを読み返すことになる。
一話ずつの短編は、どれも哀しさが伴う嘘で切なくなるが、これは誰かのために作られた物語で届いた先は…。
終わらせたくない物語だと思った。
なぜか何度も字面を追う羽目に…。