山崎史郎の一覧
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ユーザーレビュー
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日本における2020年の合計特殊出生率は1.33。人口減少を止めるには、これを2.07以上に回復させるしかない。それは容易なことでないにしても、早急に何らかの打開策が必要なのは多くの国民が認めるところ。
ただ、ただちに解決策を講じても人口減に歯止めがかかるには長い期間を要する。また、結婚・出産は個
...続きを読む人の問題であり、国が介入すべきでないという根強い意見もある。 それでも、スピードをあげて進む少子高齢化に対する国民的議論は必要というのが、元厚労省幹部の著者の考え。 本書は、政府内に立ち上げられた「人口戦略検討本部」で官僚や専門家が真剣な議論を行い、法案を立ち上げ、国会に提案する過程を描いた小説。
登場人物やストーリーはフィクションだが、素材はすべて公開された資料や文献に基づく事実。
この本で提示されている「人口戦略(案)」は非常に勉強になった。そのポイントを以下に記しておく。
①非正規雇用や専業主婦も含めすべての子育て家庭に対し産休・育休給付や児童手当を大幅に拡充するため、「子ども保険」を導入する。②不妊治療や妊娠・出産、ライフプランに関する相談支援、ライフコースの多様化 ③若者に焦点をあて、子育てのしやすい地方の創生を目指した地方大学の強化や地域の人材教育推進、二地域居住、多拠点居住、地方体験の推進
なお、移民政策については、西欧諸国の事例から失敗すると大きな問題になることもあり、意見の集約が図れなかったという設定。
人口戦略検討本部における様々な角度からの議論に圧倒されたが、それとともに、制度設計のできる官僚へのリスペクトが高まった。
また、法案の与野党への根回し、与党内議論のプロセス、国会提出のタイミングなど、経験を積んだ著者ならではの現実的なストーリー展開もさすがだなと感心させられた。
Posted by ブクログ
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フィクションではあるが、人口をめぐる歴史や現状や将来推計は事実に基づく情報なので、人口減少という社会問題を理解する事ができた。
また、官僚や政治家がどのようなプロセスで、制度づくりを行うのかというプロセスをあまり意識した事がなかったため、興味深かかった。
なぜ、一億人国家なのか引っかかりながら読んで
...続きを読むいた。総理答弁で語られた内容は理解でき、将来世代にとって希望を持てる国にしていく必要があることも理解できできるが、国土も狭く、食料自給率も低い日本が、人口を維持することが本当に必用なことなのかは語られておらず、国家より、もう一段上のレイヤでも、この問題を考えるべきではないのがと思った。
Posted by ブクログ
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社会保障はより広範囲に包摂的に行き届かなければならない。
また、生活困窮者に公的な支援制度が十分でないばかりに日本の失業者は増加し、非正規化が進み、雇用情勢は悪化した。
人口減少に歯止めがかからないこれからの時代、「共生」していくことがいかに重要か私達は思い知ることになる。
三重県名張市のような地域
...続きを読む組織の再編が求められる。
Posted by ブクログ
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介護保険制度の立役者であり、地方創生総括官などを歴任した元官僚である著者が、小説形式で人口減少問題とその対策について解説。
人口減少問題に関する様々な論点やその対策の方向性がよく整理されていて、非常に理解が深まった。
本書一押しの施策である子ども保険については、以前に構想が浮上した際には、保険にはな
...続きを読むじまないのではないかと思って違和感があったけが、本書を読み、社会全体で連帯して子どもの養育を支え合う仕組みとして結構いいんじゃないかと思えてきた。
介護保険制度の立案から施行までに携わった著者だけあて、制度設計や法案化のプロセスが臨場感のある形で再現されていて、国の政策立案過程を仮想体験できるというのもポイントである。
500頁を超える大作ではあるが、読み進めるのに苦を感じることはなく、小説としての出来は別にして、政策関連書籍としてかなりの良書だと感じた。
Posted by ブクログ
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人口減少と社会保障 山崎史郎
職業柄、社会保障を勉強しているが制度面を覚えるにあたり、現在の社会保障制度がある背景や、今後の展望についてより深く知りたいと考え、本書を手に取った。本書は長らく厚生労働省の官僚を務め、介護保険導入等に携わった山崎氏の著書であり、現在の社会保障制度が構築された背景となる
...続きを読む社会状況を概観した上で、社会が変化する中で社会保障制度も変わらねばならない状況にあると力説されている。
社会保障制度は社会の鏡であるべきであり、社会保障制度もまた、社会を構築するパワーを持ちうる。そうしたポリシーの下、まずは第一章で現在の日本社会の状況を述べた後に、第二章では社会保障制度を概観し、第三章以降では、どのように変化させるべきかという筆者の意見が述べられるという構成になっている。
各章を掻い摘んで説明すると下記の通りとなる。
第一章では、主に人口減少という日本社会のトレンドが述べられる。戦後、社会保障制度は主に人口増加社会をベースに構築がなされた。豊富な人材を擁する社会において、家族や会社、そして地域というセイフティネットを前提に、社会的な弱者や高齢者への支援を制度化したものが、現在の社会保障制度である。
しかしながら、戦後76年を迎える現在において、家族・会社・地方は確実に変化している。
家族においては、サザエさんの様な複数世帯で暮らす戸数は激減し、概ね核家族化をしている。核家族化をしている上に、晩婚化の影響から、1人暮らし世帯は年々増え続け、個人化が進んでいる。会社においても、非正規雇用の拡大により、非正規雇用という年金制度や労働保険から排除された層が増加している。そして、極めつけは人口減少である。これまで第一次ベビーブームによる人口増加、そして、第一次世代の再生産周期にあたる第二次ベビーブームにおける人口増加があった。しかしながら、第三次ベビーブームに関しては、非正規雇用の増加やバブル崩壊による景気の減退から、育児を許容する経済的状況が創出されなかったことにより、幻となった。こうした人口減少基調に加え、地方から都市部への人口流入により、地方では人口減少及び高齢化はまさしく劇的に進んでいる。
こうした社会的な変化により、従来の社会保障における制度的な限界が顕在化しているのが現在であり、これらを人口減少社会にいち早く適応させることが必要であると本書では述べられている。
第二章は社会保障制度の全体像が述べられている。社会保障論を語る上で、何より重要なことは、その財源である。社会保障の財源には二つの方式があり、一つは社会保険方式であり、もう一つが税方式である。社会保険方式では、各人が保険料を拠出することで、各人に普遍的に起こりうる保険事故に対して保険金を支払う保険の仕組みをベースにしている。民間保険と異なる点は、リスクの逆選択を排除する為に強制保険となっていることや、保険料が各人の支払い能力に応じた応能負担になっていることである。応能負担になっていることから、所得の再分配機能が自動的に埋め込まれている。そして、もう一つが税方式であり、国税を財源として社会保障を提供する仕組みである。現在では生活保護制度などの公的扶助が主に税負担方式となっている。これらの二つがあることは有名であるが、本書で感心したのは、どちらの方式を取るかによる社会への影響である。
これらの二つの方式を違いを一言で表すとすれば、国民がお金を払う時点でその使い道が決定しているか否かである。社会保険方式の場合、国民がお金を支払う時点で、使い道は限定されている。一方で、税方式では、一旦租税として回収した上で、予算編成という一過程が入り込むことで、その時々の政権や地方自治体の思惑が反映されやすい。この違いは国民の権利意識に大きく影響する。社会保険方式の場合、国民はその制度について確固たる自分の権利として認識する。一方で、税方式の場合はその意識は希薄である。『下流老人』では、生活保護バッシングや生活保護をあえて受給しない老人の意識の根底には、この税方式による権利意識の希薄さがあると、著者の藤田氏は述べていたが、まず、これらの方式の違いは国民の意識に影響する。さらに、これらの国民の意識は各制度の供給体制の充実度に関わっている。社会保険方式による制度においては、保険料負担に対しての反対給付があって然るべきという国民感情から、制度の供給体制の充実への強い動機が働くのである。一方、税方式を財源とする制度においては、一般会計における財政的なコントロールが強くなりがちであり、供給体制の構築にうまくインセンティブが働かないという問題がある。
2000年の介護保険導入にあたっては、この二つの方式の違いによる供給体制整備のインセンティブが論じられ、結果として介護においては社会保険方式が導入されたのであった。
これだけを見ると、全て社会保険方式で良いように思えるが、社会保険方式で対応するリスクには一定の普遍性が必要である。保険制度として成り立たせるためには、多くの人に起こりうるリスクでなければならない。一部の人々に限定されているリスクに関しては、保険料に対する受益者が限定されることから、保険化には向かないのである。
人口減少に対応する為には、子育て支援の補助金が必要であり、保育施設の供給体制を充実化するためには社会保険制度で制度構築を行いたいところであるが、子供ができることを保険事故と捉えた場合、リスクにはかなり偏りがある。無論、独身者や高齢者には出産のリスクはなく、彼ら彼女らの保険料負担は純粋な社会貢献であり、負担と給付の関係性の図式では理解が得づらいという課題もある。
子育て支援に関しては、人口減少を国家的な問題として社会保険方式で敢えて保険化するという国民的な合意形成を行うか、税方式での補助と、積極的な供給体制の構築を国家主導で行うしか方法がないように思える。
このように、社会保障には財源の違いによって大きく制度運用が変わっており、ある種明快である一方で、難しさもある。
なお、社会保障における一般的な財源の比率は、保険料と公費(税)が6:4となっている。社会保障制度の多くが社会保険方式による財源確保の体制にある中で、公費負担が4割もあるのは、一定の制度が社会保険方式では立ち行かないからである。例えば、第一次・第二次産業に従事する人が減少する現在では高齢者の受け皿と化している国保は半分が公費負担による財源の補填がなされている。
そして、この公費負担は、毎年の国の歳出の1/3を占めており、全体の1/6を占める地方交付金と合わせると、歳出の半分が社会保障に充てられているのである。
第三章以降に関しても、これだけの字数をもって要約を試みたいが、いささか疲労感もある為、簡略化すると第三章では共生保障、第四章では全世代型の保障への転換、第五章では人口減少に対応する為にICTの活用とコンパクトシティ・支援のワンストップサービスが述べられている。
共生保障とは、これまでの前提で述べた家族・会社からもセイフティネットで抜け落ちてしまった人々を地域のセイフティネットへの復帰にエンパワーメントをすることである。個人化が進む現代社会において、個人を最後まで支援することは難しい上に、再発防止が難しい。その中で、地域的なつながりの中に復帰させることで、再発防止と支援の地域社会への一部転化を行うことで、国家的な負担を少なくするという観点である。全世代型の保障について、まず、対置されるのが現在の主に高齢者支援の保障体制である。これに対して、支援を行う人々を高齢者のみならず、人口増加の担い手である若年層~中年層へも普及し、高齢者に関しては生涯現役支援を行うことによって世代内の支え合いを強化するというものである。
スウェーデンのような育児休暇中の所得補償のような手厚い子育て支援に歳出を配分するために、社会保険化や、高齢者支援の世代内比重の増加等の財源の融通を行う必要性について論じている。最後の人口減少に対応するという章では、第四章の様な人口増加施策が効いてくるまでに、支援の効率化を行う必要性を論じている。支援が必要な人を極力一箇所に集約し、包括的な支援を行うことや、ケアプランなどの事務をICTを利用し効率化すること等が挙げられている。
Posted by ブクログ
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